昨年末、ポストに一通のお手紙が届きました。

見覚えのある白い封筒。

見覚えがあるけど…どこか違和感のある文字。

裏に書かれた差出人には、浮かんだとおりの名前がありました。

 

尊敬する大先輩。

何かしら?

 

だって、尊敬するこの女性。

10年近く前かな

定年の年齢を迎えられ、

営む自由業をきっぱりと引退し、

「雲隠れしまーす」って感じで

田舎暮らしをなさったんです。

それはそれは、潔かった。

 

 

あらゆる連絡を断ち切るというので、

わたしもご遠慮して、

年賀状だけ一方的に送らせていただきました。

 

 

ただ、子どもが20歳になったら、

感謝の手紙を書く、と決めていました。

 

 

子どもを産んだとき、

便箋に何枚もお手紙をくれたんです。

 

 

そんな親密な間柄ではなく、

それどころか直接の関りはほぼ無し。

女性は雲の上の存在というお立場。

なのに、ある日、自宅に分厚い封筒が届いて。

 

 

お母さんだからって、

がんばりすぎないでください。

できないことがあっていい。

 

ただ、おひざにいっぱい抱っこして、

たくさんたくさん抱っこして、

抱きしめて、

 

絵本をおひざでたくさん読んであげたりして、

それで良い。

 

周りの親たちが我が子自慢や

子を介して競争をはじめても、

離れて、お膝に抱っこしてあげてください。

 

チビちゃんとほかの子を

比べなくって大丈夫。

チビちゃんはチビちゃんという宝です。

 

わたしの子はもう大きいけれど、

振り返って、それだけで良いんだと

これだけは確かなこと。

いっぱいお膝に抱っこしてあげてください。

 

 

言葉は正確ではないけれど、

そういうことが書かれていました。

 

 

おおきく膨らむ曲線と

ちょっと太めの堂々とした特徴ある文字。

優しくて優しくて。

 

産まれた瞬間から上手くいかない育児で、

息子の病気や性質のむずかしさ、

わたし自身の社会復帰できない鬱屈

そんなものでクタクタ・・・

お手紙が届いたのは、そんな時でした。

 

 

ぼろぼろと落涙して

温かさに大泣きしました。

 

 

その後、何通かお手紙を交換しました。

 

 

子育てでマイナス面に押し潰されると、

決まってあの手紙を読みました。

読んだり、思い出すたび、

包まれるのです。

包まれて救われる。

 

 

思いやりが放つ力は消えない。

間違えそうになると、止めてくれる。

 

(つづく)