1979年(昭和54年)からはじまった「あばれはっちゃく」シリーズ。

主人公・桜間長太郎はガキ大将でおっちょこちょいで無鉄砲、喧嘩っ早いくせに

人情に熱いキャラクターである。

 私も「あばれはっちゃく」シリーズはほとんど見た世代の一人である。


 その中で俺はあばれはっちゃくの「モヤシも男だ マル秘作戦」では古き良き時代の人間ストーリーが特に描かれている。

 長太郎の親友・こういち(通称:モヤシ)はテニスをする長太郎の姉・てるほ(島田歌穂)に物陰から憧れのまなざしを向けている。おいおい、それっていまじゃストーカーだろ・・・。

 そして、てるほと一緒に長太郎と昆虫採集するため待ち合わせの場所で待機していると悪ガキ3人がてるほのスカートをめくり悪戯をする。笑いものにする3人にモヤシは止めにかかるが「邪魔するな!」と返り討ちにされてしまう。そこへ我らの長太郎が登場し3人をあっという間に撃破する。その3人の1人・五郎は兄に言いつけると脅す。兄は柔道も空手も凄腕だと言うがそれでも長太郎はひるまない。3人を追い払うと今度は長太郎の怒りはモヤシに向けられた。「お前が付いていながらなんだ!!向こうが悪いんだろ!!男だったらしゃんとしろ!!だからモヤシモヤシと言われるんだ!!」と必要以上に怒鳴られるとモヤシは「うっさい!!」と激怒する。

 昆虫採集もせず、そのまま去ってしまう。長太郎は何でモヤシが怒っているかわからない。するとてるほは長太郎以上に怒っていた。それはモヤシに対してではなく長太郎に対してだ。「プライド傷つけられたら誰だって怒るわよ」と言うが長太郎は親友だから気にもしていない。

 数時間後、モヤシは自転車で母親が営む八百屋の配達の手伝いをしていると先程の悪ガキ3人組の2人がモヤシに仕返しをして野菜を台無しにする。五郎にむなぐらをつかまれても抵抗出来ないモヤシ。

 その夜、長太郎の家では父・長治が親友から蒲焼を貰ったと超御機嫌。長治は長太郎に友達は良いぞと言うとてるほは「長太郎、耳が痛いんじゃないの?」と言われる。長治に「何かあったのか?」と聞かれると母親は「こういち君といさかいを起こして傷つけたのよ」と言うと長治は「怪我させたのか?」と聞くとてるほは「こういち君の心を傷つけたのよ。意気地無しとか男らしくないとか」と言うと長治は長太郎をとがめる。長太郎は「バカに構うなよ」と言うと長治は「心を傷つけるという事は怪我をさせる事より大変な事なんだぞ」と叱ると母親も親友に言われたんだからショックだったと思うと言う。

 長治は今すぐ行って謝って仲直りし来いと言ってそれまでは飯食わせないという。厳しい・・・。長太郎はふて腐れて、てるほに「余計な事言いやがって!!」と言わんばかりに手をつねるとてるほの持っていた皿を割ってしまう。あきれる長治は「長太郎、その割れた皿を元の通りにしてみろ」と言って長太郎は「出来ねーよ」と言うと長治は「そうだろう。そうならねー内に仲直りするんだ」と言って長太郎も少しは納得した様子でモヤシの家に向かう。

 途中、五郎の兄の柔道青年の稽古場を見ると長太郎は自分よりもひと回りも大きく柔道でも確かに相当強く勝算は薄いと顔をしかめる。長太郎はモヤシと仲直りしようとするがモヤシはなかなか心を開こうとしない。モヤシの母親の手伝いもするがそれでも効果無し。しまいには長太郎も「勝手にしろ!!」と言わんばかりに2人の亀裂はますます大きくなるばかり。そんな時モヤシは公園で長太郎と喧嘩の原因となった悪ガキ3人が遊んでいて影から忍び寄って五郎の頭に石をぶつけて逃げてしまう。

 悪ガキ3人は長太郎の仕業だと思い込み、モヤシを捕まえると五郎の兄が長太郎と話をつけるべく時間と場所を指定する。モヤシは自分で解決しようとその場所に向かう。その事を聞かされた長太郎もその場所へ直行する。川辺で弁当を食べながら待つ柔道青年と悪ガキ3人。モヤシは影から様子見て自分が4人にぶちのめされる想像をして怖くて行けない。そこへ長太郎が来て柔道青年は「呼び出してすまないな」と言う。長太郎は五郎に怪我をさせたのは自分だと言って謝って済まそうと思わない気の済むようにしろとその場に座り込む。悪ガキ3人は「やっちまおうぜ」と言って1人の手には空き瓶で今にも殴りかからんばかりだった。

 モヤシの母親も様子を見に来ていたがモヤシはいない。それでも息子の友達である長太郎が危なくなったら自分が出て行って助けようとする。柔道青年は長太郎の行動を黙って見ているとそこにモヤシが現れ、五郎を怪我させたのは自分だと言う。

すると柔道青年は「もういいよ。弟の怪我はたいした事ないし、謝ってくれればそれでいい」と言う。そして柔道青年は弟の五郎とその仲間に「2人はちゃんと謝った立派じゃないか」と言って「本当はお前達が悪いんじゃないのか?」と言うとあわてて逃げようとする3人に柔道青年は「男だったら正直に言ってみろ!!」と言うと3人の内1人が申し訳ないといわんばかりに手を差し出すと柔道青年は「やっぱりそうか!!」と言って3人を頭を冷やせと川へ落としてしまう。

 モヤシの母親もその光景を見て安心し「子供の喧嘩に親が出る事は無いね」と言ってその場を後にする。そして長太郎とモヤシは口喧嘩しながらも仲直りした。


このストーリーにおいて大切なのは

・父親が子供をちゃんと叱る。

・柔道青年が相手の出方を見る。相手の話を聞く。謝ったらちゃんと許す。

相手に敬意を払う。そして弟いえども間違った言動であったら罰を下す。

柔道や空手を学んでいる者は「礼に始まって礼に終わる」という礼儀や精神を先に学んでいるのだ。強さで力自慢して弱い者を相手にいじめたり柔道や空手技を使ったりする者は恥ずべき行為なのだ。

柔道青年はおそらく立派な師匠に恵まれていたに違いない。


「あばれはっちゃく」はそんな古き良き時代の作品である。しかし、これは決して地方でも田舎町のストーリーではない。れっきとした東京である。