母の認知症初期の頃、
母は私と二人暮らしでした。
他の家族はというと、海外や他県におり、
すぐに帰ってこれない状況だったので、
通話で母の様子を伝えていました。
その後、父親が単身赴任から
家に戻ってきました。
それから数ヶ月後、
私は母の異変に気がつきました。
あれ
なんだか少し
横に
巨大化してないか
毎日見ていたので、変化に
疎かったのでしょう。
明らかに数ヶ月前の母とは
違います。
食事の用意は一緒にするか
私が行っていたので
食事量は変わっていないはず、
ということは運動量か、
それとも筋肉量か、
こんなに急に太って他の病気を
併発したらどうしよう、
と頭を悩ませていましたが、
数日後
犯人が見つかりました。
父はある島の出身で、
何でも分け合う習慣があります。
食事と食事の間に自分が口寂しくなると
パンを半分こ
煎餅を半分こ
どら焼きを半分こ
全て半分にして母に食べさせていたのです。
母は低身長のため、父と同じ量を食べれば、
あとは横に伸びるだけです。
私はカンカンになって
父に詰め寄りましたが、
父は
「お父さんだけが食べることは
できないよ。一人で食べてしまったら
お母さんがかわいそうだ」と。
その後も懲りずに「隠れて半分こ」は続き、
現在、認知症が進んで嚥下が上手く
できなくなった母は胃瘻生活を
していますが、
一日一回父は私に
「 次お医者さんに会う時、お母さんが
また食べれるようにならないか聞いて
きてくれないか」と頼みます。
おそらく父の理想は
また以前のように家族でテーブルを
囲んで母と一緒に食事すること、
そして「楽しい半分こ」なのでしょう。