第4条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条項ニ依リ之ヲ行フ

 国際的に見た天皇の地位は、ローマ法王と同じくらい高いといふことを聞いた。これは戦前の話ではなく、ごく最近のことである。英語で言ふと、Priest King といふことになるのださうだ。

 外国の駐日大使が日本に赴任して、その政府の信任状をお届けする先は、必ず天皇である。諸外国は天皇を日本の元首として見てゐる証拠である。一時的な人気投票で、どこの馬の骨か判らない輩でも首相になることはあるが、そこには元首の重みはない。

 天皇陛下にあらせられてこそ、二千六百七十年になんなんとする歴史の重みを、一身に受けられ、微動だにされない。総攬するとは、把握するといふ意味であるが、古語では「知ろしめし、聞こしめす」と言ふ。

 天皇陛下は、驚くほど多くのことをご存知だと言はれる。学者がご進講すると、常にその少し上のレヴェルの質問をされるといふ。

 さてこのやうに全てをご存知の陛下では遊ばされるが、憲法の条項をお守りになるといふことは、ここに我らは天皇の絶対無私のお姿を拝察するのである。遵法といふことが、如何に国家を運営する上で大切かといふことを、身をもってお示し下さるのは、まことにありがたいことだと言はなければならない。

 天皇陛下は、ご高潔なご人格を基に、臣民の輔弼(ほひつ)により、まつりごとを行はれる。このシステムは、明治時代にはうまく行った。それは輔弼役の元老が、まだ健在であったからである。幕末の動乱期に、白刃をかいくぐってきた志士達は、日本と外国の本質を体で覚えて腹が据わってゐた。

現代であれば、名越二荒助先生のやうな方がゐて下さったらどんなにか心強いことだらうか。

転載元転載元: koreyasublog