それから…

最愛の人から逃げ出して

別の人の手を取った。

いままであったことを、他愛もなく話した。

子供のころは、ちょっとした虐待を

受けてたとか…

結婚に失敗したとか…

騙されて事業に失敗したとか…

そりゃ、すぐに誰かの手をとるなんて

考えられなかったけど

残りの人生を、一緒に生きてこうって

いままで、頑張って来たんだから

もう、楽になっていいよって

何度も、そう言ってくれたから…

もう、寂しい思いをしなくても…

甘えてもいいのかなって…

何ヵ月か考えて

前に進む事にした。

でも…

それが…

間違ってしまったのだと

最愛の人から…逃げた

そう

何をしても比べてしまうけど…

ふと、車道側に立ってくれたり

陽射しを避けてくれたり

いつも、荷物を持ってくれたり

足の悪い私に合わせてくれたり

そろそろ、足が痛む時は…

痛いって言わない私に

「そろそろ、辛いんじゃない？

僕に言わないで誰に言うの？」って

わかってくれる…

一緒に笑って

美味しい物を食べたら

美味しいって言えて

桜を見たら、一緒にキレイだと言える

一緒に虹を見たら感動して

キレイな夕日を見たら

一緒に見たいと思った…

誰かの前で泣くのは苦手だったけど

唯一、私が泣く場所になってくれた

人生最愛の人…

でも、その手を放すしかなかった…

逃げたかった…

大好きな気持ちから…

先の見えない未来から…

もう、その事しか考えられなくなって…

そして…逃げた…

少し…振り返ろう…

なんの選択を間違ったのだろう？

どこで……

実は、わかってる…

あの時、多分、人生最愛の人の一言に

心の糸がプツンと音を立てて切れた…

これ以上の人はいないって

わかってたけど

これからの事とか

ずっと考えてたから、不安だった気持ちが…

どんどん、どんどん大きくなって

そんな時に、プツンって

びっくりするくらい、心の中で音がした。

だから、もう、別れる選択しか

出来なかった。

そして、大概そういう時は

他の出逢いがあったりする。

今度付き合う人は、私の不利な状態を

最初に話して、ちゃんと理解してくれる人と

向き合おうと思った。

近い将来、歩行困難になることとか

また、心臓発作が起こったら

ちょっぴり危険とか。

案の定、それを聞いて連絡がなくなる人とか

でも、それを聞いても、怯まなかった

人達もいてくれた。