「岸博幸(氏)のクリエイティブ国富論」より
<転記開始>↓
2011年11月4日
「除染を巡る独法の中抜き」を検証する
福島県では放射線を除染する作業が進められており、そのために様々な予算措置が講じられています。その中で、独立行政法人に除染事業を委託した予算について、その一部が中抜きされているのではという懸念があります。行政改革がなかなか進まない中、除染に使われる予算でも本当に中抜きが行なわれているとしたら、由々しきことではないでしょうか。
■関係者の主張
その独立行政法人は、日本原子力研究開発機構(以下「原研」と略す)です。この問題を指摘したみんなの党の渡辺喜美先生によると、第2次補正予算の予備費から除染モデル事業として118億円が原研に委託されましたが、原研を所管する文部科学省から渡辺先生がヒアリングしたところ、118億円は以下のように使われるとのことでした。
除染に関する部分(再委託など) 92億円
(再委託は1市町村あたり6億円×12地域=72億円)
除染計画策定にあたっての詳細モニタリング 6億円
除染技術公募 3億円
一般管理費 5億円
人件費 6億5000万円
消費税 5億円
即ち、118億円のうち、再委託関係での差額20億円(92-72)、原研が行なうモニタリングの6億円、更に人件費と一般管理費を合計すると、予算118億円のうち37.5億円が実際の除染に使われないことになります。
このため、渡辺先生は「原研に委託される予算118億円のうち37.5億円が原研に中抜き(ピンハネ)されている」と記者会見で厳しく批判しました。それを受け、私もあるテレビの番組の中で同様の指摘をしました。
すると、原研は渡辺先生ではなくテレビ局に対して「事実誤認であり中抜きはない」と言ってきたので、渡辺先生は今週、臨時国会の代表質問で「ピンハネではないか」と野田首相に質問をしました。それに対する野田首相の答弁は、以下のとおりです。
「当該事業の予算は現時点では支出されておらず、事業実施後に、仕様書等に基づく経費であって当該事業に使用されたことが帳票等で確認できるものに限り、国が必要額を支出することとなっています。
そのため、事業に要した経費以外の費用を他の用途に使うことはできませんし、また、ご指摘のような金額を日本原子力研究開発機構が最終的に受け取ることは、確定した経費に限り必要額を支出するという事業の性質上ありません」
■中抜きに加えて天下りまで
このように野田首相は「ピンハネはない」と答弁していますが、実際は何も答えていないに等しいと言わざるを得ません。“帳票等で確認できるものに限り支出する”、“確定した経費に限り必要額を支出するという事業の性質上(ピンハネは)ありません”と、当たり前のことしか言っていないからです。
独法や公益法人が政府予算の委託事業を受ける場合、その法人が自ら事業を行う場合でも民間などに事業を再委託する場合でも、予算額の10%程度を管理費などとして取ります。自ら事業を行う場合は分かりますが、再委託の場合は、その法人が何もしないのにお金だけ取ることになるので、まさに予算の中抜き(ピンハネ)に他ならないのではないでしょうか。
今回の原研の場合は、事業は再委託するにも拘らず、管理費と人件費で合計11.5億円と予算のほぼ10%を計上しています。野田首相はこの金額を受け取ることは中抜きに該当しないと考えているのでしょうか。問題は、独法や公益法人が外部に再委託を行なう構造なのです。
次に、今回の原研の場合、除染費用についても20億円の使途不明部分があります。この20億円について、もし原研自体が除染を行なうために使うとしたら論外です。再委託をするということは、原研は予算執行のジャッジの立場のはずです。ジャッジが予算執行のプレイヤーも兼ねるというのは利益相反であり、予算が絡む事業ではもっともやってはいけないことだからです。
原研についてもう1つ指摘しておくと、10月に原研の監事に政府の会計検査院のOBが就任しています。民主党政権が始めた公募のプロセスを経た就任ですが、既に多くの識者も指摘しているように、応募条件を限定すれば官僚OB以外は応募しにくいのです。そして、気になるのは、受け入れた監事が会計検査院OBだということです。
会計検査院の仕事は、各省庁の予算が適正に執行されているかを検査することです。その一方で、会計検査院OBは様々な省庁所管の独法や公益法人に天下りしています。なぜそうなるのでしょうか。私の官僚時代の経験から、会計検査院OBがある省庁の法人に天下りする場合は、その省庁や法人の予算執行で大きな問題が見つかり、それを見逃してもらう代わりに会計検査院に天下りポストを提供することが多いのです。
原研には今年度で約1800億円と毎年多額の予算がついていますが、予算執行について問題があったのかどうかは分かりません。それでも、会計検査院OBが原研に再就職したとなると、何かあったのか、今後の原研に対する会計検査は緩くならないかなど、国民目線からは様々な疑問が浮かんできます。
■原研を皮切りに正しい独法/公益法人改革を
以上から、原研はある意味で、民主党政権のこれまでの行政改革の失敗の象徴とも言えるのではないでしょうか。
野田首相は“予算の中抜きはない”と国会で答弁しました。繰り返しになりますが、委託事業を外部に再委託するだけで管理費など10%を取ること自体、常識的には中抜きです。首相が国会答弁で“ない”と断言した以上、本当にそうなのかどうかをしっかりと見極める必要があります。
そして、原研が除染の予算を受注した同じ月に会計検査院OBの再就職が決まるというのも、偶然にしてもひどい話です。こうしたことが起きるのも、民主党の独法/公益法人改革が官僚によって骨抜きにされたからです。原研を反省材料に、民主党政権はもう一度正しい独法/公益法人改革に真摯に取り組むべきではないでしょうか。
↑<転記終了>