K先生は発生学の先生でした。発生の講座は離れた建物にあったので、授業のためにいつも長い距離を往復されていました。寒い季節だったのかコートを羽織って歩く様子から、用務員さんだと思ってしまったことが2度もありました。


最近、似た経験をしました。先日、用事があって朝の時間帯に浦和駅に着いたところ、選挙運動スタートの日で、現職の大野元裕知事が埼玉県民に投票を訴えていたのです。


私は県民ではないので、その場を離れましたが、大野知事の存在感のなさ・地味感が、K先生のそれと全く同じでした。芸能人ではないのだから、OKです。



  秋のピエロ  堀口大学

泣笑ひしてわがピエロ
秋ぢや!秋ぢや!と歌ふなり。

Oの形の口をして
秋ぢや!秋ぢや!と歌ふなり。

月のやうなる白粉(おしろい)の
顔が涙を流すなり。

身すぎ世すぎの是非もなく
おどけたれどもわがピエロ、

秋はしみじみ身に滲みて
眞實なみだを流すなり。

 (詩集「月光とピエロ」より)