愛と認識との出発(倉田百三)3何が人生において 最もよきことぞと 問い顧みるとき 官能を透して来る 物質の快楽よりも 恋する女と 愛する友と 相抱いて 胸をぴたりと融合して 至情と至情との 熱烈なる共鳴を 感ずるそのときである。 魂と魂と 相触れてさやかなる 囁きを交わすとき 人生の最高の快楽である。 かかるとき利己・利他 という観念のわきおこる 暇はないではないか。