外来で抗がん剤治療中の患者さん、肺炎と胸水貯留で呼吸が苦しくて緊急入院しました。
癌と肺転移の増悪と、薬剤性肺炎の要素があります。要するにすごく具合が悪くて、改善がなければ週の単位でお亡くなりになる可能性もある状況です。CTで肺は真っ白。炎症もとても高くなっている。
もう数年抗がん剤治療を夫の献身的な支えもあり頑張ってきた人。
旦那さんはどうにか治療して欲しい、と訴えられましたが、この状況では抗がん剤は厳しい。治療することで命取りになってしまう可能があります。全身状態が良くなり外来通院できれば治療や検討できますが。
さて、病院で管理している側は、やはり蘇生処置について確認が必要です。急変して、突然亡くなる可能性だってあります。突然心臓や呼吸停止などあった時、蘇生をするかしないか、大きな違いです。蘇生は一回始めたらやめるっていうのがかなり難しい。
当然数年抗がん剤治療をしてきたし、そもそも再発しているんだから、死ぬ時どうしたい、ということは当然、話しているものだと思ったのですが、夫は、蘇生処置について、これまで話をしたことが無いと。本人の希望も聞いたことがないと。
例えば心臓マッサージは、バキバキ肋骨が折れます。挿管して、人工呼吸器にのせたら植物状態になっても、抜去できません。
癌になったら、早期発見早期治療でもちろん完治するものもあります。でも再発した時点で完治する可能性はなく、リスクとベネフィットのバランスでうまく付き合っていくしかないのです。治療がうまくいかなければ、亡くなる可能性もあるでしょう。
夫は、これまで治ることはないってわかっていても、治るよ、大丈夫だよって言って辛い抗がん剤治療も頑張ってきたと。妻が希望を失うようなことを言わないでくださいって。悪いって思って暗くなってしまうから画像も見せないでいいって。
がんってそういう病気です。夫が受け入れられていない場合が多すぎるなぁと感じます。残される方も心の準備が必要。静かにお見送りできるよう私もサポートしていきます。
再発治療の目的は治すことではありません。いかに治療のリスクとベネフィットのバランスを考えながらやっていくか、です。ぜひ一人一人が最後の時どうしたいか、元気な時から考えて共有できるといいなぁと思います。