第一作から数えて４冊目。人気の余り続編を出したのが裏話なのだろうが、それにしても後半は少し退屈なストーリーになってはいないだろうか。おそらく前作で世之介ファンになった読者は，その純粋で初々しさが失せてしまった世之介に少しがっかりさせられることだろう。人が好きで楽しさを失わせない人柄の良さを最後まで見せてくれたのは嬉しいが。
昨秋ネパールでヒエの発酵酒トンバに出会い、ヒマラヤ地方の酒に興味を持っていたところ、まさに発酵学の専門家が現地に出向いて、日本の糀のルーツを辿る紀行文が最近出たことを知り興味深く読ませてもらった。
学術的な調査でなく、単に好きが昂じて旅に出、興味の赴くままに発酵に纏わる場所を求めていくという旅のスタイルが気に入った。人との出会い、少数民族の生活文化に触れる体験。懐かしいアジアの田舎風景。
私自身が中国やラオス、ネパールで見て、触れて、体験した経験と重なり、言葉にできないような郷愁を感じた。
筆者のほかの作品にもぜひ触れてみたい。
どの作品もほろっと酔わされる酒と恋愛話。テーマも良い選択だが、それに答えた各作家の手腕に感服。第１編も読みたくなる。