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与那国駐屯地 ~開庁から1年を振り返る~
合言葉は「地域のために、地域と共に」

2017年7月19日更新
 日本最西端に位置する沖縄・与那国島に陸自「与那国駐屯地」が開庁してから1年。長く防衛上の空白地帯だった〝南西の国境〟の守りを固めるため、配置された沿岸監視隊の隊員約160人は日夜、外国の航空機・船舶の監視任務に当たっている。一方で隊員とその家族は、のどかで美しい与那国の自然にどっぷりと浸かり、島民とも親交を深めて、すっかり「渡難人(どなんちゅ)(与那国人)」になっている。創隊時から「地域のために、地域と共に」を掲げ、地道に活動してきた与那国部隊の一年を振り返ってみた。(横田大法)

与那国沿岸監視隊160人 現代版〝レーダー遠見番所〟

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 レーダーなどのほか、目視でも島の周囲に日常的に目を光らせる与那国沿岸監視隊の隊員
 沖縄本島の那覇まで510キロもあるのに、〝対岸〟の台湾まではわずか111キロと、まさに国境に位置する与那国島。沖縄の島人(しまんちゅ)も渡るのが難しかったため、古くから「どなん(渡難)」とも呼ばれてきた。
 この絶海の孤島に昨年3月28日、「与那国駐屯地」が開庁した。かつて外国船を見張るため「遠見番所」の置かれた島に、同じ目的で陸自部隊が配置されたのだ。
 初代与那国沿岸監視隊長兼駐屯地司令の塩満大吾2佐は部隊の任務として「レーダーや目視による監視のほか、島周辺で船舶や航空機から発信される各種信号の収集も行っています」と語る。
 部隊創設に当たった約160人は「西部方面隊よりすぐりの隊員たちばかり」という。約14%が沖縄県出身で、もちろん与那国生まれの隊員もいる。
 当初、部隊名を設定する際、特定地域における専任部隊であることを表すため、「与那国」の名が入ったこともあり、与那国沿岸監視隊は、より地域に根差したものになったようだ。

一島民として伝統文化を継承「海神祭」「豊年祭」「マチリ」に積極参加

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 与那国島の伝統行事「海神祭」に新設された「自衛隊ハーリー」で、迫真のレースを繰り広げる駐屯地の隊員たち。観戦する島民からも盛んな声援が送られた(5月29日)
 与那国は同じ沖縄県でも、本島とは違う独自の南方文化を形成してきた。このため貴重な祭事も多い。だが、高校がないため進学とともに島を離れる若者が多く、人口減と同時に伝統文化の担い手も減ってきた。
 そこで与那国の文化伝承のため立ち上がったのが隊員たちだ。塩満司令は「地域のために、地域と共に」を隊員たちに要望。国防の任務だけでなく、与那国の一島民として住民との積極的な交流を求めたのだ。
 隊員たちもその期待に応えた。
 昨年7月の「豊年祭」では大綱引きのためワラを編む作業に協力したほか、祭事に使うカニ採りも担当した。同12月には島最大の祭祀「マチリ」があり、隊員たちも支援。祭場の草刈りやテント設営のほか、本番のお祭りでは隊員夫人たちが島の女性とともに伝統舞踊「ミティ唄」を披露した。
 今年5月29日に行われた豊漁を祈願するハーリー大会「海神祭」に初出場し、20チーム中、7位に入る健闘を見せた。

全地区で等しく交流を 南西防衛の模範部隊へ

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 島に生息する希少な昆虫や動植物を保護するため、駐屯地庁舎前に設置されたビオトープ(生息池)。夏祭りに合わせ、子供たちによる昆虫学習会も行われた(28年8月7日、駐屯地で)
 与那国町の集落は、町役場がある北部の祖納、駐屯地が所在する西部の久部良、美しいビーチが広がる南部の比川に分かれる。
 この三つの地区で駐屯地は、各公民館を基準に九つに分かれた自治区それぞれに「連絡員」となる隊員を配置。日常的に各自治区の住民と意見交換を行い、部隊が全地区と等しく交流できるようにしている。
 こうした地道な活動が実を結び、昨年8月7日に行われた初の「駐屯地夏祭り」では、全島民の半数近くに当たる約600人が駐屯地を訪れ、自衛隊のイベントを楽しんだ。フィナーレでは新旧の住民が一体となって故郷の「与那国小唄」を歌いながら踊り、新時代の〝与那国遠見番所〟の完成を共に祝った。
 塩満司令は1年を振り返り、「この与那国駐屯地が南西防衛に当たる部隊の良き模範となれるよう、今後とも島民と親睦を深めていく」と語った。





