寂しいと苦しいと切ないと死にたいと心の中で幾度も幾度も呟けど三十路間近の害児男に誰も優しい言葉をかけてくれたり頭を撫でてなんてくれないと薄々知りながらもそれでも幾度も幾度も呪詛の如く寂しいと苦しいと切ないと死にたいと呟きながら狐火を耳の中で鳴らしながら僕は長居していた行きつけの銭湯から抜け出た。午後11時38分。最近ハマってる仕事終わりのささやかな現実逃避。労働で生まれた頭の中から溢れ出るぐらいの不平不満やらネットで無意味に作る人間関係で出来た歪みによる心の傷をサウナに入って水風呂に入り外気浴をしてる間だけは忘れることが出来る。寒風に凍えながらリクライニングチェアに転がり外気浴をしている時に観たボヤケた三日月はいつもよりやけに綺麗で少し涙が出た。なのにこうやってサウナを堪能しレストランでカレーうどんとジンジャーエールを堪能し休憩室で読んだ喧嘩稼業を堪能し仮眠室で熟睡しながらレイ・ハラカミを堪能し何もかも充実していたはずなのにこの何もかもが終わった後の原因不明の虚しさの正体は一体何なのだろう?……何故か瞳からは涙が止め処無く溢れ出てくる。暫く虚無感に心を潰され何もやる気が起きずに立ち尽くした後不意に身体を吹き抜けてきた寒風で身体は凍えて渋々僕は駐車場に止まる原付に鍵を差して未だ流れる涙を後ろに流しながらもよろよろ走り出す。今から帰るのは自宅。だけど本音は帰りたくない。死にたい辛い寝れない辛いと病んだ母と腎臓病を患う21歳の老いた猫がいる漠然とした重苦しい雰囲気漂う家にはもう帰りたくない。だけど身長147センチ高卒年収200万以下ADHDを患う手帳持ち子供部屋弱者男性害児おじさんには独り立ちする夢を観る権利さえないの無いのであの実家にしがみつくしか生きる道は無いのだ。家に帰りたく無さすぎて意味も無くセブンイレブンに寄る。コミックコーナーにある読み飽きたはずのワンピースのアラバスタ偏を死んだ目で立ち読み。最近流行りのアニメも流行りのマンガも刺さり辛くなってきた。明らかな感性の錆付き。彼女いないことよりも貧乏なことよりも僕が一番恐れていた感性の死が日に日に近付いている現実を薄々と日々実感し始めて来ている。死にたい。だが死ねないので約1時間半ぐらいかけてルフィがクロコダイルをゴムゴムのストームでぶちのめした辺りまでしっかり読むはた迷惑な客に成り果てた後贖罪とばかりにいつものバタピーとクリアアサヒのロング缶を買った後僕はセブンイレブンから抜け出し店の前にたむろするバイク集団の中の不良に(チビちゃん、こんな時間まで何やってんの?)とか言うからかいの一言にビビりつつも無視しながら僕はまたボロの原付のエンジンを吹かし帰路を急いだ。時刻は午前1時32分。夜はすっかり深く冷えていくばかりだ。BGMを狐火からgroup_inouに変えた。くだらない気分だやるせない気分だ苛立ちばかりか募るような気分だ苦しいことばかりが続くような気分だ……鬱屈して屈折した気分を抱えたままただただ溢れる涙を後ろに流しながらボロの原付は寒風の向かい風を切り裂きながら闇の中をひたすら進む。いつもの下り坂をいつも通り下りいつもの十字路をいつも通り通り過ぎいつもの田んぼ道をいつも通り過ぎいつものカーブをいつも通り曲がれば自宅にたどり着くと言う所で……目の前を黒猫が通り過ぎた。反射的に急いでハンドルを逆に曲げた先には電柱があり僕は見事に電柱に追突し僕は派手にこけた。地面に投げ出され痛む膝を抱え蹲る僕。地面に転がる原付は電柱にぶつかった衝撃でエンジンが止まり籠は凹みカーブミラーは曲がっているのが見える。スマホはどこかへ消えた。耳に付けていたBluetoothイヤホンもどこかへ消えた。頭は何だかんだでヘルメットに守られ痛まないのは幸いだったがそれにしても膝が激しく痛むのは現実なので動けなくて何となく薄笑い。地面に転がりながら電柱にぶら下がる消えそうで消えない弱々しく点滅する電球をぼんやり眺めながらも僕は思ったのだ。このまま死ねれば良いのになと。だがニューシネマのようにカッコ良く死ねる訳も無くズボンを捲くったらちょっと皮が擦り剥けているだけで骨が折れている感じも無く暫く身体を休めていたら普通に立ち上がれたので何となく拍子抜けとかガッカリと言うかもうちょい致命傷の痛みだったはずなのに……と微妙な気分になりながらも地面を眺めていたらスマホもBluetoothイヤホンも普通に転がっていたし原付を起こし鍵を捻ったら普通に原付のエンジンが動いたので重苦しく生臭いため息を吐きながらもそのまま再び自宅に向かう。自宅まで後5分の道をよろよろ走りながら僕は夜空を見上げた。そこには月も星も無いつまらない漆黒の空が広がっていたので何だか夢も希望も無い気分になり死にたくなったが死にたいまま仕方無く僕は原付を走らせながら僕は思う。今夜は家で飛び降り自殺が出来れば良いなと。どーせ死ねないだろうけど。無駄に期待しながら僕は一人ほくそ笑みながら一人涙を流した。