診察室に入ると、医者が立って待っていた。



「…お久しぶりです。」と父が頭を下げた。



相手の医者も同じように頭を下げ、
「名前を見てびっくりしましたよ。どうされたんですか…」
「こんな形でお世話になるとはお恥ずかしい」と言った。


どうやら知り合いらしい。


2人がそんな会話をしてる間に看護士さんが私と母の分の椅子を用意してくださり椅子に座り、緊張が走る中診察が始まった。


医者に症状をきかれ、父は淡々と話す。
いつも「大丈夫」しか言わなかったくせに、初めて父の口から症状を聞いた。


触診後、医者がすこし戸惑いながら「…腸閉塞になりかけてるかもしれませんね…腸カメラでみてみましょう。」と言った。


父は「これは癌だと思います。」と答えた。


私たちには「大丈夫」とばかり言っていた父の口から出たまさかの発言に私と母は言葉を失った。




「可能性は高いですね」




血圧や血液検査やレントゲン写真を終え、最後の医者による触診での待ち時間に、その日あまりしゃべらなかった父が突然しゃべりだした。


「ワシの目みてみ。」


「????」


「黄色いやろ。これは黄疸なんや。…ごめんな」


「何を謝っとるん?もうすぐ順番やね。原因見つけてもらって早く元気になってね!」


「…ごめんな」



そんな会話を遮るかのように父の名前を呼ぶ声がした。
順番がきたらしい。


「よし行くよ」


診察室に入る瞬間、心臓が止まるかと思うくらい
緊張したのを覚えている



医療センターで受付まで歩いてると、あまりにも父がしんどそうにしているので車椅子を借りてきてあげた。


父はほっとしたように車椅子に乗る
「こりゃ楽だ」


父の険しい顔が少しだけ和らいだような気がした。


最近仕事が忙しかったみたいだから、きっと疲れが溜まってるだけに違いない。
きっとここの病院の医者が治してくれる。


おそらくそばにいた母も同じ気持ちのはずだ。


「きっとすぐ元気になるよ」と父に声をかけ、私はトイレに行った。