大人になってから、古本屋で文庫本の「ノンちゃん雲に乗る」を見つけ、なつかしくなり、買いました。再読して、子どもの頃には読み飛ばしていた点に気がつきました。

ノンちゃんは、お爺さんに成績を聞かれ、「全甲」(今で言う、オール5)と即答。両親や先生の言いつけをよく守る良い子でした。
一方、お兄ちゃんは特に取り柄のない、いたずらっ子でした。ところが意外なことに、お爺さんは、「お前のような秀才の妹を持って、兄ちゃんは、さぞ辛かろう。」「そういう兄ちゃんの立ち場を、お前は理解してやらんといかん。」と、ノンちゃんに言うのです。

このとき、ノンちゃんは8才で、思いもよらないお爺さんの言葉を、理解できたかどうかわかりませんが、その言葉は、心の隅に、大切なこととして残ったはずです。

ノンちゃんは、本当に秀才だったようで、その後女医さんになるところで、お話は終っています。

大泣きして、ひょうたん池に落っこちたことで、ノンちゃんは雲に乗ることになりました。日常からいったん切り離された時間を生きて、ノンちゃんは、人として不可欠なことに、自ら気づくきっかけを得ることができました。

すなわち、外から自分を客観的に見つめる目、内省の力の芽が、このとき育ち始めたのだと思います。(過去ブログの再録です。)