 防衛関連ニュース

与那国駐屯地 隊舎や家族官舎 拝見
月内にも体育館が完成

2017年7月19日更新
 自衛隊で最も新しい与那国駐屯地を6月16日、再訪した。昨年3月の開庁式以来だ。旧知の隊員は南の島での勤務ですっかり日焼けし、その表情から与那国生活を満喫しているのが伝わってきた。隊員の案内で隊舎や家族宿舎を訪れると、充実した外観・内装だけでなく、24時間いつでも入浴できる風呂など、その手厚い厚生面に驚かされた。(写真・文 横田大法)

南欧リゾート思わせる庁舎
 駐屯地は島の西部・久部良地区の高台にある。約27万平方メートルの敷地に建つ各庁舎はすべて島の伝統的な家屋と同じくオレンジ色の瓦と白壁で統一され、外観はまるで南欧のリゾートホテルのようだ。
 建設に当たっては環境への配慮が最重要視され、敷地内に生息していた絶滅危惧種のコガタノゲンゴロウなど希少水生昆虫や植物を保護するため、専門家の指導で庁舎前に代替池「ビオトープ」が設置された。
 「昨年8月の駐屯地夏祭りでは、ここで子供たちと昆虫採集の学習会を開催しました」と沿岸監視隊副隊長の前島幸喜2佐。「隊員が定期的に整備しており、外来種の持ち込みが禁じられた与那国島の生態系の〝防衛〟にも一役買っています」と語る。
 庁舎に入ると、そこは他の駐屯地施設と変わらない構造。隊員向けの直営売店(PX)もある。商品は離島だからといって割高ではなく、アイスクリームなど食料品も本土と同じ価格。お土産用に同隊の部隊章をラベルにした地元の泡盛「どなん」も並ぶ。
 廊下の掲示板には、与那国にまつわる図書の入荷情報や、シュノーケル、BBQセットといった物品の貸し出し案内などが張り出され、「島暮らし」を満喫する隊員の様子もうかがえた。
 駐屯地には小児科担当の医官1人が常駐。島内にある総合診療科と歯科の病院と合わせ、隊員と家族の離島生活を医療面からもしっかりとサポートしている。

営内隊舎に24時間風呂
 真新しい「営内隊舎」も駐屯地内に完成していた。横幅が126メートルもある3階建ての建物で、独身隊員約80人がここで生活している。訓練などで展開する空自4移動警戒隊(那覇)の隊員のための部屋もあり、余裕のある造りだ。居室の窓からは眼下に広がる太平洋を一望できる。
 「沿岸監視」が任務の同隊はローテーションの24時間勤務で夜勤も多い。生活面も24時間対応となっており、風呂はいつでも入れる状態となっている。
 「夜勤明けの疲れをとるには最高の環境です」と案内してくれた後方支援隊長の松原央3佐。風呂の窓からも青い海がよく見えた。
 島民にも開放される駐屯地体育館は7月中の完成予定だ。隊員たちはそれまで営内の娯楽室に設置されたトレーニングマシンで汗を流している。
 今後、体育館とグラウンドが完成すると、島内でも最大級の運動施設になり、与那国島での各種スポーツイベントにも活用される。

祖納、久部良、比川地区に官舎

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 与那国島の北部、祖納地区にある新築の自衛隊官舎。現在、18世帯の隊員家族がここで生活している(6月16日)
 隊員・家族用官舎は、島の大きな集落である祖納、久部良、比川の3地区に整備される。
 町役場のある祖納地区に完成した官舎も白壁とオレンジの屋根で、各戸の広さは3LKだ。
 現在は18世帯が入居し、官舎の1階の車庫にはオートバイがたくさん停まっていた。隊員が通勤に使っているようだ。町側も、隊員の通勤時間に合わせて無料巡回バスの本数を増やした。
 官舎が未完成の久部良地区などでは、一般住宅を借り上げて、27世帯が暮らしている。
 与那国駐屯地の開庁に伴い、隊員約160人と家族約90人が転入し、現在、与那国町の人口は1702人(28年7月31日現在)に増えた。
 この結果、祖納地区の自衛隊官舎の隣にある与那国小学校の児童数は78人(うち隊員の子供17人)に増え、複式学級も解消された。隊員の子供はこのほか、久部良小に5人、与那国中に3人在籍している。
 同町は「駐屯地賃借料収入」を財源に、島内の幼稚園、小・中学校の給食費の無料化を実現した。また、小・中学生を対象とした無料の「町営塾」を開設し、オンライン授業によって東京の学習塾の授業が受けられるようになった。
 講師は東京大学の学生で、その教え方も巧みなため、「島の子の偏差値が上がった」と親たちも喜んでいるという。
 同町は今後、子供たちが高校進学で島を離れなくても済むよう、「通信制高校」の新設も検討している。

