今日は体調が良くないので、静かに慢性遺伝性アルツハイマー病の研究に関する論文を頂いたので、雨の音を聴きながら静かに読んでいます。

アルツハイマー病の詳しい原因はまだ分かっていませんが、患者の脳には、発症するかなり前から「アミロイドβ」と「タウ」という2種類のたんぱく質が溜まることが知られていて、いずれ病気の発症に深くわっていると考えられており、この14日には、新潟大学脳研究所の池内先生(教授)等の研究グループが、遺伝性のアルツハイマー病の人を対象に新潟大学と東京大学等のグループが、「タウ」に働きかける新しい薬の国内での治験を始めたと発表していましたね。

海外では2008年頃からDIAN(慢性遺伝性アルツハイマー•ネットワーク)研究が始まっているだけに、慢性遺伝性のアルツハイマー病を対象にした治験というのは、世界中で注目され、国際的な治験の一環として行われるのは、アルツハイマー病の新たな治療法の開発等に希望と期待を与えるのかな、と、個人的にも思っています。

この共同研究の治験は、アルツハイマー病の患者の脳にたまる「タウ」と呼ばれる異常なたんぱく質を取り除く特殊な抗体の効果や安全性を調べることから始まり、その対象者は、アルツハイマー病を発症するリスクが極めて高くなることが知られている3種類の遺伝子【アミロイド前駆体タンパク質(APP)、プレセニリン1(PSEN1)、プレセニリン2(PSEN2)】を持つ人とされ、彼ら彼女らが持つ遺伝子を調べることで、発症前に診断できることに加え、早期の治療が必要とされるアルツハイマー病の治療法の開発や研究の分野に、大きなエビデンスをもたらしてくれると、考えられているわけで、、、

そんな中で、アルツハイマー病の原因とされる「アミロイドβ」という別のたんぱく質を取り除く治療薬(レカネマブ)が去年(2023年)の9月に国内での承認を受け、その期待もされているだけに、今回の「タウ」と「アミロイドβ(レカネマブ)」の2つの薬がどう臨床に役立ち、患者さんへの未来にどのように繋がっていくのか、楽しみです。

ただ、私に精神医学/精神病理学等を教えてくださった師から、「医師と研究者との間には、認識的なズレがあり、そのズレについて考えることも必要」だと言われ、「研究とは、病理解明をすれば成功だが、医療/臨床が扱うのは病理に加えて人間であり、その心にも気を配らなければいけない分、治療とは『完治=成功』ではない」と教えられたことや、私も実際の臨床において、「今、ここまで研究が進んで…」と、持病に関する不安や悩みを持つ方々に伝えた際、「それは困る」や、「え?」と、戸惑わせてしまったことがあるだけに、『解明=解決』ではないのだという人間の心という面も、やはり児童心理カウンセラーとしては考えなければいけないのだと思う今日この頃。