風景  石原吉郎

風景の中央へ
一枚の鏡面を押し立てる
鏡面の背後は
つまりは風景の
継続だが
鏡面がおしかえすのはついに
風景のこちら側だ
左右を明確に
とりちがえた
寸分たがわぬ風景は
もはや他界と
呼ぶしかないものだが
そこが入口だとの
保証はないままだ

 (詩集「足利」より)