HITOTAKEのブログ


「北斗の拳」においてシンのキャラクターを見ていくとシンといえば頭によぎるのは

・南斗孤鷲拳の伝承者

・ケンシロウを倒しユリアを奪い、ケンシロウの胸に北斗の傷をつけた

・南斗六聖拳の1人で殉星の男(愛に殉ずる星)

だろう。


 シンはユリアを愛していたがユリアはケンシロウを愛し諦めかけていたがケンシロウの義兄ジャギにそそのかされユリアを奪った事になっているが、実際はケンシロウの師父リュウケンの死によって行動を起こしたことになっている。

 確かにリュウケンは死ぬ以前から高齢で体調不良であった事はケンシロウも感じていた。しかし、リュウケンは伝承者になれなかった長兄ラオウの拳を封じるため

北斗神拳奥義七星点心でラオウにその動きを読まれぬまま相当なダメージを負わせた。そしてラオウの拳を封じようとした時リュウケンの病魔が動きを止めてしまい立ち上がったラオウに殺されてしまった。

 高齢で体調不良とはいえあのラオウも相当なダメージを負わせ拳を封じる寸前までいったリュウケンにシンが太刀打ち出来るはずも無かった。シンにとってリュウケンの死、ジャギの言葉、ケンシロウがこの時は性格は甘く北斗神拳も宝の持ち腐れになってしまう程だったという都合の良さが重なりユリアを奪う事が出来たのだ。

 しかし、シンはケンシロウとは子供の頃から兄弟のように育った中という設定もありケンシロウが本気で怒ればどれ程本領を発揮するか心が知らないわけは無かったはずである。実際、ユリアを奪った時シンはケンシロウに「ユリアをかばう気持ちがお前の拳を鈍らせた」と語っている。つまりシンはケンシロウにためらう気持ちがなければ何らかのダメージを与えていたとケンシロウの実力を知らず知らずの内に認めているのである

 そして「お前と俺では致命的な違いがある。欲望に執念だ。お前にはそれが無い」

と言って後にケンシロウはそのシンが教えた執念でケンシロウに倒されている。シンは何故ケンシロウにそこまで言ってケンシロウの甘い性格を排除させたのか?

 それはシンの心にケンシロウへの「友情」が残っていたと私は思う。ケンシロウはこの時まだ世紀末の暴力の時代を理解していなかったからだ。現にシンはケンシロウに「力こそが正義いい時代になったもんだ。」と言っている。そしてケンシロウにユリアをたくせるか試したのかも知れない。ユリアに愛されているケンシロウへの嫉妬もあったが、これからケンシロウには想像もつかない宿命が待っている事もシンは知っていたのではないか?

 シンはケンシロウに普段は善良な人間でも悪党を相手にする時には例え親友でも非情になり倒さねばならない。恐らくシンはケンシロウの才能も知っていたので今度戦う時は自分が死ぬ時だと察知していたのかも知れない。今度会う時はケンシロウは自分が教えた執念を持って自分を倒しに来るだろう。

 そしてケンシロウと再戦した時、想像以上の強さを持ってケンシロウは挑んできた。技を見切られ成す術が無い。しかし、ケンシロウはまだ甘かった。シンの技を全て見切った余裕もあったのかも知れないが、非情さになりきれておらずシンの肩を外したが「安心しろ秘孔は、はずしてある」と言っている。シンはケンシロウには非情になってもらうためにユリアの人形を突きケンシロウにユリアを殺したように見せかけるとケンシロウの怒りは頂点に達し非情なまでの強さでシンの体に北斗神拳を浴びせた。

 シンは言葉には出さなかったが「ケンシロウ・・・これでいい」と思っていたのではないか?ユリアの為に愛に殉じたが、もうひとつはケンシロウの為に友情として殉じたのである。シンはケンシロウにこれから更に立ちはだかる強敵(とも)に自分を踏み台にして乗り越えさせるために果てたのであると信じたい。