若年性認知症になった母に
会いにくる親戚や母の友人達は
母のことを
「かわいそうに」
と言って涙を流します。
では、母の介護をしている私は
どう思っているかというと
不思議に思われるかもしれませんが、
母を不幸だと思ったことがありません。
「人は誰しも生老病死からは逃れられない。
皆どこかしら病気になり、
母の場合、それが脳神経だった」
と考えているからかもしれません。
ただ、
不幸だとは思っていなかったのですが、
幸福だとも思っていませんでした。
しかし、最近
「もしかして母は幸せかもしれない」
と思うことがあります。
なぜかと言うと
母がまた、笑顔を
見せるようになったからです。
認知症初期の頃、
母はいつも不安顔でした。
中期の頃は
怒り顔。
末期に入ると
無表情。
ですので、
このままずっと無表情が続く
と思っていたのですが、
ある時、転機が訪れました。
認知症の他に別の病気を
複数併発したことで、
薬の種類が多くなったことを
憂慮した担当医が
今まで使っていた薬の整理を行いました。
今まで飲んでいた薬を
いくつかやめたことで、
薬の副作用として出ていた症状が緩和。
足や手がよく動くようになり、
顔に表情が戻りました。
目を合わせることができるようになり、
声をかけると
にこにこ
歌を歌うと
にこにこ
面白い動きを見せると
にこにこ
体調が優れない日以外は、
よく笑います。
母が笑うようになると
家の中の雰囲気も一変しました。
正直私は今まで、
笑顔というものが人の生活に
これほど大きな影響を与えるものだとは
知りませんでした。
母が幸せかどうかは
母自身が決めることです。
ですが、
母が笑っているとき、少なくとも、
私はとても幸せです。