最後までご覧いただき、ありがとうございました。

初めての物語で、意味不明なところや、不備、誤字など、見直すとかなりの数がありましたが、

それでも楽しんでいただけたら、幸いです。

今後は、しばらくの間投稿は行いません。
 
また物語を書くかどうかも決まっておりません。

ですがこのブログは放置して、いつでも見られるようにしたいと思います。



参考にさせていただいた、「あかがみんクラフト」のメンバーの方々には、改めて感謝申し上げます。

これからのますますのご発展を、こころから祈っております。



それではお元気で。
 あれから一週間がたった。村の壊滅はそれ以降、ピタッと止んだ。
 ケガをした4人はもう治り、クミさんとソーラさんも歩けるようになった。ウィッチの亜種が持っていた回復ポーションを、バステンさんが分析したおかげで、早期治療ができたのだ。今後は煙幕・炎・フェロモンの分析も進めるという。うまくいけば、回復ポーションを量産できるようになるそうだ。

 今日は回復祝いと、世界の安全と平和を取り戻した(これマジで言っていた)ということで、畑の真ん中で宴会をすることになった。ちなみに酒はでない。
 あちゃみさんとソーラさんが料理をして、アイクさんとわとさんが会場の準備をするそうで、俺の出番はなかった。なので屋根へとのぼり、一人で景色を眺めていた。
 とてもいい天気で、遠くまで見渡せた。ぼんやりと海が広がっている。ふと、あの海の向こうにはなにが広がっているのか気になった。
 この世界にはネザーのように、まだまだ俺の知らないモノが数え切れないほどあるのだろう。いつかそこへ行くことがあるのだろうか。
 そんなことを思っていると、背後から声が聞こえた。
 「なにしてるの」
 振り返ると、クミさんがいた。なんでここにいるのだろうか。
 「ただ景色を見ているだけです」
 そう答えると、クミさんは隣に来て座った。
 「…急にどこかへ行ったりしないで」
 体がビクつきそうになった。この人も超能力者なのか?俺はすぐに質問した。
 「一体どうしたんですか」
 「ただ、なんとなく。あなたが突然消えてしまうかもって、思ったから」
 その答えは冗談とは思えなかった(そもそも冗談言わないケド)。声が不安と寂しさを帯びているのが、かすかに感じられた。
 「もしかして、屋根に上がっていたからですか」
 「そうかもしれない」
 表情もいつもどおりだったが、どこか寂しそうに見えてしまった。俺の勝手な気のせいだといいんだけど。
 少し間があいてから、クミさんは言った。
 「ソーラのことは好きなの」
 想いっきり直球で来た。今は姉だが、かつて好きだった人にこんなことを聞かれるのは、ちょっと複雑だ。
 「…わかりづらいかもしれませんが、恋人とか、好きとかそういう感情ではなく、もっと別の何かがあります」
 「わかりづらい」
 手加減なしの返答だった。一言で言い表せたなら、どんなに楽だろうか。
 「でも、大切に思っていることは、間違いない」クミさんは続けた。
 「そのとおりです」
 そう言ったとき、パッとひらめいた。本のなかにいい例えがあったじゃないか。
 「友達以上、恋人未満、だったらわかりますか」
 一文を思い切りパクッたが、これで理解されるならいいと思った。クミさんは言った。
 「わかりづらい」
 結局、本(の一部分)も勝てなかった。
 「そういえば」突然クミさんが話題を変えた。
 「なんですか」
 「あなた、あの時ともさんに、私を背負うことを無理やり進めたよね」
 段々と声に力が入っていることがわかった。まだ根に持っていたのだ。この展開はちょっとまずい。
 「そ、それは…」
 「…どういうつもり」
 瞬時に目が切れ味を帯びた。殺気も周囲を覆い始める。
 命の危険を感じて、俺は全力で逃げ出した。


