一歩目を踏みしめ、周りを見渡す。
町としてはまぁまぁの都会なのだが、立地は比較的自然に囲まれている校舎。
小さな山の中の、小さな校舎。
その周りは、目の保養になりそうな緑、色とりどりの小さな花、時折現れる小鳥と、様々な自然が共存している。
幻想的なこの空間にいると、嫌なことも全て忘れられるほど気持ちがよくて、都会のデジタル社会から少し離れた、人間の本能が求める空間だと思う。
「意外とちっさいな。」
「まぁ闘起いれて全校生徒5人やからな。」
そう。
全校生徒5人。それが、オレの転校先の高校。
ここは、大きな事件やトラブルで、心に大きな傷を負った生徒が通う高校。
一時的でも、心を失った生徒が通う学校。
心を養うために、人間との温かい触れ合いをするために通う高校。
枠組み的には、身体障害者用の学校と同じらしいが、"障害"ではなく"傷害"を持っている人のための高校。
もちろん、ここに来ているのだからオレも"傷害"を持っている人間。
しかし、残念ながら今は理由を話している暇はない。
校舎の周りの自然は、そんな"傷害"を持っている人を温かく受け入れてくれ、心を癒してくれるように感じる。
というか、そうするためにこの自然の中に校舎を建てたのだと思う。
そして真っ白な小さな校舎は、オレを優しく包み込み、汚れた心を清めてくれると思う。
そうして欲しい。むしろ、それだけでいい。
他は
いらない。
人見知り姉弟は覚悟を決め校舎に入る。
静寂。
日曜ということもあり生徒はおらず、生活音が聞こえてこない。
本当に先生いんのか?
約束の時間まで、あと五分。
とりあえず職員室を探す。
と思ったが、右に「職員室」という札のかかった教室を発見。
我ら姉弟心臓はフルに働き始め、オレらは落ち着いていられなくなる。
「ええか?」
「う、うん。」
でも立ち止まってても始まらないので職員室のドアを叩く。
どんな先生なんだろう?
久しぶりに、人に興味を持った気がした。
無意識のうちに。
これって成長なのかな?
ドンドン!
「あれ?おらんのかなぁ?
ちょっと、、ってこれ鍵あいてんで。」
ガラガラ
高校生活開幕の合図は、少し年をとった木の鈍い音だった。