鹿児島県警の横暴に大手メディアはどこまで沈黙するのか❓
鹿児島県警本部庁舎。(提供/PIXTA)
『週刊金曜日』6月21日号とオンライン版で詳報した鹿児島県警による情報「漏洩」や強制捜査などの問題については、以後も大手を含めた各メディアで連日大きく報じられており、事態はなお進行中である。そうした中「表現の自由」「取材の自由」への侵害などの観点から事態を重く見たメディア業界の各団体が同県警への抗議声明を6月中旬以降に相次いで発している。
日本ペンクラブは6月19日に、「取材源秘匿・内部通報者保護制度を脅かす鹿児島県警の強制捜査を強く非難する」との声明を桐野夏生会長名で発表。公権力は従来「強制力を持って取材源を開示させるようなことは控えてきた経緯が」あったが、「今回の行為は、そうした慣例を毀損するもの」であり「民主主義社会の根幹を脅かす極めて深刻な事態」だと憂慮。あわせて「各メディアの積極的な取材報道を期待する」とした。
新聞労連も同日「鹿児島県警による『情報源暴き』に抗議する」と石川昌義・中央執行委員長名で声明。冒頭で鹿児島県警に加え、「捜索を許可して捜査権の濫用にお墨付きを与えた裁判官」も抗議対象だとしたうえで、報道の自由をめぐってこれまで公権力との間で展開されてきた攻防の歴史にも言及。
1999年の盗聴法(通信傍受法)国会で当時の松尾邦弘・法務省刑事局長(後の検事総長)が、報道機関が取材過程で行なう通信は「傍受の対象としない」と答弁で明言した件も引き合いに、「報道の自由を脅かす警察権力の暴挙に連帯して対抗する必要」を同業者たちに呼びかけている。
「第三者機関で検証を!」
新聞労連のほか、放送や出版、映画、広告など各業界労組の連合体である日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)も同月21日付で「鹿児島県警による憲法違反の報道弾圧を許さない」と“憲法違反”を、より前面に打ち出して声明。鹿児島県警は自身の犯罪的行為を証拠隠滅するために「憲法が保障する表現の自由、それを支える報道機関の取材源の秘匿を、暴力的に踏みにじった」と批判する一方、内部告発した同県警の前生活安全部長の行為は「不祥事を明らかにしようとする公益通報に相当するものであり、検挙・処罰の対象としてはならない」として、すべてのメディアが同県警に対し「真実を明らかにするよう徹底的に追及すべきだ」と訴えた。
人文・芸術系の中小出版社などによる日本出版者協議会(出版協)も同月25日付で「鹿児島県警によるインターネットメディア『ハンター』への家宅捜索に抗議する」と題して声明。今回の家宅捜索および押収資料による逮捕は「捜査権の濫用として表現の自由(報道の自由)が保障された民主主義社会では到底許されない」とし、捜索を許可した裁判官に対しても「メディアが市民の『知る権利』と報道の自由を確保するために『情報源の秘匿』を守り活動していることに対する無理解があったと言わざるを得ない」と指摘。末尾で同県警に対し「本件における捜査権の濫用を認め、再発防止のためにその捜査の経過と責任の所在に関する調査を第三者機関にゆだね、その調査結果を市民に公表することを求める」と結んだ。
こうした批判の声が高まる中、警察庁は同月24日から鹿児島県警に監察官を派遣。一連の経緯などを検証する特別監察を開始した。だが、同県警の野川明輝本部長が「県警署員の犯罪行為を隠蔽しようとした」とする前生活安全部長の主張について、警察庁は同日付で「必要な調査を行なった結果、客観的に見て本部長による隠蔽の指示はなかったことが明らかだ」とのコメントを発表した。
しかし、こんな身内による調査結果にどんな説得力があるのか。ジャーナリストの青木理氏も同日夜に出演したTBSラジオ「荻上チキ・Session」でこの件を「茶番」だと喝破。「生活安全部長は国家公務員でもあり、その逮捕を同県警が警察庁の裁可を経ずにできるはずがない」などと切り捨てた。やはり本来なされるべきは、前記にある通り第三者機関、メディアによる徹底的な検証だろう。
岩本太郎・編集部
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↓鹿児島県警 野川本部長↓