と「首大丈夫?」
 「なんともないですが、頭がぼんやりとしています」
鳥「クミさん、手加減なしだからww」
ク「絞め落としてはいない」
ソ「そういうことじゃないってww」
 あの後玄関を出て、畑に足を踏み入れたとたんに捕まり、首を絞められた。意識が飛びそうになる手前まで思いっきりやられた。腕が離れてからしばらくは、ずっと朦朧としていたが、今は少しマシだ。
 「まあ、玄関出て畑の手前まで行ったので、その分成長したんじゃないかと」
わ「逃げのびることが成長してどうすんのww」
ア「本来の目的と逆じゃんww」
 「逃げる事だって時には大切です。そうですよね、クミさん」
ク「次そうしたら覚悟しなさい」
 「…」
 そういわなかったっけ。あれ、あちゃみさんだっけ?いずれにしても、俺は一線を越えてしまった。
あ「まあ、こうしてまたみんなでワイワイできるってことでいいじゃん」
s「そうそう。それもこれも、ムサシ君の活躍があってこそだ」
バ「けっこう貢献度は大きい。おかげでポーションが作れるようになったからね。本当にありがたい」
 褒めちぎられるのは嬉しかったが、なにしろ事態がアレなので、うまく笑えなかった。
ク「笑って」
 思わず耳を疑った。そんなフレーズを言うのは初めて聞いたのだ。
 「で、でも」
ソ「クミさんの言うとおりだよ。いつものように笑って」
ク「主役が笑わないと、はじまらない」
 普段のクールさが少し消えた、優しい声だった。こんな声をクミさんが発するとは思ってもみなかった。
 ちょうどソーラさんは隣に座っていて、安心させるためなのか近づいた。腕が触れ合って、少し照れた。それと同時に自然に笑った。
ク「それでよし」
 また同じ声だった。今日はいったいどうしたのか。
と「クミさん、ムサシ君をかまいたかったんじゃないのww」
s「唯一の年下ですからねww」
 2人がそう言うと、クミさんは少し下を向いた。照れたな、とわかった。
 左隣のわとさんが言った。
わ「たいへんだね。狙われてw」
 「大丈夫です。つぎ狙われたら、わとさんを盾にします」
わ「いやいや、俺を巻き込まないでwww」
 それからみんな(クミさん以外)爆笑した。最高の雰囲気のまま、宴会はスタートした。


 しばらくの間飲み食いをし、談笑した後、俺は森の手前までいった。あのとき4頭が立っていたあたりをずっと見ながら、彼らとの思い出に浸っていた。
ソ「どうしたの」
 後ろからソーラさんが来て、声をかけた。気にかけているのだろうか。
 「彼ら―ルークたちとの思い出に浸っていただけです」
ソ「さびしい?」
 「いえ、もうさびしくないです」
 そう答えると、ゆっくりと肯いてくれた。その時、あることを思い出した。
 「そうだ」
 俺はポケットに手をいれ、ハンカチを取り出した。
ソ「それ、もうやぶけて使えないね。捨てようか」
 「いえ、これをもらってもいいですか」
ソ「え?なんで」
 それからありのままの想いを言った。
「このおかげで、最後に決着をつけることができました。もしソーラさんがよければ、これをお守りにしてずっと身につけていたいです」
すべて伝えると、ソーラさんはにっこりと笑った。
ソ「ほしいならあげるよ。でもそのまえに…」
 その前?なにかお守りにするための神聖な儀式でもやるのか。そこまでしてもらわなくていいんだけどな…。
 そう思った直後、首元に2本の腕がまわった。それから少し遅れて、ソーラさんが顔を目の前まで近づけた。唇にまた、何かが触れていた。


 また…俺はキスされた。しかも前回より長く。頬は赤くなって、とても熱かった。段々と積極性が増しているのではと思った。
 しばらくして、唇は離れた。それに追従するように、腕も離れていった。体は魔法にかかったように硬直していた。それを待っていたかのように、ソーラさんは俺の手からハンカチを奪い、こう言った。
ソ「ほしかったら、私からとってみせて」
 そして畑の真ん中へと走っていった。
 「…え?ちょっと…ソーラさん!」
 時間がかかったが、なんとか体は動くようになった。俺は追いつくために走り出した。向こうはもう真ん中を越えているが、追いつけない距離ではない。
 駆け出してともさん達の間を抜け、真ん中を越えた。そしてあと少しで追いつく距離までつめたが、不意にソーラさんが叫んだ。
 「みんな!ムサシ君がいじめてくるーwww」
 は、はあ?なにを言っているんだ!?
 切実にみせかけた助けを聞いて、後ろから声が追ってくるように聞こえた。
あ「あ!ムサシ君サイテーww」
と「これはまずい!みんなでつかまえようwww」
 なんでそうなるの!?
 それからともさんを筆頭に、クミさん以外の全員が走って追ってきた。クミさんは優雅にお茶を飲んでいたので、ある意味助かった。だが状況は混乱するばかりで、収めようがなかった。
 「なんで追ってくるんですか!」
わ「だって追い回してるしwww」
ア「あきらかにいじめてるじゃないかwww」
 「ちがいます!これは…」
ソ「たすけてーwww」
バ「これのどこが違うんだwww!!」
 すでに笑っている時点で違っているでしょうが!!
s「とまれムサシ君www」
あ「女子に手を出すなんてヒドイwww」
 「いや、これには事情が」
鳥「問答無用www」
と「つかまえて成敗してやるwww!!」
 「そんなあぁwww」
 結局追いつくのも、捕まることもできないので、間を走り続けた。
 いつのまにか笑っていた。そしてみんな楽しんでいた。

