児童心理カウンセラーという仕事をしていて思うのは、大人は然ることながら、去年(令和5年度)の面接及び真夜中の相談対応の総計は、例年平均相談数を優に越え、緊急性のある対応においても、例年を上回るほどあっただけに、児童の精神疾患者数においても増加しているように感じます。


また、児童における神経発達児童の増加については以前にも何度か投稿や、子ども討論会(アゴライズ)/親子討論会、講演会等でもお話をし、少し前は1クラス31人と仮定した児童の内、5人に1人がAD/HD(注意/欠陥多動性障がい)等の疾患を持っているというデータがあるとお伝えしましたが、昨今では3人に1人となり、様々な論文を読んでいますと、2人に1人という割合で、神経発達児童が生まれていくのではないかという予想まであるだけに、個人的には危機感を感じています。


そして、彼ら彼女らの相談を受けながら、その発せられる言葉から、思考力(物事に対しきちんと沈思黙考する力)の低下(結果優先で過程を時間の無駄/効率が悪いと排他的姿勢)であったり、語彙力(読解力)の僅少及び言葉の簡略化による偏り、忍耐力/責任感の放棄及び短絡的/自己中心的な姿勢、独自性の欠如による焦燥感等を感じるわけで、スマホ/SNSの弊害や、道徳的気風の頽廃から引き起こされている精神的な落ち込み、延いては、親/教師及び教育の堕落からの影響なのではないかと、私は感じてなりません。


そんな中、ブラジルのリオグランデ・ド・スル大学の研究チームがこの1月に、小児期から成人初期における精神障害の世界的な有病率を推定するため、世界疾病負担研究(Global Burden of Disease:GBD)のデータを用いて、世界の5〜24歳の25億人超を対象に横断研究を実施し、その結果、世界の小児と若者の9人に1人が精神障害を有することが推定されたと言うのです。


まぁ、私の投稿を読んでくださっている方はご存知だと思いますが、精神障害は、世界における疾病関連負担の主要な原因となっていることや、児童~新社会人程度で特に発症しやすいこと、私は児童心理カウンセラーでありますが、心療Café.Cahette-カシェットを経営してからは、大人の方の面接(カウンセリング)及び精神療法をしており、彼女ら彼らの話を聴いておりますと、やはり平均14~22歳までで何かしらの精神疾患を患い、何かしらの事由から、今に至るという方が少なくないわけで、、、


今回紹介するリオグランデ・ド・スル大学の研究チームにおける研究を説明しますと、全世界の5~24歳の25億1,600万例を対象に、精神障害と物質使用障害(SUD)の全世界的な有病率と障害生活年数(YLD)を推定する横断研究を実施したとあり、精神障害とSUDには、GBD2019のデータを用いて、年齢(5~9歳、10~14歳、15~19歳、20~24歳)及び性別で層別化し解析したとありました。


そのデータは2018年までに収集し、解析においては2022年4月〜2023年9月に渡って実施されました。今回の研究において、研究対象となる精神障害には、不安障害、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症、双極性障害、行為障害、抑うつ障害、摂食障害、知的障害、統合失調症、その他の精神障害が含まれていました。


物質使用障害(SUD)は、GBD階層では精神障害とは別に分類されているのですが、国際疾病分類であるICD11に沿って考えた際、精神障害の包括的な推定のため、アルコール及び薬物依存症も含めて検討したそうです。有病率については、システマチックレビューや、政府及び国際機関の公式サイトの検索、公開報告書等から得られた情報に基づき、DisMod-MR 2.1を用いてバイアスを調整し推定したそうです。


また、YLDは、各疾患に付随する障害や後遺症の度合いを明確にして後遺症の有病率を推定後、各後遺症について重み付けを行い算出しているそうですね。


そして、その解析の結果を見ますと、2019年度において、全世界の5〜24歳の患者さん、25億1,600万例中、2億9,300万例が何かしら1つ以上の精神障害を患っていることが分かり、その内、3,100万例がSUDを有していることが分かったのです。


また、平均有病率は精神障害が11.63%、SUDが1.22%で、疾患別の有病率が最も高かったのは不安障害〔8,400万例(3.35%)〕であり、最も低かったのは統合失調症〔200万例(0.08%)〕でした。年齢層別で見ていきますと、精神障害の有病率は5〜9歳で6.80%〔95%不確実性区間(UI)5.58〜8.03%〕、10〜14歳で12.40%(同10.62〜14.59%)、15〜19歳で13.96%(同12.36〜15.78%)、20〜24歳で13.63%(同11.90〜15.53%)であることが分かり、全体として見ますと、僅かですが、小児期の精神障害の有病率は男性優位で、青年期では女性優位であるということでした。


疾患で見ますと、男性は自閉スペクトラム症、ADHD、行為障害の有病率が高かったのに対し、女性は不安障害、摂食障害、気分障害の有病率が高く、この傾向は年齢に関係はなく同様で、知的障害と統合失調症の男女比はほぼ同等にありました。


なんというのか、この結果を見ていますと、確かに私の患者さんと比較しましても当てはまるわけで、YLDについて見ますと、5~24歳の精神障害では、1億5,359万YLD中の3,114万YLD(20.27%)を占め、SUDは430万YLD(2.80%)を占めていたそうなのです。


そのことから、生涯を通じて、精神障害に起因するYLDの24.85%が5〜24歳の間に発生していることが言え、研究チームは、「世界全体で5〜24歳の11.6%が、診断可能な精神障害を抱えていることが示された。精神障害およびSUDの早期発症による生涯負担を考慮すると、より効果的な予防・介入のためには、年齢を細分化したデータが不可欠である」と結論付けているのです。


しかし、私見を述べますと、こういった研究がされる中、日本はまだまだ精神的な面における理解が乏しく、年齢層や価値観、環境等によって異なるだけに、社会的機能性や、彼ら彼女らへの支援等についてどう考え、何かしらの事由によって社会から透明化されている児童等を発見及び保護していくのかを、私は児童心理カウンセラーとして医療/福祉の方々と共に考えていきたいと思っています。