この火曜日(7月11日)、大学からの友人である神経内科をしている友人から、「入院されている方を対象としたホスピタリティ演奏会を共にしてほしい」と依頼を受け、暑く、雨がふるかもしれない不安の中、山口県は萩へと、大阪から新幹線で向かいました。

彼のお父様が営む病院での演奏は、コロナ禍に恋人と心中し、亡くなったリーダーとも何度かさせて頂いたことがあり、思い出がある場所ですから、色々と思い出されることがあり、懐かしさが込み上げ、切なさを感じていました。

また、「雨かもしれないからヴァイオリンはこちらで用意する」と言われていましたので、友人にヴァイオリンを確認しますと、バンドの際、リーダーがいつも貸してくれていた電子ヴァイオリンで、それを見て、慌てて友人に顔を向けると、「実は、俺があいつから譲り受けていて、今日するならそれがいいと思ってさ」と言うものですから、サプライズが過ぎますね。

演奏は1時間弱でしょうかね。千と千尋の神隠しの『ふたたび』という曲から始まり、久石譲さんの『Summer』、『カノン』『G線上のアリア』を友人と演奏し、その後、フランス人のシャンソン歌手の男性と、『タイタニックのテーマ』、『さくらんぼの実る頃』、『ラビリアンローズ(バラ色の人生)』『愛の讃歌』を演奏し、ホスピタリティ演奏は終演となりました。

なんといいますか、カノンを演奏した際、ポロポロと泣かれる方がいて、事情を聴きますと、「もう随分と生の演奏を聴いてなくて…、私には子どもが二人ほどいるんですが、小さい頃、同じようにピアノとヴァイオリンをしていて、二人の姿が重なるというのか…、ピアノとヴァイオリンが共鳴というのか、調和して美しくて感動しました」と言ってくださり、恐縮至極に存じる思いでした。

そんなこんなで、演奏が済みますと、お金がないことから、私はすぐに帰路へと着いたのですが、その帰りの新幹線の中で、今月の親子討論会の資料を制作していましたら、ホスピタリティ演奏の依頼をしてくれた友人から感謝の言葉と、演奏会に車椅子で参加してくれていた一人の方について聴かせて頂きました。

正直、私はヴァイオリンを弾いてはいますが、クラシックは技量もないですから練習以外ではあまり弾かず、今回の演奏においても、人前でするのは嫌だなぁと、渋っていたのが本音であり、友人にもクラシックは外そうと言ったのですが、珍しく頑なに、『G線上のアリア』は外さないと言われ、『カノン』に対しても、「リーダーたちとの思い出なのだから、したい」と言われ、渋々頷き、練習をしていました。

けれど、事情が事情だったのだと知り、私は新幹線の中で、一人、ノスタルジックな思いに駆られていました。

演奏会に参加してくれていたその車椅子のお婆さんは、元ピアノの先生をしている方らしく、同じくピアノの先生をしていた旦那さんと、ピアノを弾くことが何より楽しみであったそうですが、53歳の時、旦那さんが直腸癌を患い、その年に亡くなったそうです。
ですが、悲しさなどはひた隠しにしながら、気丈に振る舞い、プライマリ・ケア医に許可を取り、旦那さんが好きだという『G線上のアリア』を毎日、演奏していたそうで、旅立たれた後も、誕生日や命日などには、演奏をされていたそうです。

そして、現在、彼女も癌を患い、友人曰く、「もう余命3ヶ月もない」と言われている状態にあるらしく、本人もそれを知っていながら、指や足に力が入らない状態にあるにも関わらず、看護師さんが押す車椅子で演奏を観に来てくださったわけで、そんな彼女に対して、どうしても想い入れがある『G線上のアリア』を聴かせてあげたかったそうなのです。

なんといいますか、コロナ禍により、三年間、ホスピタリティー演奏会が開催されていなかったというだけに、思い思いに楽しんでもらえれたなら良かったです。

まぁ、私が行くのはもうないかもしれませんが、私においても、友人との良い思い出や、良い経験ができました。

ありがとう🌟