 
 最後は全員が疲れて走れなくなり、宴会場まで来てから、その場に座り込んだ。俺は仰向けに転がって、空を見上げた。太陽はまだてっぺんまで来ていない。雲ひとつない青空で、あの時の星空と同じく、吸い込まれてしまいそうなほど、美しい水色だった。風もちょうどいい感じに吹いていて、気持ちいい。
 そう感じていると、視界にソーラさんが映りこんできた。
ソ「これ、ごほうび」
 手を伸ばして、ハンカチを差し出した。受け取ってから俺は上半身を起こした。
 「結局そうするなら、走らなくてもよかったじゃないですか」
ソ「でも楽しかったでしょ」
 「ま、まあ、追いかけられたときは特に―」
 そう言ってからともさん達とのやり取りを思い出すと、おかしかった。そのまま声に出して笑った。ソーラさんも、ともさんも、あちゃみさん、わとさん、バステンさん、showさん、アイクさん、鳥さんも、そしてなんとクミさんも控えめだが笑っていた。
心地よい風があたりを優しくつつみ、それになびいた麦がこすれる音を立てた。一緒に笑っているみたいだった。


 ふと気付くと、風の中から、どこか懐かしい男女の笑い声がかすかに聞こえた。聞き覚えがあるように感じた。
 それはまるで、父と母のようだった。

―完―

 「元気そうでよかったね」
 マークはこう言った。きれいなお姉さんに抱きしめられてから、ずっとご機嫌だ。話し口調もかなり明るい。
 「オマエちょっと落ち着けよ。うれしいのはわかるけどさ」
 「だってだって、あんな綺麗な人だよ。そうそうないよ、あんなこと」
 レイは呆れながらマークをたしなめている。こんな口調だが、あの人に会ったときはすごく喜んでいた。実際、顔を一番舐めていたのはコイツだった。
 「おまえもあの時、なでられたから嬉しそうだな」
 「まあね。でも一番喜んでいたのって、結局ルークでしょ」
 否定できなかった。シェパードも一応なでられることが好きだが、オレの場合、はるかに度を越している。一度、妻にお願いして頭をなでてもらったが、全然だめだった。やっぱり人でないと無理だった。
 「ところで、ルーク」レイが尋ねてきた。
 「何でいきなり、あの人のところへ行こうって言い出したんだ?」
 そういえば、彼らにはまだ話していなかった。
 「偶然ニオイをかぎつけたから?」マークが言った。きっかけはそうだが、理由は違う。
 「たしかに見つけたのが始まりだけど、やっぱりもう一度、お別れの前に会っておきたくなった」
 「忘れようがないからね」シェパードが言った。
 「全くだ。でもそのおかげで、あの人を見殺しにしないで済んだけどな」
 レイの言うとおりだ。もしも「会いたい」なんて思わなかったら、あの人は死んでいた。あの時も、レイは一人で奮闘しようと躍起になっていた。狩りに一番手慣れていたので、群れからすこし離れて戦ってもらった。
 「それに、こんなに獲物を狩れた。これならしばらく持ちそうだね」
 マークの見立てどおり、これだけのゾンビとスケルトンの量なら、群れの移動に必要なエネルギーを得ることができる。数日間、ここに留まって体を休めればほぼ完璧だろう。
 そう思っていると、シェパードが言った。
 「それにしても」
 「何だよ」レイが尋ねた。
 「変わった人だったよね」
 「そうだな」オレは同意した。たしかにあの人は変わっていた。いや、変わりすぎていた。
 「他の仲間は、人間が理由もなく襲い掛かってきたとか、怖がって逃げ出すとか、中には家畜をおそったって濡れ衣を着せられた奴もいる。仲間内では悪い印象しかないけど、あの人は違った」
 「僕たちを受けいれてくれたよね」マークが言った。
 「あれほど驚いたことはなかった。あんなに素晴らしい人間がいるなんて、全然知らなかったからな」
 レイはもともと荒っぽい性格だが、そんなやつでさえ懐いたのだ。一体何者だったのだろうか。
 シェパードが続いた。
 「それにしては、自虐的だったよなぁ」
 「わかる。あの人いっつも不満足って感じだった」
 「なにが不満だったか、全然分からなかったな」
 「オレたちには分からない、人間の何かがあったんだろう」
 オレは少しまとめる様に言った。実際、全然足りないものなんてないのに、あの人は何かを求めていた。でも再会した時は違った。
 「けど、話をしてた時は昔の感じじゃなかった。大切な何かを手に入れたような感触がした」
 「俺もだ。とてもりりしく感じた」
 他の二人も肯いていた。みんな同じことを思っていた。

