Hと会った次の夜。
KCダーリンは、また電話口でキレていました。
それまでもKCは、私の話を最後まで聞かずに電話をブチッと切ったり、私が他の予定を入れている時は捨て台詞みたいなメールや伝言を、入れてきたり。私はそのたびに、傷付いてた。「あたしがいったい、何をしたって言うんだろう?」と。
でもその前日Hと二人で会ってしまったあたしは、もうきっと何を言われても仕方無い立場だろうと思う。
だけど。
ほんの少しでも、あたしに自由をくれたなら。ほんの少しでも、あたしがあなたにしていることを、認めてくれたなら。状況は、違っていたと思う。
あたしをこうさせたのは、KCだよ。
心の片隅で、そう思ったあたし。
***
でもあたしは、KCとの状況を大きく変えるつもりはなかった。とにかく、小さな世界に閉じこもってちゃだめだ。色んな世界を、色んな人を見て。それで何かが分かることもある、と、そう思っていたから。
まだHとのことも興味本位で。
そのときのあたしにとって、KCはお米みたいなもの。多分、もう無くてはならない主食、になっていた。Hや、Syoとの夜遊びは、とっても楽しかったけど、感覚的にはデザートみたいなものでしかなかった。あったらいいけど、無くっても生きてはいける。
当然Hも、KCの存在を分かっている。「二番でいいから、つきあってよ」。そう言った彼。その後もちろん、「彼氏と別れて、俺とつきあってよ。」とも言われたけれど、あたしはまだお茶を濁し続けていた。
でも、Hと会っている時の時間は、日常の嫌なことを全て忘れてしまうくらい幸せでふわふわしていて本当に甘いデザートみたいだった。風邪を引いて調子が悪くても、「1107と会ったら治った」。「会うだけで本当に癒される」。こんな理不尽なあたしに対して、ちゃんと愛情を表現してくれる、H。
そういえば恋愛って、こういうものだったな。
ふとあたしはそう思っていた。
***
Hと会いだしてしばらくしてからの、帰り道。
いつものようにタクシーに乗る二人。
「映画見て、スタバのコーヒー飲もうか。」
「・・・うん。」
でも、よく考えて見れば営業時間なんてとっくに終わっている。
「・・・それは、どこに、あるの。」
「俺の家。」
あたしはずっと、
窓の外の流れる景色を眺めていた。