『心を開いて』
昔、好きだった人がいた。
その彼と一緒にテレビを見ている時に、
ZARDの曲がCMから流れてきた。
「これ、いい歌だなー」
彼はソファーの上で素足を組み直し
のけ反った姿勢で言った。
「うん、そうだね」
私もその歌が大好きだったから、
本当に嬉しくなった。
『心を開いて』
という初夏にぴったりの瑞々しい歌。
その時の彼の横顔とか、
網戸越しに見える青い空、
日差しがブラウン管に反射して
少し見辛かった事、
膝を抱えた私の鼻をくすぐり
りんと立つ夏の入り口の匂い、
半袖から伸びた彼の腕、
鮮やかに覚えている。
今ではその彼とは会わなくなったけれど、
同じ歌を同じ瞬間に
「好きだ」 と思った事。
時間は過ぎる。
これは現実。
けれど、この歌を耳にするたびに
また巡ってくる想い。
それは「歌」からの途方も無い贈り物だ。
胸が締め付けられるけれど、
そう感じることができるのは
「♪このままずっと忘れたくない
今が思い出に変わっても
言葉はないけどきっとあなたも同じ気持ちでいるよね・・・♪」
『心を開いて』より
ZARDの坂井泉水さんが亡くなり
早数年。
調べたら2007年5月27日が命日。
泉水さんに「亡くなった」という言葉が
あまりにも似合わなくて、
実感が湧かなかった。
歌の技術的に言えば、平凡だったのかも
しれない。
それでも彼女には「声質」という非凡な
才能があった。
とても暖かいのに、
夏空を透かすガラスのような清涼感を
連想する透明感があった。
彼女のアルバムは全て揃えている。
大好き。
人に何かを伝えること、
伝えようとすること。
生み出すこと。
大変だったと思う。
泉水さん、お疲れ様でした。
あなたに贈り物をもらえた事、
心より嬉しく思います。
これからも時々聴くと思います。
ありがとう!!
https://www.youtube.com/watch?v=j9rax18IghI&feature=share
私がK様以外の女性アーティストを
好きなのってほんの数人。
泉水さんの存在は大きいです。
美優