アンティーク調に飾られた店内


天井には


羽根の部分が木目調のシーリングファン


この店が


外のあくせくした日常と


一線を画してるのは


店に出入りするドアの


あの「カウベル」の存在なのだろう。



あのカウベルが鳴るドアが


欲にまみれた俗世との


境界線になっているのかもしれない



ぼんやりとそんなことを考えながら



カウンターに座る


隣りのA子に視線を戻した。


もうどのくらい


この沈黙が続いているのだろう・・。


私は


こうなることは


予想できていたのかもしれない。


だから無意識のうちに


相手を正面に見据えなければならない


テーブル席を避けて


このカウンター席を選んだのだと


今さらながら気づいた。



私はこの沈黙に耐えられなくなり


再びA子に話かけた。

「俺がA子の側に居ることで


A子が幸せになれるとは思えない。


A子に幸せになって欲しい


と思う気持ちに偽りはない。


ただ俺は・・」



私はここで言葉に詰まってしまった。


それからまた


どれくらい沈黙の時間が流れたのか・・


A子は俯いたまま一言も発しない。


私は意を決し


自分の利得に


傾斜してしまうかもしれない


頭で考えるのをやめ


心から自分の想いを伝えることにした




「A子、この世の生きとし生けるもの


人も例外なくいつかは死ぬ。


この浮き世から離れ


いつか俺自身が来世に行った時


俺はA子を探しに行く。


もしかしたら


探しても見つからないかもしれない


けど俺は


自分がそうしたいからそうする。


謝る気はない。


俺はそんな男だ。


じゃあな」


私は伝票を無造作に掴み席を立った。



その刹那


私は右足のふくらはぎに


激しい痛みを感じた。



うおぉぉーっ


こむら返り久々!痛えぇぇーっ。




私は壁を利用し


アキレス腱を伸ばすような格好で


痛みが治るのを待った。







「ふうぅぅーっ」

数分で痛みは治り


「また足つったら嫌だな」と


寒がりながら布団を畳んで独りごちた



「なんちゅー夢だ。


てゆうか、A子て誰やねん。


人の夢に勝手に登場すんなっちゅーの」





数年前


師僧の寺院に出仕した日のこと。


祈願護摩法要は


「お願いごと」だけではなく


来寺される方の中には


「祓い、浄める」ことを


祈願する方もいる。


その日はたまたま


「霊能力」をお仕事にされてる方が


来寺されていたと


法要後に


「導師」を勤める師僧から


聞かされて知った。

法要後


退堂して控え室に戻ってからの会話 



※私の名は仮名で「隻鷹」とします。



師「隻鷹さん


法要中なんかあった?」


私「え?あー、いやあ


見えてるわけじゃないから


なんとお伝えしたら良いか


わからないんですけど・・。


導師さまに向かって行く


黒いモヤモヤした雲とゆうか


煙みたいのが近づいてきたので


お守りせねばならんと思いまして


で、ちょっと脅したとゆうか・・


もし私の意識を言葉にするならば


地獄に引きずり込まれてもいい 


とゆう覚悟があるなら来い。 


どっちが本物の悪党が教えてやる。


という感じで睨みました」



師「あー、だからか!


帰っちゃったんだよね


どっか行っちゃたの怯えて。


あのね隻鷹さん


作法して法力で呼び寄せて


護摩の炎で業を焼き尽くして 


浄らかな世界に導くの。


今日来てた霊能者の人が


自分で祓っても


また戻ってきちゃうから


浄めて欲しいと頼まれたからね。 


隻鷹さん


あなたは覇気が強いんだから


脅しちゃダメだよ。


普通の人とは迫力が違うんだから


気をつけてください!」



私「はい、すいません。


以後気をつけます。


あの・・ 


ところでつかぬことをお伺いしますが


師僧は見えてるんですか?」



師「見えてないですよ。


感覚はあるけどね。


見えてたらこちらも動揺して


作法間違えちゃうじゃないですか笑」


私の心の声
「なんだこの見えてない者同士の会話


袈裟着てなかったら


病院連れてかれるな笑」

 

去年のことだけど 


クライアントであり


友人でもある社長さんに呼ばれた。


会わせたい人が居るとのことで 


その女性はどうやら


「見える」らしい。



私は


待ち合わせとして指定された


店内の席に座した。



異業種交流会なのか


何人かが名刺を交換している。



私を見つけた友人が


女性と一緒に近づいてきた。



その女性は挨拶もそこそこに


私にこう言った。



女性「あの、居ますよ。


後ろとゆうか・・」



私「なんか見えます?」


女性「複数・・ 


てゆうか、生き霊みたいのも居ます」



私「あー、でしょうね。 


その類いだと思ってました」



女性「え?見えるんですか?」



私「見えないですよ」



女性「じゃあなんで?」



私「かたおもいの」



女性「片想い?」



私「肩こりとかじゃなくて


重いの。あー、いるなって笑」



女性「お祓した方がいいですよ!


なんか


あなたにすがってる感じがします」



私「ありがとうございます。


毎日自分で祓ってます。


生業とゆうか


職業ではないけど僧侶なんで私笑」



女「えぇーっ?意味がわかんないです」



私の心の声
「ハゲじゃねーからそう思うわな笑」





この国の混乱はまだ続くだろうけど


「陰極まれば陽と成る」


※闇夜が深まれば、いずれ朝陽が差す

完成しなかった一日を


悲観しそうになったら


見る角度を変え、未完成を喜ぶ。
 
「これで良いのだ笑」

未完成だからこそ 


「発展」とゆう 


明日以降の未来が存在する。




貴方の笑顔を


貴方の護りたい未来のために 


施してください。