村上弘明が演じた鍛冶屋の政。

必殺シリーズ後期に欠かせない仕事人となる。


 久しぶりの「必殺シリーズ」の記事になりますが私が必殺シリーズにおいて仕事人の鍛冶屋の政(村上弘明)が好きなキャラクターの一人でした。鍛冶屋の政は当初、花屋を営んでいたが「自分の柄ではないので(花屋は)辞めた」と語って鍛冶屋に転職し更に花の枝で急所を刺す殺し技から木製の組換式手槍へと持ち替えた。普段は特に女性や子供に優しい青年で仕事人仲間の危機さえも口では冷たいことを言うが最終的には見捨てる事は出来ず救う事もあった。

 そんな鍛冶屋の政は父親も仕事人であったが少年時代に役人に捕えられ処刑されたため父親の仕事人仲間のお京(野際陽子)に育てられ仕事人としても殺し技を仕込まれた。「必殺仕事人V」の第5話で実は、お京が父を奉行所に密告した事を知り政は苦悩しながらも「20年前にやらなきゃならなかった事を今やるだけだ」と育ての親で仕事人の師でもあるお京を始末した。(この回において、政と知り合った少女の父もお京の仕事人仲間で、その父もお京が役人に密告し刑死。自分の目の前で父親が処刑された少女の姿にかつての自分自身と重ねて見えた理由もある。)

 この時のエピソードは後にも政の口から語られる。「必殺仕事人V 旋風編」の第10話において中村主水(藤田まこと)が事件の渦中の女に惚れたのか?という問いに政は「俺は母親を殺した男だ。今さら女に惚れる訳はないだろう」と否定したが母親を殺したのと女に惚れるのは別問題のような気もしますが・・・。その母親を殺したというのは明らかに育ての母のお京の事である。そして「必殺仕事人V 風雲竜虎編」の第4話においては、女スリ・お百(高部智子)を助けて逃げ回っている時、お百が財布に鈴を付けている理由を聞かれると政は「子供頃よく迷子になったため母が財布に鈴を付けてくれた」と語り「その母親も俺が殺した」と打ち明け「おふくろは死に際にこの鈴を渡して、お前は精一杯生きろと言って死んだ」と語ったが政がお京を始末した際、このようなシーンはなかったので恐らく政がお京を思うあまりの記憶違いのような気がします。私としては政が「母親を殺した」と語る場面で、お京を始末したシーンを回想して欲しかったです。

 

 何故なら三味線屋の勇次(中条きよし)も幼い頃、実の父親も仕事人で金欲しさに仲間を役人に売り裏切ったため育ての母となる、おりく(山田五十鈴)に始末される。このシーンは「新必殺仕事人」の第1話で放送され後にこのエピソードは「必殺仕事人V」の第9話においてもゲストのお栄(田中彩)が勇次の店を訪れた際「勇次さんのお父さんって、どんな人だったの・・・?」と聞かれると勇次は「俺の親父か・・・?よく覚えちゃいないが、お前の親父同様あんまり褒められた親父じゃなかったらしい」と語り、幼い頃におりくが父を始末したシーンが回想されたように政も「母親を殺した」と語った際には、お京を始末したシーンを回想すべきだったと思います。

「必殺仕置人」棺桶の錠(沖雅也)と同じ殺し技・木製の組換式手槍。

この殺し技の変更が人気を呼んだ。


 ある本に鍛冶屋の政は、いつまでも母親を殺した事を気にしているのは彼がマザコンだったのか?という説があり「必殺仕事人V」の第5話にお京役として野際陽子が演じ更に18話においては政の昔の恋人おりょう役に賀来千香子が演じた。この二人は「必殺仕事人V」が放送された7年後にTBSドラマで大ヒットを記録した「ずっとあなたが好きだった」でも共演し野際陽子が息子・冬彦(佐野史郎)を溺愛する異常な母親を演じ賀来千香子は、その冬彦の嫁・美和を演じたため政は冬彦と同じ立場となる。

 どんなにクールな仕事人の政でも母への思いは強かったという事になるのでしょうか?