 「パパ、おはよう」
 娘が起きてきて、朝の挨拶をした。まだ一ヶ月なのにちゃんとしている。立派ではあるが、少し心配だ。
 「おはよう。よく寝られたか」
 「うん。おともだちには、あってきた?」
 「さっき会ったよ。元気そうだった」
 それを聞いて、娘は嬉しそうに笑った。
 「またあいにいく?わたしもあってみたい」
 「…もうお別れしたから、会いには行かない」
 「なんで?」
 何もしらないし、そもそも理解することは難しいだろう。でも疑問に思ったら、この子はいつまでも質問する。分かりやすく言った。
 「あの人にも、大切な人たちがいるんだ。お父さんにとって、おまえが大切なようにね。だからむやみに会いにいくのは、かえってあの人のためにはならないんだよ。わかるかい?」
 「わかんない」
 無邪気に元気よく答えた。やっぱり無理か。
 「お父さんみたいに大きくなったらわかるよ」
 「…つまんないの」
 渋々だが納得してくれたようだ。こうなると頭を使うからちょっと大変だ。レイたちはこのやり取りを見て笑っている。
 「この子だって十分変わっていると思うけどね」マークが言った。
 「子供はいつだってそういうもんだよ」
 そう言って、森の先にある山を見た。

 あの人―ムサシさんは、きっと立派にやっていける。ミーシャだってついている。久々の再会で、どんな生活を送っていて、昔とどう変わったか、それらは全部ミーシャが教えてくれた。オレたちの変わりにずっと見守ってくれていたのだ。
 最後にアイツは言った。
 「傷つくことも、逃げ出して泣いていたこともあったけど、あの人はちゃんと成長している。仲間もほんとうに立派な人たちばかり。だから何も心配することはない。私は最後まで見守るから、安心して」
 ネコとは思えない力強い言葉だった。ミーシャもついているなら、絶対だ。だからこそ、ああやって悔いなく立ち去ることができた。
 そういえば、最後の少し手前で、あの人に想いをよせている女性について話していた。気になって姿をチラッと見たが、大まかな予想しかできなかった。だから無理やりあんなことをさせて試してみたが、どうやら当たっていた。まああの人の恥ずかしそうな顔も、とても面白かったけど。
 そんなことを思っていると、大きなあくびが出た。夜中に暴れたのだから仕方ない。
 「パパ、ねむいの?」
 「夜にがんばったからね。ママのところへ行こう」
 「うん」
 3人と一旦別れて、妻の元へと向かった。

