友達の不倫相手に、彼女の状況をお伝えするという緊急任務を無事に終えた数日後、その友達から「お礼も兼ねて会いたい」と、連絡がありました。

仕事が丁度忙しい時期で休日出勤もあり、疲労も溜まっていたので、仕事帰りに少しだけならと伝えると、職場近くの駅まで、わざわざ彼女が出向いてくれました。



待ち合わせのカフェに入ると、もう彼女は来ていました。直ぐに目が合い、久しぶりの再会にどちらともなく軽いハグを交わしました。

「久しぶり〜元気だった?あの日は突然連絡して、久しぶりなのに急なお願い事までして、本当にごめんね。感謝してる」

「いえいえ、お役に立てて良かった」

「驚いたでしょ…ね、〇〇の若い彼氏は元気なの?相変わらず?」

あぁ、そうか。

彼女とは、コロナ禍と同時に疎遠になり、LINEのやり取りは会う約束を取り付ける時に連絡し合う感じだったので、SNSでの連絡すら、ここ数年全くありませんでした。なので、同じくコロナ禍が始まった年にお別れをした元彼とのあれこれについては、まだ彼女は知らなかったのです。

「えっと…実は、別れたの。コロナ始まった年の…2020年かな…その年の9月に」

「えっ??」

この、元彼と別れた話をした時に、何故か彼女の表情が明らかに変わりました。

「何で?彼、〇〇にベタ惚れだったよね?」元彼と彼女は、数回会っており、面識がありました。

「え?どういうこと?〇〇から?彼は私に、自分から〇〇と別れる事は絶対にあり得ないって言ってたんだよ…最後に飲んだ時も、〇〇のこと迎えに来てたよね?」元彼は、私が友人や職場等で飲み会があると、帰りが心配だと言ってお店まで必ず迎えに来ていました。職場の飲み会に合流することは流石にありませんでしたが、友人の場合は、後半から彼も一緒にという流れが多かったです。

「ふふっ…そうだよね。確かに、時々は重たくなる程、彼にとって私が全てだった時が長く続いていたとは思う。あんなに愛されたのは、人生の中で最初で最後だって言い切れる。でもね、そこにあぐらをかいていたのかな。別れは…彼からだったよ」

「…理由は?」

「色々重なったと思う。色々重なって、そんな時にコロナという未知の感染症が日本にもやって来て、私も上手く身動きが取れなくなって…私に対して少しずつ溜まった不満を、上手に埋めてくれる人が近くに現れた」

「え?彼の浮気ってこと?」

「うーん。別れる時は彼もそこは認めなかったけど、でもその女の人の存在は大きかったと思う。私じゃなきゃダメだって思ってた人が、いや、私じゃなくても大丈夫かもって思ったきっかけにはなったんだろうし」

「は?何それ?」

彼女らしくない、いつにないキツい言い方に私は少し驚きました。

「なんか、がっかりだわ」

そう言った後、彼女は、家庭でのこと、旦那さんのこと、子供さんのこと、家庭では埋められない何かを、恋人に補ってもらっているということ、一通り自分の話をしました。そして、家庭が息苦しくて仕方ない、一時はパニック障害になり、安定剤も飲んでいた。不倫はいけないことだというのが常識かもしれないが、自分を保つ為に必要だと、早口に吐き捨てるように続けました。そして、全て言い終えた後、

「離婚を選んだ〇〇からしたら、私のこと、蔑んでいるんでしょ?」

と、眉間に皺を寄せました。


今、なんて?私は耳を疑いました。


…悲しかったです。

悲しくて、数分、返す言葉が出てこなかった。


「蔑むなんて…価値観も考え方も、人それぞれだよ。私は、私が選んだ道が全て正しいなんて思ってないよ」

やっとの思いでそう答えましたが、

「でも、同じ状況なら、〇〇は離婚を選ぶでしょ?」

「うん」

「それはどうして?」

「その苦しみを堪える自信がない」

「その苦しみは、恋人が埋めてくれるの。それでも〇〇は離婚を選ぶよね?」

「うん、多分」

「それはどうして?」

「恋人がいるのに、他の男の人とは、私は、暮らせない」

「ほらね、私のこと、馬鹿にしてる。私みたいな人間、軽蔑してるでしょ」


彼女も、疲れていたのだと思います。

だけど、私も疲れていた。

彼女は、余裕が無かったのかもしれません。

だけど、私もこの日は、それを受け止める心の余裕はありませんでした。

私の個人的な事に関する意見や思考は、私に対してのみ有効であり、彼女も然りです。それを上手く説明できる気力も意思も、この日の私にはありませんでした。


「離婚して、1人で子供育てて養って、経済的に自由が無くなった私を、××ちゃんは馬鹿みたいって思ってる?自分みたいに、結婚は続けたまま、不倫でもすれば良かったじゃんって思ってるの?そう思ってるから、そんなこと言うの?」

彼女の答えは聞かずに、私は席を立ちました。

うっかり泣いてしまいそうで、その場を直ぐに去りたかったからです。



早く家に帰ろう。

大好きな息子達がいる、家に帰ろう。

苦しめる人、傷付ける人の居ない温かい家で、早く3人でご飯を食べよう。













ブログを書きながら、彼女はあの日、当たりどころが無い何かで一杯だったのかな、もしかして、精神的に凄くしんどかったのかな…と、私が最後に彼女に言った、

「目には目を」な発言に後悔しました。



あーあー

まだまだだなぁ