アタシはただ誰かに、アタシが想う人たちに、アタシの事が必要と思って欲しかったかっただけなんだ・・。



アタシは、幼い頃から人と少し違っていた。

だからなのか、周りからはそんな異分子が異常だと写るのか、いや、今思えば、純粋な子供社会ゆえに、子供同士のコミュニティというものは残酷な世界なのかもしれない。


けれども、大人になってからアタシは、大人になっていく過程を得てアタシは、普通では得られない多くの経験をしてきた。


人並みに恋もしてきたし、その時々で、人には言えない経験もしてきた。


アタシは、自分で言うのもなんだけれども、他人の長所や短所というのを、そこを見抜く術というか、そういったことを分析する才があるのだと自負している。


だからその結果、人と人との【縁】を紡ぐことはやってきたし、事実としてその【縁】が未来に向かっているのだと、自己満足ではく、周りもそれを認めてくれている。


けれどもアタシは今、なぜこんなに苦しくて満たされなくて、ずっと、ずっと一人で苦しいのだろう・・。


そんなアタシが今、ふと思い出したことがある。


それは少し前、自称僧侶だという、有髪だし、見るからにうさん臭いおじさんが言っていた、あの理(ことわり)のことだ。


「人間の心の状態は、刹那(せつな)に、つまり音速よりも速い速度で、常にその自ら住うところを替えている。言い方を変えれば、さっきまで温厚だった世界の住人が、気づいたら悪鬼羅刹の如く修羅世界の住人になっていた、という具合いです。それが、人間の心の状態という本質です」


アタシは、そう教わった十の世界の中の六道、その呼称の別称を迷界と言うらしいが、その六つの心の状態(世界)がある事を思い出した。


その最も苦しい地獄界とは、生きていることそのものが苦しい、そんな苦しみに自らの心が囚われてしまう世界


そしてその次に苦しい世界、それは餓鬼界


自らが欲しかったものを得ても、その得ている事実に気づかずに、「まだ足りない、もっと欲しいのだ、もっと、もっとだ」と人間らしい【感謝の念】を見失ってしまう世界


そしてその世界よりは多少マシかとは思える世界、それは畜生界と呼ばれる世界


例えばそれは、食欲・性欲・物欲・支配欲等、その時々に変わる己の欲求のまま、つまり動物的本能のままに行動する世界


そんな畜生よりは上なのかどうか、アタシはよくわからないのだが、武力を持って、そのものごとを解決する状態を修羅界と、そのように呼称するらしい


アタシはそんな悪趣に堕ちることなく、ずっとずっと、人間の心を今まで通り保っていたいんだ。


そんなアタシの純粋な心を満たすこともなく、傷ついてしまったアタシの心を癒すこともなく、そんな周りの人たちに、アタシは哀しみと怒りが交互に沸いてくる。


アタシがこんなにも苦しんでいるのに、なぜアタシのことを友達だと言っている人たちは、今日は、この苦しい時に側に居てくれないのだろうか


昨日や、その先おとといは、アタシの側に居てくれたのに・・。


他人は、普通の人はアタシとは違うんだ、アタシはSNSの世界で繋がっている、あの活躍している人たちのように、普通とは違う特別な人たちと、同じように生きるべきなんだ。


いままでだってアタシを中心に、アタシが声をかけたから、色々なコミュニティだってできたではないか・・。


アタシが、アタシの心は・・。



お互いに大好きだったけど、大嫌いだったあの人を、アタシがどれだけあの人にとって特別で必要な女だったのかを、アタシはわからせてやるつもりだった。


それなのに、なぜ・・。


もう二度と直接文句を言うことができないあの人からのメッセージは、今から少し前、アタシの思い違いからその心を、酷く傷つけてしまったことのある、アタシの友人から教えてもらった。


「大切な人を失う辛さを、大切に想う人に経験させたくないと、ずっと思っていた。

自分が思っていた現実とこれは違ったけれども、やり直すことが叶わないのが自分一人で、やり直すことが叶うのが、大切な貴女で良かった。

貴女には、笑顔が似合うと思う。

色々と、ありがとう。」


アタシは、アタシは・・。


違う、足りないではなく、アタシは得ていたんだ。

得ていたのに、もっと得たいと、もっともっとと我儘な自らをコントロールできずに・・。


認めて欲しいから、アタシは認められるべきだと寂しかったから、誰かのマウントを取りたかったのかもしれない。


アタシは、大切な人の言葉の刃物に傷ついてきたのに、いつの間にかアタシはその言葉の刃物を、無意識のうち他人に向けていたんだ・・。


人生の戻れない辛さと、やってしまった後悔が、未来に進む為の動力ではないかと、あの時のお坊さんが言っていたことを、今になってその意味が、アタシの心に沁みた。


「無いものは、いくら探しても見つかりませんよ」と笑っていた、あのお坊さんがアタシに伝えたかったこと


それはアタシが無意識にずっと探し求めていた、「人と違う特別な、SNSで映えるような皆んなと同じ」そんな双極は、あり得ないのだと、存在しないのだと教えてくれていたのだと、今更ながら理解できた。


アタシは、何から逃げてきたのだろうか?


あの人に後悔させてやりたい気持ちは今も変わらないから、アタシは、もう一度自分自身の弱さと闘うことに、決めた。


何度でも、そこに逃げたくなる自分の弱さに抗ってやろうと思う。


あの人が遺したくれた心、それをこれからも育んでアタシは、もう二度と、笑顔の似合う女の称号を我が心から離さずに、笑顔のまま生き切ってやるんだ。


アタシは、過去のアタシには負けない。