サークルが同じだった、F女子大で2才上のKさんは国文科の学生で、どういういきさつかは忘れてしまいましたが、二人で本屋をぶらぶらしていた時に、「この頃、石原吉郎の詩と、高橋たか子の『空の果てまで』を読んでいるの。」と、教えてくれました。高橋たか子は、配偶者の高橋和巳のものを読んだだけで、重すぎて読めずに現在に至っていますが、石原吉郎の方は図書館で拾い読みしたりして、いつのまにか気になる詩人のひとりとなりました。あの日、あの時がなければ、ポイトンの好きな詩に、彼の詩を選ぶこともなかったことと思います。(知っている限りのアンソロジーに、石原吉郎の詩は選ばれていません。)

 伝説  石原吉郎

きみは花のような霧が
容赦なくかさなりおちて
ついに一枚の重量となるところから
あるき出すことができる
きみは数しれぬ麦が
いっせいにしごかれて
やがてひとすじの声となるところから
あるき出すことができる
きみの右側を出て
ひだりへ移るしずかな影よ
生き死にに似た食卓をまえに
日をめぐり
愛称をつたえ
すこやかな諧謔(かいぎゃく)を
銀のようにうちならすとき
あるきつつとおく
きみは伝説である

 (詩集「サンチョ・パンサの帰郷」から)


彼女は士別市の出身で、実家は紙問屋とのことでした。冬休み明けだったか、黄色のビニール製の筆入れを、店にあったからと渡されました。小さなウサギがいっぱい、布の模様のようにプリントされていて、キャーっと叫びたいくらいうれしくて、長く大切に使っていました。何のお返し?もせず、いまどこでどうしているのか、わからないままです。(・ω・)/