レジに向かう。
あっ、いつものレジの人。
60歳くらいの女性。
私と、そう変わらない。
でも、こちら側とあちら側。
客と、店員。
週に3回は、この人のレジ。
マスクをしている。 表情が、見えない。
金色の細いフレームのメガネ。 女性用のデザイン。
首筋に、小さな粒々がある。
私の番が来る。
「袋、お付けしますか?」
落ち着いた声。
「大丈夫です」
いつものやりとり。
商品のバーコードをリーダーにかざす。
ピッ、ピッ、ピッ。
名札を見る。
平仮名で、苗字が書いてある。 マジックペンで。
本当の名前かどうかは、わからない。
会計を済ませる。
「ありがとうございました」
声が、聞こえる。
エコバッグに詰める。
店を出る。
本当の名前は知らない。
ただ、「袋、お付けしますか?」
「大丈夫です」だけ。
車に乗る。
エンジンをかける。
家に着く。
1分20秒の距離。
