ヨーロッパ古代、中世の人々は、二つの宇宙、大宇宙と小宇宙のなかで暮らしていました。

大宇宙は未知の力にあふれる混沌状態で、神々や精霊、妖怪や怪物が棲(す)んでいるところと考えられていました。

中世の人びとが、かろうじて掌握しえたのは小宇宙だけで、家の垣根の外はもう大宇宙であると思われていたのです。


賤民として差別されることになる人びとは、中世中ごろまではみな、大宇宙を相手にして仕事をする異能力者として、畏怖(いふ)される存在だったのです。死刑執行人はその典型でもあったのです。
 クローバー小宇宙は人体と家、家の中 星空大宇宙は外界or木火土水


星空 大宇宙を相手にする仕事 新月
右矢印死刑執行人、捕吏、墓掘り人、塔守、夜警、浴場主、外科医、理髪師、森番、木の根売り、亜麻布織工、粉挽き、娼婦、皮はぎ、犬皮鞣(なめし)工、家畜を去勢する人、道路清掃人、煙突掃除人、陶工、煉瓦工、乞食と乞食取締り、遍歴芸人、遍歴楽師、英雄叙事詩の歌手、収税吏、ジプシー

 

(阿部謹也「自分のなかに歴史を読む」第5章 笛吹き男 
      との出会い より)