すでに日は高く上っていた。今日という日は、まだまだこれからだった。
 と「一体なにを話してたの?」
 本当に不思議そうな声でともさんは尋ねた。確かにあんな光景を見たら、ほとんどの人は奇怪に感じるだろう。信じてもらえないかもしれないけど、俺は言った。
 「ルークが話しかけてきたんです。人間の言葉で」
s「マジで!?」
わ「でも声なんて聞こえなかったよ」
 「声ではなく、頭に直接響いてきたんです。まさかあんなことができるなんて」
 最初はほんとうに驚いた。そして彼らが人のように考え、感じていることがなぜか嬉しかった。
あ「それで…、なんて言ってたの」
 「彼らは偶然、近くに俺がいることを知って、ずっと探していました。そしたら向こうの村で警戒している姿を発見して、少し離れたあたりに群れをとどめていた。そこへウィッチが襲撃してきたので、急いで助けに向かった、と」
バ「だから今日みたいなことができたんだね」
 「他の仲間達にも、人だけは襲うなと指示していたそうです」
 続けて説明しようとすると、アイクさんが尋ねてきた。
ア「もうどっかに行っちゃったけど、また来るの?」
 「もうここには来ません。群れの生活のために遠くへ移動すると言っていました。自分達の元気な姿を見せて、お別れを言いにここまで来たそうです」
と「それで、あのさ」
 何か聞きづらそうな口調だった。なにを言おうとしているかは大体分かる。
と「なんでソーラさんを、その…抱っこしてるの」
 ビンゴだった。いや、ここで当たらなかったら相当おかしい。話しづらかったが、ゆっくりと言った。
 「…よくは分かりませんが、「お礼として、あの女の人を抱っこして」と言われて…」 
 メチャクチャ顔が熱くなった。何でこうなったのだろう。
あ「それでやったのwww」
わ「じゃあ、「さっきやった」っていうのはw?」
 「…ソーラさんが歩けなくなった時、同じようにして運びました」
あ「二回もwww!!」
s「これもう確信犯でしょwww」
俺は天を仰ぎたくなった。そこに注目しないで…。

ソ「…下ろして」
 「はい?」
 恥ずかしがっている表情は変わりないが、どこか不機嫌そうな口調で言った。
ソ「しかたなくやっているなら、もういい」
 あのときの会話がやっぱり聞こえていた。確かにルークとの約束は渋々だったけれど、こうしているのにはもっと別の理由があり、意思がある。
 「それはできません」
ソ「どうして。意地を張っているの?」
 当然だからしかたないけど、どこか痛々しい言葉だった。それを受け止めて、ゆっくりと言った。
 「つぐないです」
ソ「え?」
 「俺が一人で行く時、ソーラさんはずっと泣いていた。それだけじゃない。あちこちに矢が刺さって気を失っていたときも、今までにないほど泣いていたと、クミさんが言っていました。目を覚ました時もそうです。
 だから、村を出発してから拠点に着くまで、絶対に俺が送り届けてみせると、自分にそう誓った。それしかできませんが、ほんの少しでもつぐないになればと、そう思ったんです」
 ソーラさんはじっと目を見たまま、黙って聞いていた。
 「だから、せめて最後までさせてください」
 そう言ってから少し間が空いた。何かを考えるような表情をしてから、ソーラさんが言った。
ソ「…ちゃんと運んで」
 不機嫌さも、痛々しさも感じなかった。納得してくれた。
 「まかせてください」
 俺は足を前へと動かした。そして導くかのように、ともさん達は真ん中を空けてくれた。ちらりと見ると、ソーラさんはどこか幸せそうだった。


 幸せそうな顔を見ることも、こうして抱き上げて歩くことも、すべて、俺が生きているからできる。
 あのとき生きるチャンスを与えてくれたもの全てに、こころから感謝した
 しばらくして、突然ルークが少し長めに吠えた。それを合図にするかのように、レイとマーク・シェパードは、畑の手前へと後退した。そしてルークは再び俺の正面に向き合った。
 「ありがとう。俺だけじゃなく、大切な仲間を助けてくれて、本当にありがとう」
 そう言うと、マークは顔を俺の左肩に乗っけた。その直後、頭に何かが張り詰めるような、少し甲高い音がかすかにした。耳ではなく、直接頭に響いてきたのだ。
 「―」
 「…え?」
 ウソだとも、気のせいだとも思えなかった。
 「お、お前…」
 驚いてルークを見ると、まるで何事もなかったかのように平静としている。音は続けてきた。
 「―」
 「はあ?」
 何を言ってるんだコイツは。そもそも何で知っている?
 「マジで言ってんの?」
 「クゥン」今度は鳴いて返事をした。
 「いや、それさっきやったんだけど」
 「―」
 それからつぶらな瞳でじっと見つめてきた。目をそらそうとしたが、負けた。
 「あぁもう、わかったよ。やればいいんでしょ…」
 「クゥン」今度は納得したように返事をした。悔しくて俺は呟いた。「オオカミのくせに…」。
 それを気にせずに、さらに音は続いた。
 「―」
 今までよりも少し長い。そしてこれが最後だった。もう二度と聞くことはない。俺はルークの頭を思いっきりなでてやった。感謝と、別れへのてみあげとして。
 「…元気でやれよ。俺も頑張るから」
 「クゥン」
 「レイとマーク、シェパードのことを頼む」
 りりしい目を向けていたが、どこか寂しそうに見えた。それを振り払うように、ルークは立ち上がり、3頭たちの中へと戻っていった。
 俺は約束を果たすために、ソーラさんの方を向いた。
 「ソーラさん、ちょっとごめんなさい」
ソ「え?」
 一言断りを入れて、ソーラさんを両手で抱えて立ち上がった。(断りになってないよね…)本の中では確か、「お姫様だっこ」だっけ。そんなフレーズだったはず。
ソ「ムサシ君…」
 ともさん達の前なので、当然照れていた。俺だって恥ずかしいが、やらなきゃいけないのだ。改めてルークたちに向き直り、言った。
 「これでいいんだろ!」
 すると彼らは遠吠えを始めた。りりしく、力強く、どこまでも届くように吠えた。おそらく何かの合図だろうが、彼らなりの祈りのようにも見えた。
 それが終わると、彼らはサッと後ろを向いて、颯爽と森の中へ消えていった。