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 与那国小学校に隣接した官舎の敷地内には遊具が置かれ、放課後には子供たちが元気よく走り回っている
 塩満司令の案内を受け、官舎の敷地内に入った。ちょうど隣の与那国小の下校時間で、隊員の子供たちが島の子たちと一緒に官舎の庭にある遊具で遊んでいた。
 「妻や子供に話を聞くと、与那国が一番過ごしやすい土地だと言っています」と各地を転勤してきた経験のある塩満司令。
 官舎住まいの夫人たちも島暮らしにすっかりなじみ、子育ての相談をし合うなど皆仲が良いという。
 「じつは8歳の娘が与那国の方言も話すようになり、最初聞いた時は驚きました。この豊かな自然が残る島の生活を、子供たちも満喫してくれています」と司令。
 「与那国島は子育てにも最高の環境です。全国の隊員の皆さんも家族で与那国においでください」と笑った。






 防衛関連ニュース

豪州射撃競技会 狙撃銃部門で2位の快挙
滝ヶ原 伊藤2曹、訓練成果を発揮
(2017年5月13日~26日)

2017年7月19日更新

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 狙撃銃部門で観測手を務める伊藤2曹(右)=豪パッカパンニャル訓練場で


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 狙撃銃部門で総合2位に入った陸自代表の伊藤2曹(右)と左は1普連の繁田宜也2曹=豪パッカパンニャル訓練場で
 【滝ヶ原】豪陸軍が主催する国際射撃競技会「AASAM2017」が5月13~26日、豪・パッカパンニャル訓練場で行われ、狙撃銃部門(16課目)に臨んだ伊藤純2曹(普教連3中)ら2人でつくる陸自代表が総合2位に入った。
 競技会はアジア太平洋地域と欧州各国から軍人、隊員が集い、それぞれの国で装備する小銃、機関銃、狙撃銃、拳銃を使用して射撃練度を競う。陸自の参加は平成24年以来6回目。選抜された10人がチーム、狙撃銃両部門で訓練成果を発揮した。
 2人一組で競う狙撃銃部門には12カ国23チームが出場。引き金を引く狙撃手(スナイパー)と、・・・






 防衛関連ニュース

佐世保地方総監部、相浦駐屯地、
佐世保市と家族支援協定
(2017年5月26日)

2017年7月19日更新
 【佐世保】佐世保地方総監部(総監・佐藤誠海将)は5月26日、佐世保市役所庁議室で陸自相浦駐屯地(司令・中澤剛1陸佐)、佐世保市(朝長則男市長)との3者間で「大規模災害時等に従事する隊員の家族支援に関する協定」を締結した。佐監が自治体と家族支援協定を結んだのは今回が初めて。
 協定では、毎月実施する「緊急登庁支援訓練」時に市の保育士から指導・助言が受けられるほか、公立保育所での隊員の研修受け入れ、・・・





 防衛関連ニュース

海自東音第56回定例演奏会(2017年9月16日)

2017年7月19日更新
 9月16日(土)、東京都世田谷区の昭和女子大学人見記念講堂で午後2時開演。入場料無料(要座席指定券)。
 指揮者は樋口好雄隊長。曲目は「スワニー」(G・ガーシュイン)など。ゲストは雪村いづみ(歌手)、平原まこと(マルチサックスプレイヤー)。共演は昭和女子大付属昭和中・高校コーラス部・吹奏楽部。
 希望者は通常はがきに代表者の氏名(かな)、郵便番号、住所、電話番号、同伴者の人数(1人まで)と氏名(かな)を明記の上、〒158―0098東京都世田谷区上用賀1―17―13海上自衛隊東京音楽隊定例演奏会係まで。8月4日必着。重複応募は不可。
 詳細は東音03(3700)0136まで。