35年間ありがとうございました。

震災後、いろいろな方から取材を受ける機会があり、

なるべく福島のことを忘れないで欲しいがためにお引き受けしてきました。

 

 

その中には、

せっかく協力したのに、

全然想いが伝わってなかったり、

被災地の現状をもっと理解してから書けよ!

と思う記者さんもたくさんいらっしゃいました。

 

 

人の痛みや、

現場の混乱って、

一度うわべだけ見てもわからないんですよ。

 

 

もうこうなったら、記者としての手腕以前に

人間性の問題であると思いました。

どこぞの新聞記者さんは、自分の保身のために、被災者の悪口書いていらしたし。

文は人なりって、本当だと思います。

被災地を本当の意味で理解していないのだと、悲しくなりました。

 

 

 

真樹ちゃんに初めてお会いしたのが、

どこだったのか、よく覚えていませんが、

私が主宰していた東京駒場「番來舎」にも度々来てくれました。

 

 

彼女とお嬢さんに案内していただいて、

鎌倉のショートトリップに連れて行っていただいたこともあります。

 

 

取材で関わるようになって、

個人的に親しくなった方が何人かいますが、

彼女もその一人。

 

妹分のようですが、実は私の方が心配されている立ち位置です。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

石原 真樹 

東京新聞記者 一児の母

 

 

 

初めて東京・駒場東大前の番來舎を訪れたのは2015年。

 

さち子さんが南相馬で開くニットサークルのことを東京新聞のコラムに書いたら、

たくさんの毛糸が届いた、という話を聞くためでした。

 

 

毛糸のことだけでなく、

震災直後の南相馬の状況や、

その後、「福島から来た」というだけで差別され駒場東大前にたどり着くまでどれだけ大変だったか、

何時間か聞きました。

 

 

パワフル。

 

 

自分のことは後回しで

他人のためにどこまでも突っ走っていってしまいそうで、

危なっかしい。

 

 

語りの中に悲しみがないことも気になり、

離れがたく、

その後、このマンションの一室に何度も通うことになりました。

 

 

 

番來舎に招かれた福島の関係者を中心とした豪華なゲストはもちろん、

美味しいご飯と、あの温かな空気感がとても好きでした。

 

 

 

 駒場東大前の番來舎を閉じ、

南相馬の教室も辞めてしまうとのこと、

とても残念です。

 

 

 

2年ほど前に娘を連れて南相馬に遊びに伺ったとき、

教室で

「最近、学校どう?」とさち子さんが何気なくかけた質問に、

 

「学校に行きたくない」と娘。

 

 

それまで出さなかった本音を突然ぽろりとこぼし、

「泣かせの番場」の力と、

たくさんの子どもたちが過ごし巣立っていった教室が持つ「場」の力を感じました。

 

 

こんな塾が近くにあったら、

娘はどれだけ救われただろう、とも。

 

 

さち子さんが育て上げた、

二つとない貴重な場所が南相馬から消えてしまう、

理不尽な力によって消されてしまうことは悔しくてなりません。 

 

 

うまく締めくくれないので、当時のコラムを再掲して、結びの言葉に代えさせていただきます。

 

 

 

 【それぞれの思い出編む】2015年8月10日 東京新聞掲載

 

 

「子どもたちが小さいころにはおそろいのベストを編んでね」

「母の形見なのよ」

「昔は大作も編んだの。でももう目が見えなくなって。編み棒も送るわね」  

 

福島県南相馬市で東日本大震災の被災者を支援するNPO「ベテランママの会」代表の番場さち子さん(当時54)のもとに、

首都圏からたくさんの毛糸が届いた。

 

 

番場さんは六月、

本紙「東北復興日記」に寄稿し、

編み物による交流サークルを紹介。

 

 

すると、何本も電話があり、

「毛糸を送りたい」との申し出とともに、毛糸の思い出が寄せられた。  

 

 

多くは七十~九十代の女性たち。

「こんなにおばあさんになって、被災地の皆さんに何もしてあげられないと心苦しかった。ありがとう」と感謝の言葉も。  

 

 

電話の向こう、あふれる気持ちを抑えきれない話しぶりに、

番場さんは都会の独り暮らしの寂しさも感じた。

 

 

「皆さん、娘を嫁に出す気持ちで送ってくれたのでは。

毛糸一つ一つにある大切な物語を託された思いです」  

 

行き場を見つけた毛糸と思い出はこの冬、南相馬でマフラーやベストに生まれ変わる。きっと、東北の冬が少し温かくなる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

真樹ちゃんありがとう。

ご縁に感謝しています。

また番場が立ち上がった時に、一緒に鎌倉行きましょう。

笑いながらね。