⭐️SPEAK YOURSELF [BTS]




今日は子供たち小学生の頃お話






「ジョングガー。」


「ヒョン。」


気がついた時には僕には“ヒョン”がいた。でも、僕にはミナもいたし、“ヒョン”は“ミナ”と同じものだと僕は思っていた。そう、だって僕たちはいつも3人だったから。



「オンマー、なんか入れ物ちょうだい!!」


テヒョンがジニに向かってお庭からそう叫んだ。夏が始まったある暑い日、テヒョンはジョングクと一緒に庭にいた。


「えー?何入れるの??どんな入れ物がいいのー?」


ジニは部屋の中からそう聞く、


「内緒ー。へへへへへ。」


テヒョンは嬉しそうにジニにそう答えた。そんな嬉しそうなテヒョンを見てジニは隣にいたジョングクに尋ねた。


「じゃぁ、ぐーちゃんジニママに教えてよ、何を入れるのかな??何を入れたいのかな??」


質問されたジョングクは、


「そんなの内緒に決まってるじゃん。」


とジョングクもジニに答えない。部屋の中にいたミナが、


「なに?ミナには教えてよ。」


って言ってみたけど、テヒョンとジョングクはヘヘヘへって笑うばかりで教えてくれようとはしなかった。それでもテヒョンは


「オンマ、透明の入れ物がいい。中が見えるやつ。」


そう言われてジニはちょっと考えて、これはどう?って、中身を使い切った少し大きめの蓋のついた透明な瓶を持ってきてくれた。


「わ、すげぇ、これいいね。ヒョン、」


ジョングクがそう言う。


「おお、いいなこれ。」


テヒョンがそれに答えた。


「何入れんの??」


ミナがもう一度聞いたがやっぱり二人は、


「内緒だよなー。」


って二人で顔を見合わせ笑いあって、


「オンマ、ジョングクと公園行ってくる。」


そう言って二人は庭を出て行った。



暑い暑い夏の始まり、ミナはホビと一緒にジニの家でおやつを作っていた。


「何してるのかしらね?」


ふふふと笑いながら言うジニにホビは、


「そんなの悪さに決まってるじゃないの。うちのジョングクよ??それに大人しく二人で遊んでるなんてなんの悪さしてるんだか、恐ろしいわ。」


って笑う。


「ミナ、一緒に行ったほうがいい??」


お姉さんのミナが先回りしてそう聞いたが、


「いいの、いいの。ミナちゃんいいのよ、ほっといて、外暑いし、今日はジニとおやつ作ろう〜。」


ジニはそう言って微笑んだ。


「まぁでも、一体瓶に何を詰めたいんだか、ちょっと不安ではあるわね、、、」


ジニがそう言うと、ホビも表情を強張らせて、


「二人一緒だもんね、パワーアップしちゃってるかも、、、」


と表情を曇らせた。


「考えない、考えない。起きていないことは考えない。さぁ、さぁ、続きしましょう。男子帰ってくる前にやっちゃいましょう。帰ってくるとてんやわんやになるわ。」


ジニはそう言って3人はおやつ作りを再開させた。



「ただいまー。」


三人がお菓子を作り終えて片付けをしている頃、大きな声で二人は帰ってきた。ジニが玄関にバタバタと走っていって二人に声をかける。汗だくで、泥もついてベタベタと汚れている二人に、


「おかえり〜、庭にプール出しておいたよ。水浴びしてきて。」


と、ジニは声をかけた。ジニは二人が瓶を持っていないことに気がついた。


「あれ?あげた瓶は??もしかして割っちゃった???」


不安そうに聞いたジニに、


「内緒だよなー、」


ジョングクの顔を覗き込むように言うテヒョンに、


「なー、」


テヒョンと肩を組み軽快な返事をするジョングク。


「ミナー、一緒にプールしようー。」


二人は笑いながらミナにそう声をかけた。


男子二人は庭のホースに手をかけた。先にホースを手に持ったのはジョングクだ。


「ヒョン、蛇口捻ってよ。」


ジョングクがそういうと、テヒョンは快く、


「おう、」


と答え、思いっきり蛇口を捻る。ホースを持っていたジョングクはホースの先についているスプレーガンを持った。テヒョンはジョングクがホースから水を出そうとしているのを黙って見ていた。


