『有栖川有栖の密室大辞典』(新潮文庫版)読了

 

 現代書林編集部の編集者の依頼で書いた『ビギナーにもマニアにも楽しめる密室のガイドブックで、読んでも観ても愉しい本』有栖川さんが文、磯田さんが絵を担当。

 

 企画に乗った理由は色々あるけど、『本格ミステリが興隆している昨今、ミステリの情報が氾濫しているわりには、オールドファンとビギナーファンをつなぐガイドブックが少ないことを物足りなく感じていた』という事情だそう。

 

 四十作品紹介されていて、前半が海外ミステリ、後半が国内ミステリで、それぞれ作品が発表された年代順。平成十一年の十二月にこの単行本は発売されたので、年代順の一番新しい作品でも国内ミステリは1998年の作品。

 

 大体は有栖川さんが面白いと思った作品だけど、中には有栖川さん的にはあんまり面白いとは思わないけど、名作ではあるから入れてある作品も。また、有栖川さんは好きな作品でも、絵を担当した磯田さんあまり好きではない作品で絵にするの大変だったっていう作品もあります。私も名作だからと読んでみたら好きじゃないな~何が面白いんだろう?っていう作品に出会ったこと何度もあるし、文担当と絵担当で趣味が違うことはあるよねって思いました。

 

 絵担当の磯田さんは、作中で表現されている文章だけだと絵にするのが困難な作品もあり、またその時代の資料を探しても見つけるのが大変で、締切との兼ね合いもあり自分で納得できる絵が描けなかったと悔しがっていたりします。

 

 有栖川さんの「この作品は小学生の時に読んだ」「大学の推理小説研究会に入って先輩に勧められて読んだらファンになった」など、どの年齢の時に読んだかも書いていて、作家アリスシリーズや学生アリスシリーズの二次創作されている方は『アリスが好きな本の傾向と、いつ読んだか』っていうシリーズ読んだだけだと判らない部分も知れて(シリーズの作中で紹介されてる作品もあるけど、シリーズの中では紹介されてない作品もあるので)オススメです。有栖川さんがあまり好きではない本の系統とか。

 

 有栖川さんが笹沢左保を熱心に読み始めたのは推理小説研究会の笹沢ファンの先輩に勧められたからっていう部分を読んで、学生アリスのアリスがモチ先輩に勧められてる図が頭に浮かびました。こういうガイドブックをEMCメンバーが編纂するとしたら、モチが一番楽しみそうだな~って思いますし。

 

 最近シェア型書店がちょこちょこ増えてきているようですが、もし棚が埋まり切らないオーナーさんがいるなら、こういう作家さんによるガイドブックとそれに紹介されている作品を棚に並べるのも手では?と思ったり。同じ棚に置いてくれてたら探すの楽で手に取りやすいから。自分で探すのが好きなオールドファンというより、どれから読めばいいか判らないビギナー向けに。作家さんによるガイドブックって世にどれくらいあるんでしょう?

 

 

 明日の夜7時からCS衛星劇場で、歌劇『46番目の密室』がテレビで初放送されるので、観られる方はどうでしょうか(私は契約していないので観られませんが)。