 「ソーラさん、すみませんが少し降りていてください」
 驚いたようにソーラさんは言った。
 「で、でもそんなことしたら」
 「大丈夫です。信じて」
 そう言うとしぶしぶ了承してくれた。俺はゆっくりと地面に降ろし、膝をついてしゃしゃがんだまま、狼と向き合った。

 「…ルーク?」
 尋ねると、友達との再会を懐かしむような目で近づいてきた。そして頭を下げた。「なでてくれ」と言っているように。
 手を近づけて、優しくなでた。嬉しそうに鳴いた。
 俺はそのままルークの首周りに手を回し、優しく抱きしめた。それにあわせるかのように、ルークは「待て」の姿勢になった。
 「…あの時、たすけてくれたのか」
 呟くと同時に、周囲に残りの狼達が集まった。レイ・マーク・シェパード…、汚れていて一目では分からなかったが、すぐに見分けがついた。
 「俺のことなんて、忘れてよかったのに」
 その時ルークが前足を俺の胸について、押し倒した。待っていましたとばかりに、4頭はそれぞれ目の前に顔を近づけて、思い思いに舐めはじめた。くすぐったくて思いっきり笑った。昔話かなにかで、こんな話を聞いたような気がするが、まさか自分の身に起きるなんて。
 「ムサシ君!」
 ともさんの声と、いくつもの足音が聞こえた。咄嗟に俺は起き上がった。
ク「どういうこと」
 「こいつら―いや、彼らは俺が昔住んでいた家で、一緒に暮らしていたんです」
あ「もしかして、あのときの」
 「そうです」
s「すげえ…」
ア「こんなことってあるんだ」
 シェパードはいつの間にか離れて、ソーラさんのそばに行っている。本人は頭をなでていて、もう怖がってはいない。シェパードも嬉しそうだった。
 傍らにはいつのまにかミーシャが来て、ルークと鼻を突き合わせていた。そういえば、この2人は昔から仲良かったっけ。
 レイとマークは、じゃれあうように周りを駆け回った。途中ともさん達の間に入りこんで、体をなでられていた。クミさんに関しては、さっき俺がしたのと同じように、マークを優しく抱きしめていた。なぜかマークは照れているように見えた。どうやら思っていることは同じらしい(笑)。
 「俺だけの力じゃありません」
ア「狼のこと?」
 俺は下に視線を移して、落ちていたハンカチを拾った。
 「ソーラさんが腕に巻いてくれたハンカチです。ヤツは最後に煙幕をはりましたが、そのときこれを使って口をふさぎました。おかげですぐに倒れずに済みました」
 聞こえたようで、腕の動きが止まった。
 「ありがとう、ソーラさん」
 そう伝えると、また首元が強く締め付けられた。痛かったけど、話をつづけた。
 「それに、俺も途中であきらめました。でも皆さんがいたからこそ、また立ち上がることができたんです。もしもたった一人で挑んでいたら、もうだめだったと思います」
と「いいこと言うじゃないw」
ア「これは歴史に残る名言だねww」
 全員が笑った。ソーラさんはそのままだったけれど、泣き止んだことがわかった。
 祝福をささげるように、朝日が大地を照らし始めた。