「ヒョン。」


ジョングクはテヒョンの名を呼ぶ、


「お?」


テヒョンが返事をするよりも先にジョングクはスプレーガンをテヒョンに向けガンのトリガーを引いた。


「あ゛ーーーーーーーー!!!」


ジョングクに放水され、冷たい水を浴びさせられたテヒョンはひゃーひゃー言いながら庭を走り回った。それでも、ジョングクからホースを奪い取ろうと、水に向かっていく。


「貸して、僕にも貸して、ジョングガ、ジョングガ、ジョングガー。」


テヒョンが一生懸命にお願いしても、ゲラゲラ笑いながらジョングクはテヒョンに水をかけまくる。痺れを切らしたテヒョンは、プールの中にあった小さなバケツに水を汲んで、ジョングク目がけてジャバーとかけた。水をかけられまいと逃げたジョングクだったが思わず水浸しになって、


「あははっははは。」


って笑った後に、


「オンマー!!」


って叫んだ。その隙にテヒョンがジョングクからホースを奪って、ジョングクにビシャーとホースからの放水をお返しした。


「わ、冷たい!」


短パンにTシャツで外に出てきたミナが大きな声を出す。それに二人は微笑んで、テヒョンがミナに放水し、ミナはあっという間に水浸しになって、それにミナが怒らないわけはなく、その後テヒョンはミナによって水をかけられ返した。


すっかり濡れ鼠になった三人でビニールプールに入って、小さな水の掛け合いっこを始めた。ジニとホビもリビングの大きな窓のそばで、庭で遊ぶ三人を見ていた。


「すっかりプール小さくなっちゃったわね。」


「もうプールも遊ばないかなって思ったけど、来年もまだ遊んでくれそうね。」


プールに浸かる三人は、寝っ転がるように足を上に上げて誰が一番日焼けしたかを競っていた。夏になって三人ともビーチサンダルを毎日履くようになって、サンダルの花尾の部分だけ日焼けしていない足を見せ合いっこしていた。


「俺が一番!!」


そう言って嬉しそうにテヒョンが笑うと、


「僕だって負けてない。」


ってジョングクが言って、


「私だって負けてない。」


ってミナも言った。


「ねぇ、ママ、誰が一番??」


三人ともいつものように嬉しそうに聞いた。



それからしばらく三人で水風船を投げ合いっこしたり、びちゃびちゃを楽しんだ。




「お前たち、三人でプールか、涼しそうで良いなぁ。」


ナムジュンとユンギが町内会の集まりが終わって帰ってきた。


「アッパー、おかえりー。」


「パパおかえりなさい。」


子供達が庭で遊んでいるのを横目に、ナムジュンとユンギは家に上がった。


「お帰りなさい。」


ジニがパタパタと玄関にお出迎えに来て、ナムジュンは一瞬固まって、


「今日はいいから。」


ってジニの耳元で囁いた。それが聞こえていたのかユンギが、


「俺は見てないから、勝手にやれ。」


と、当たり前のようにスタスタとキム家のリビングに入って行って、窓のそばまで行く。クーラーのかかっている室内、もちろん、窓は閉まっていて、ユンギは窓を開けて、少し身を乗り出すように窓枠にもたれかかって立って言った。


「お前たち、涼しそうでいーなー。」


そう言ったユンギにバシャっと水風感を投げつけたのはジョングクだった。


「ジョングガー。」


一瞬にして前面水浸しになったユンギにジョングクはもちろん怒られた。それにホビが笑いながらタオルを持ってきて、


「ほら、そろそろ終わり。ミナちゃん先にお風呂行って着替えちゃいなさい。テテちゃんとぐーちゃんもミナちゃん着替えたらプールお終いよ。それから、ぐーちゃん、パパにごめんなさいは?もう、パパびちゃびちゃじゃないの。」


