認知症になると、

何にもできない、

まわりに迷惑がかかる、

と、思っている人は多いようです。

 

私も母がいなければ、

そう思っていたと思います。

 

 

しかし、母にしかできないことがあります。

 

それは、

 

喧嘩の仲裁。

 

 

家族間の喧嘩もですが、

社会の中で起こる喧嘩も仲裁してくれます。

 

 

ある日、母の退院時に

介護タクシーを予約しましたが、

いくら待っても来ません。

 

実は、そのタクシー会社、

遅れてくるのが、その日で3回目でした。

電話を何度もしましたが、

電話対応に出られた方も

「タクシーの運転手に電話をかけていますが、

出なくて…」と、困っていました。

 

寒い日だったため、母の体調のこともあり、

一分でも早く来て欲しかったのですが、

結局30分ほど遅れてやってきました。

 

遅れた理由を聞きましたが、

「すみません」を繰り返すだけなので、

母を安全に帰すことを優先させました。

 

 

車内の空気は最悪でした。

 

 

(色々言いたいけれど、

何か言って、焦った運転手が

事故でも起こしたら命に関わるし)

と、心の中で葛藤している私と、

30分も遅刻してしまった上、無言の私に、

何も言えない運転手。

 

 

ピリついた空気の中、

 

 

突然、

 

きゃははははは!

 

と、母が笑い始めました。

 

 

何のこともありません。

母はドライブが大好きなのです。

 

ですので、空気を読まず、

嬉しくなって、声をあげたのです。

 

私は

(もう、お母さん!

私、運転手にすごく怒ってるんだから、

静かにしていてよ!むかつき)

と、思いましたが、

 

母は、

きゃはは!きゃはははは!爆  笑笑い

と、ずっと笑い続けました。

 

その嬉しそうな声を聞き続けていると、

だんだん、怒っていた心が削がれて、

「ま、いっか」

という気持ちになってきました。

 

家に着くころには、

母は満面の笑顔で、

私の心も穏やかで、

運転手も張りつめた空気が柔らかくなったことに

ほっとしたようでした。

(後にタクシー会社から謝罪があり、

理由は、運転手の「勘違い」だったとのこと)

 

 

 

母は空気を読みません。

 

でも、母以上に、

私たちの心を癒してくれたり、

穏やかにしたりしてくれる人は

この世にいません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チューリップ黄アメトピ掲載記事チューリップ黄

 十年 <認知症とは>

 
 
 
 
 

 




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