 怪我人を背負って、俺たちは村を後にした。
 アイクさんとバステンさんは歩けたが、クミさんとソーラさんが負傷していたので、残り3人のうち誰かがそれぞれ背負うことになった。俺は無理やりともさんをクミさん担当に指名した。本人は遠慮していたけど、「何もしてないから、これくらいさせて」と、ともさんが言ったおかげで、しぶしぶ了承した。その時こっちをキッと見たけど、殺気はなかった。こんなこと滅多にできないから、すかさずものにしてやった(笑)。
 当の俺は、言わなくても分かるよね。
(いや、だってこの流れでやらなかったら、「それ違うだろ」って思われるでしょ。みんな「やれ」的な雰囲気だしてこっち見てたし…)
 山を越えるのは厳しいということで、ぐるりと回るように進んだ。その間、背負っている人とは一言も話さなかった。締め付けも一定の力で留まったらしい。泣いてもいなかった。俺自身も体力の消耗があって、歩くことに必死だったから、話す余裕はあまりなかった。
 ちなみにあの時のハンカチは、しっかりとポケットの中に入れていた。

 
 ようやく拠点のそばに到着した。前方では残っていた3人が、先に着いたメンバーとの再会をよろこんでいた。俺は最後尾で歩くのがけっこう遅かったので、まだ玄関までの道のりは遠かった。
 むこうではすでに俺の姿を確認したようで、みんな手を振っている。表情はよく分からなかったが、showさん、わとさんも両手で大きく手を振っていた。あちゃみさんは特に嬉しそうだった。
 前だけをみて一歩ずつ、転ばないようにすすんだ。麦畑に入る手前で声が響いてきた。
「後ろ!」
 それがともさんの声だとわかるのに、時間はかからなかった。何事かと、咄嗟に振り返った。
 そこにはところどころ灰色に汚れた、白い獣が4頭、少し間をおいて全員がこっちを見ていた。あの時の狼だとすぐにわかった。
「ムサシ君…」
 ソーラさんがおびえていた。この状態では逃げることも、戦うこともできそうにない。二人とも無事では済まされないだろう。
 だが狼たちは襲い掛かるそぶりをみせなかった。本能であるはずの威嚇やうなり声も上げず、毛も逆立っていない。敵意もあらわにしていない。こちらを攻撃するつもりはないように見えるが、一体なにをしにきたのか。
 中から1頭が前に進み、こちらに向かってきた。数歩分の距離をおいて止まり、見上げてきた。りりしい目をもった立派な狼だったが、何より目に付いたのは、顔の大きな傷だった。

 俺はこの狼を知っていた 
 その時視線をそらしていたせいで、正面から近づいてくる人影に気がつかなかった。気付いた時には首元に腕がまわり、強く締め付けていた。
 「痛って…」
 背中から倒れそうになったが、何とか支えた。ソーラさんは無言で腕の力を強くしていった。でも泣いていることだけは、直感で分かった。
 どうしたものかとクミさんを見た。
ク「この子はね、最初にあなたを見たとき、今まで見たことがないほど泣いていたの」
 俺は頭の中で、矢だらけになったあのときの自分を想像した。もうだめだと、あの時思った。
ク「最後の最後まで、ずっと抵抗していた。それだけ本当に強い想いを持っていた。だから…、ね?」
 最後の「ね?」に無言の圧力を感じた。そしてなにをしろと言っているのかも、大体分かった。これも弟になったおかげでこうなったのだろうか?
 俺は両手をゆっくりとソーラさんの背中にまわし、包み込むように優しく添えた。こんなことをするのも、今までの人生で初めてかもしれない。
 とても温かかった。

