約束の場所には、35分遅れぐらいで到着しました。
彼が分かるようにと、友達が写真を1枚送ってくれていたので、スマホを片手に周辺にいた人達の顔を見ました。

寒くて風も強い日でしたが、友達の彼は、まだそこに立っていました。
送ってもらった写真と印象がそのままだったので、私はその人に直ぐに気が付きました。

あぁ…まだ居る…
声、掛けなくちゃ…

そう、私、かなりの人見知りで(いい歳をして恥ずかしいのですが、どうも一生治りそうにありません)、仕事以外で初対面の人に私から話し掛けるなど、かなりの難易度高めな上に、エネルギーの消費は待ち合わせ場所に向かうと決めた時(知らない人に会うと決めた時)からかなりの勢いで進んでいて、到着時はかなりポンコツ化していました。

一応、貰っといた番号に、かけてみる?
もしかして、繋がるかもしれないしと電話してみましたが、やはり彼のスマホは繋がりませんでした。

逆ナンとか思われないかな…
おばちゃんが逆ナンしてきたとか、怯えさせてしまわないかな…
あぁ、死ぬほど恥ずかしい…
こんな時は、そう、深呼吸で自律神経を整えて…

私は意を決して声を掛けました。
「〇〇さんですよね?」
少し驚いた表情でこちらに顔を向けたその人に、私は続けて言いました。
「私は決して怪しい者ではなく、××の代わりにお伝えしないといけないことがあって参りました。××の友人です。今日××は、彼女のお母様が急病で入院されたので、ここには来られませんでした。〇〇さんには何度も電話をしたようですが、繋がらなかった為に、私ならば秘密を守るのではないかと白羽の矢を立てられたようで…」
何故かそこで、その人はハハッと吹き出しました。
「?」
「あ、ごめんなさい、白羽の矢って、何だかハマってしまって」
「あ、すみません、そんな訳で、私が代わりに馳参じました」
「あははは。馳参じて下さって、ありがとうございます。可愛い格好してるのに、面白いですね」
がっかりされたり、落ち込まれたらどうしようと思っていたので、友達の彼の対応に、私は少しホッとしました。

電話が全く繋がらなかった理由は、マンションの自動ドアを通るタイミングでスマホを落としてしまい、運悪くスマホが自動ドアに挟まってしまった。スマホは画面が破損してしまい、操作が全く出来なくなってしまった。
かなり焦ったが、彼女とはお昼に最後の連絡を取っていたので、会った時に事情を話し、新宿ならiPhoneの修理を出来るショップもまだ空いているので、彼女と落ち合ってからショップにスマホを預けて食事に行くつもりだった…ということでした。
私からも彼女が今病院にいること、連絡を出来るタイミングでするが、今夜はお母様に付き添うので、中々難しいかもしれないことを伝えました(友人からは、姑さんではなく、自分の母が倒れたことにして欲しい、付き添いは本当は泊まれないのだが、今夜は義妹が自宅に泊まるので、連絡が難しい。それについても、病院に付き添うから連絡出来ないかもしれないということにしておいて欲しいと頼まれていました)。
友人の恋人は、「××に何かあったのではなくて良かった。それが一番怖かったので」「お母さんが急病なら、彼女もきっと不安ですよね、そんな時に僕のことまで考えてくれて、申し訳ない」「不謹慎ですが、××が、僕達のことを誰かに話したことがとても嬉しい。僕のこと、誰にも話さないと思っていたので。彼女の人生の中に、僕がいたということを知っている人がいるってことが、なんか本当に嬉しいです」と言いました。

私は、無事に会えたことと、今聞いたことを友人に連絡するということ、それと、友人から聞いた彼の番号は、さっき一度かけて着信を残してしまったけど、番号自体もう削除しますねと、スマホを出して、発信履歴に残った番号を削除するところも見せました。
「××とのLINEのトークにあなたの番号が残っていますが、それも削除するので安心して下さい」と伝えました。
そして、お互いに「ありがとうございました」と何度も深々と頭を下げ合い、私はその場を去りました。

帰りの電車の中で、友人にLINEし、私の長い長い1日は終わりました。


友人が不倫していること、逆年齢差の若い彼だったこと、初めて知りましたが、特別な驚きはありませんでした。
ただ、またしても元彼との6年5ヶ月が蘇り、私はまた、数日間、元彼との思い出や当時の元彼の気持ちを慮ることになり、その呪縛に苦しみました。