仁王立ちでジョングクを見下ろす二人にジョングクは、


「チェソワミダー。」


と上目遣いに謝った。


「ほんとにお前は都合の悪い時には韓国語が上手だなー。」


ユンギはやれやれという顔をした。



全員が揃ったのでおやつを食べて、そろそろ帰ろうかとユンギたちが話していた時に、テヒョンは何やら思い出してジョングクに耳打ちした。それから喋り始めた。


「オンマ、今日、暑かった?」


テヒョンはジニに問う。


「暑かったわよ。」


ジニが答える。


「ママは?ママ、今日暑かった?」


今度はジョングクがホビに聞いた。ホビも、暑い1日だったわねって答えた。それを聞いて二人は、嬉しそうに、


「僕たちね、プレゼントがあるんだよ。涼しくなれるもの、いっぱい集めてきたんだ。だってオンマたち、毎日暑いのにご飯作ったり大変でしょ。だから、涼しくなれるの。持ってくる、待ってて。」


そういうと二人はいそいそと部屋を出ていった。


「なんだろうね?」


部屋に残された五人は顔を合わせる。そうしていたらすぐに二人は、テヒョンが前、そして重なるようにジョングクが後ろになり二人羽織みたいにちょこちょこと歩いて部屋にやってきた。


「あのね、びっくりさせたいから目を瞑って!」


喜ばせたいから嬉しくて仕方のないテヒョンがそう言うと、


「ヒョン、そんなこと言ったら驚いてくれなくなるじゃん、なんでそんなこと言うんだよ。」


ってジョングク、ナムジュンとユンギはこいつらは何をするんだ?って顔をしていて、ジニとホビは少々ドキドキとした時間を過ごしていた。


「オンマ、目、瞑って!」


テヒョンの声に、はいはいと返事をするジニ、


「ママも!」


ジョングクに言われて、ホビも目を瞑った。


「あのね、二人とも手を前に出して!」


ダイニングテーブルに横並びに座っていた二人は両手をテーブルの上に出した。まだ二人羽織を辞めていないテヒョンとジョングクは、ひっついたままよちよちと前に出て、テヒョンがジニとホビの手を寄せて重ねた。それだけで二人は悲鳴をあげる。


「なんだよ、ママたち、ヒョンが触っただけだろー。」


一体二人は何をするんだろうか?とただただ見つめるしかないナムジュンとユンギ、その横でミナも、何やってんの?って顔をしている。


「ドキドキしちゃうから、早くしてちょうだいよー。でも、逆に何もしないでー!」


ホビの声にユンギが声を出さずに笑う。


「あ、パパ、笑ってるでしょ?目を瞑ってても分かるんだからね!」


ホビは見てはいけない恐怖に震え、ジニと指を絡ませる。それと同じようにジニも一体何事が起こるのかと不安で仕方がなかった。


ニヤニヤとしている二人は、ジニとホビの手の上にそっとジニからもらった瓶を乗せた。瓶の冷たさに二人はそれだけでヒャーと声を上げそのまま瞑っていた目を開けた。目を開けるとジニがテヒョンにあげた瓶が手の上に置いてあるだけであった。なんてことはない、瓶の重さ以上のものもないが、だが中に何か入っている。そこにいたテヒョンとジョングク以外の五人は瓶に顔を近寄せ中を覗き込んだ。


『ぎゃーーーーー!!!』


ジニとホビは雄叫びをあげ、座っていた椅子ごとガタガタと後ろに下がって行った。


「やったな、ジョングク。」


「うん!ヒョン!」


瓶の中にはパンパンに蝉の抜け殻が入っていたのだ。二人が予想以上に喜んで(驚いての間違いだが)くれて、テヒョンとジョングクは長い長いグータッチで喜びの舞を舞い始めた。






リクエストいただいたのでお話にしました


写真お借りしました。

©︎2018_1123yousawa