 「ムサシ君!」
 鳥さんとアイクさん、バステンさんが向かってきた。そういえば、いままでどこに行っていたのだろうか。
バ「気がついたんだね」
 3人とも安堵の表情を浮かべているが、当の俺はこの状態なので、すごく恥ずかしかった。
と「どうだった」
バ「足跡はありましたけど、特にこれといったものはないです」
 「…何の話ですか」
 尋ねると、鳥さんが答えてくれた。
鳥「狼の群れが来たこと、覚えてる?なにかないか探しに行っていたけど、何もなかった」
 霧が晴れるようにその光景を思い出した。最初、ウィッチに1頭が襲い掛かって、それから群れがやってきた。逃げ惑うモンスターを次々と餌食にしていったけど、俺には何の手出しもしなかった。
 「覚えています。嵐の真っ只中にいましたから。だけど俺には何もしませんでした」
バ「もともと人を襲わないからね。でもこの有様だと、相当な荒れ模様だったみたい。そんな中で無事だったのは、ある意味幸運だよ」
 少し褒めるような言い方だった。まだ俺は得体の知れない高貴な存在に、見捨てられていなかったのだろうか。それとも、父と母が守ってくれたのだろうか。
 そんなことを考えていると、アイクさんが言った。
ア「でもちゃんとやっつけるなんて、さすがムサシ君だ。あの体でやり遂げるなんて」
 またお褒めの言葉だったが、半分間違っていた。
とおくから、何なのか検討もつかない、波長のような音が響いてくる。それは形を変えないまましだいに高くなり、ところどころ部分的に低くなってもいた。少しハッキリと聞こえてくると、それがなにかの言葉であることがニュアンスでわかった。何かを、いや誰かを呼んでいるように、何度も何度も、音は響いた。そして最後には、こう聞こえた。
 「むさしくん」
 それは俺の名前だった。

 永い眠りからやっと目が覚めたように、ゆっくりとまぶたを上げた。ともさんとクミさんが覗き込んでいた。空は日が差し込み始めたように、明るかった。
「…ともさん、クミさん」
と「気がついたんだね。気分はどう?へんなとこない?」
 「…ここは」
と「外だよ。ずっと倒れていたんだ」
 よく思い出せない。頭はまだ目が覚めていないらしい。だが一番気にかかっていたことはすぐにわかった。
 「ウィッチは」
と「あ、もしかしてわからなかったの?」
ク「あなたが倒した」
 そう言って、クミさんは俺の背中に手を回し、上半身を上げてくれた。横を見ると、俺の剣がヤツの胸部を貫き、しっかりと地面に立っていた。青いダイヤの剣は、光を反射してところどころ輝いている。
ク「本当によくやった」
 頭をなでられた。クシャクシャになるくらいに思い切りなでられた。クミさんの笑みは、今まで見たことがないほど笑っていた。おかげで頭も目が覚めたようで、すぐに体の異常に気がついた。
 「あれ、矢がなくなってる」
ク「ポーションを使った」
 「はい?」
ク「体から矢を抜いて、ヤツのポーションを使ったの」
と「そのおかげで傷一つなくなったってわけ」
 あらためてチェックしたが、刺さっていた箇所も、傷も、当然痛みも、全部消えていた。まるでそんなこと最初からなかったみたいに。
と「しかしあの時はすごかった。何本も刺さっていて、正直もうだめかもって思ったけど、ちゃんと生きていてくれたね」
 「約束しましたから」
 そう言うと、二人とも肯いた。
 
 正面に視線を移した。すると亡骸のなかで唯一、体が動いているものを見つけた。上半身が起き上がって顔が見える。帽子がなくなっていたが、顔だけでウィッチだとわかった。胸の辺りを深々とえぐられていて、どことなく動作も遅く、ぎこちない。かなりのダメージを受けていると見た。


 その時、燃えカスとなっていた心の中に、再び火が灯った。
 まだ俺は生きている。生きるチャンスをもらった。また…みんなの元へ戻ることができる。想いにこたえることができる。そのためには、越えなくてはならない。
 「必ず、戻る」
一言、小さく呟いて、俺は再び剣を手にして立ち上がった。そして前へと足を運んだ。左足に強烈な痛みがはしったが、それさえも糧にしてしまうほどの勢いで進む。
 それに気付いて、ヤツは白い液体の入ったビンを取り出し、正面へ投げつけようとした。だが深手の傷のせいか、ビンはヤツの手前に落ち、瞬く間に周囲を白く覆った。どこにいるかは大体把握したが、これだと一撃を加える前に気絶してしまう。
 判断に迷っている時、左腕が目に入った。ソーラさんが結んでくれたハンカチは、まだついていた。
 左手に剣を持ち替え、右手で乱暴にハンカチを引き取った。そして口を塞いで靄の中へと突っ込んだ。
 目論見どおり、すぐにはめまいが起きなかった。次第に視界がゆがんで、感覚がなくなり始めたが、同時に動くものが足に引っかかった。もう意識は消えかけていたが、そうなる前に両手で剣を持ち、できるだけの力で、強く地面に突きたてた。
 手ごたえがないまま、意識は消えた。