ガンガン!ガンガン!
俺を起こしたのは窓の悲鳴。誰かの強烈なアタックを受け、助けを求めているかのように叫んでいる。
でも俺はその悲鳴には応えられない。だってまだちょっと寝てたいもん。
開会式まで時間あるし。
ごめんよ窓。
しかし、体育大会当日にこんな起こし方をするとは、一体どうゆう了見だ?
そもそもお前はなんだ。鳥か?虫か?不審者か?
鳴り止まない悲鳴。ついに俺も痺れを切らす。
「うるせぇぇぇって、あっちゃんなにしてんの?」
窓の向こう側にいたのは、パジャマのまんまでやけに慌てているような顔をしているあっちゃん。
髪の毛もボサボサで、おそらく起きたてホヤホヤ状態だろう。
「闘起やばいよ!遅刻だよ私たち!」
嘘だろ⁉︎
急いで時計を確認する。
幸いにも、あっちゃんの後ろに時計があったので見させてもらうことに。
えっと今日の集合は10:00。
今は、、、10:30⁉︎
本当に遅刻じゃねぇか!
「やばいじゃん!あっちゃんとりあえず着替えて玄関前集合!」
「了解!」
軍隊のようなテキパキとした号令をし、俺たちは着替えに取り掛かるところで、あることに気がつく。
「あっちゃん?
あのー、、、、
あの時計動いてないんですけど?」
「もぉ~勘弁してよマジで~。」
「ごめんごめん!昨日まで正常だったから信じ切っちゃってた!」
結局、今の本当の時間帯は8:00過ぎ。
会場の学校までは三十分弱でいけるので、準備を三十分で済ませたとするとあと一時間は寝ていられた計算になる。
だが、もう一度寝るには中途半端な時間であり、あっちゃんを恨みつつも結局俺たちが行き着いた先はおしゃべりであった。
季節は秋真っ只中。
色とりどりで、儚くも綺麗な紅葉と冷たい秋風は、二週間前の太陽の元気と人々のの活気を何処かに吹き飛ばし、街は一気に衣替え。
緑色から橙色へと姿を変えた街は、夏とはまた違った味わいのある景色を演出していて、同じ街とはとても思えない。
風に揺られて窓から部屋に入ってくる綺麗な形の紅葉。
そんな小さなものが、この街の景色をより味わい深くしているような気がする。
その紅葉は秋風に吹かれ、休む間も無く何処かへ揺られてゆく。その儚さも、紅葉の魅力かもしれない。
おっと、こんなことを考えているうちにもう時間が迫っている。
「あっちゃん、そろそろ行こうか。」
「あーもうそんな時間かー。そーだね。いこ!」
緊張と不安が俺の心を掻き回している。
でも、静かに儚く風に舞う紅葉を観れば冷静になれる気がして、俺はずっと上を向いて歩いた。
