信じてる。早く帰って来てね。

そう言ってくれたのに帰って来た俺に
彼女は少し不満げだった。

「やっぱりもう、彼女と会わないで?」

「彼女じゃないよ。もう、いい友達だし」

そう言っても難しい顔して無言になる。

いつものように俺は彼女を抱き寄せ
安心させようとした。

なのに、予想外の言葉が出る。

「こうちゃんのお金ってどう言う事?」

なんで知ってるんだよ。
俺の方が驚いた。

彼女に余計な心配をかけたくなくて
アイツと会った事もケンスケさんの事も
言わずにいたのに。

まだどっちかと連絡を取り合っているのか?

彼女はコウイチからの手紙を差し出した。
以前の住所から転送されたものだった。

「入院費は足りたでしょうか?」

らしき内容だった。

何を今更こんな事をするのか。
俺達にはもう関わらないって約束したのに。

手紙は破り捨てた。
彼女がコウイチと連絡も会って居ない事も
携帯で確認した。

疑うなら携帯をみてもいいといつもより 
キツイ口調で言ったから。  

そんな名前とアドレス、消してやった。

俺は正直に素直に説明した。
アイツの腹いせで苦しんだ事。

アイツからの金で彼女の治療費に
あてがうのは、俺が許したくなかった。

俺達が苦しんだ代償に俺達がアイツより
幸せな時間を持とうとしたと。

そのくらい当然だから。
なのに彼女は納得しない。

「どうして私には教えてくれなかったの?」

知らせたくないだけだ。

そんな事知ったら、彼女が余計な負い目を
持つのは目に見えてるから。

「そんな調子の良い………都合いい話じゃん」

泣きそうな顔でそう言う。
何も間違った事はしてるつもりは全くない。

それだけ彼女を大事にしてる証拠なのに。

それに今日会った元カノだって別に嫌いで
別れたわけじゃない。

お互い忙しくなってすれ違っただけだ。
お互い会いたくないなら、連絡だってして
来ないだろう?

彼女はもっと何か言いたげだったが
やっと涙目の顔を擦りながら

「………いい人だってそう思っていたのに」

そう小さく呟いた。

何だよ?俺は悪いことをした覚えは無い!
黙っていたのだって彼女の為だ。

それに他人から嫌な人なんて
思われたくないのは普通だろう?

好い人に見られて損する事あるのかよ。
そう言うと彼女の顔が更に泣き顔になった。

何が間違ってるんだよ。
当たり前じゃないか。
普通の事じゃないのかよ。

初めて喧嘩らしい事をした。

でも、お互いを知るには多分必要な事だ。

言いたい事を言ってお互いの本音を
知るのは大事だと思う。

彼女の不安を解くにも俺はもっと彼女を 
大事にした。

気持ちだけでも戻したくて、ゴメン、 
俺の考えが甘かったんだよ。許してよと。

彼女も本当に今まで通りに信じて良いよね?
と俺に抱きつく。

信頼関係が強くなったそう思っていた。

なのに時々浮かない顔をする。
最近表情が少なくなってきた感じもする。

「岬が仕事してる間、2時間位友達の家
に遊びに時々行きたいんだけど」

そう言う。
時々は俺から離れて息抜きも必要かな。

そう思って気分紛らわしておいでと
彼女に優しく言う。
俺が不在の間くらい外に触れた方がいい。

その間に俺も仕事を片付けよう。
自分のパソコンを開く。

彼女のパソコンも電源が切れていない。

消してあげようそう思って開いてみた。
何かのHPを見たまんまだ。

しかもどうみても風俗のHP。

驚いて、履歴をみる。
なんで彼女の写真が載っているんだよ?

顔を伏せていたってすぐわかる。
驚き過ぎて言葉にならない。

変な動悸だけ苦しく、汗もでてくる。

しかもプロフィールには

「本日から復帰しました!
当店自慢の人気嬢、エリちゃんです!
ファンの方お待たせしました!」

なんて書いてある。
何が何だかわからない。

遊びに行くってどういう事なんだよ?

加藤さんと言う人が以前に事故に遭った時、
身元保証人になって親切にしてくれた事。 

今は交流が無くなったけどたまには
顔を出したいんだよね。

そう言って彼女は出ていった。

約束の時間よりも早く迎えに行く。
時間通りに彼女は古びた家から出てくる。

遊びに行ったはずなのに楽しそうな
表情なんかじゃない。
 
少し疲れたように出てきた。

当たり前だろう。
俺に嘘をついて出掛けていたのだから。

「あのさ、俺に言う事はない?」

突然でびっくりしている。

「友達っていうけどさ、誰と友達なワケ?」

顔面蒼白な彼女はしどろもどろに

「加藤さん・・・」

小さく震える声で、やっとそう言う。

確信した。

「ふぅん。加藤さんって友達だったんだ?」

「ねぇ、エリちゃん?」

絶句した彼女は硬直したままだ。

「俺は知らないとでも思ったの?」

そう言っても彼女は凍りついたままだ。
探す言葉も見つからないようだ。

やっぱり風俗で働いていたのかよ。
どうして風俗なんだよ。

こんな事、嫌だ、嘘であって欲しかった。
彼女に何か弁解してもらいたかった。

なのに彼女は蒼白な顔のまま立ち尽くす。

「いくら稼いだの?」

そう言って彼女の鞄を取り上げた。

抵抗しようとはするがすぐに俺の手に渡った。

こういう事態の説明を聞きたくて
ファミレスに連れていく。

黙っていた彼女がやっと話し出した。

「……どうして怒らないの?」

怒ってるに決まってるじゃないか。
めちゃくちゃ大事な彼女が風俗嬢なんて。

すごく大事にしてた彼女が風俗
なんかで働いていたなんて。

今まで騙されていたなんて。

俺は予想以上にかなりキズついている。
この場所じゃないと泣きそうだ。

何かしてもらわないと腹の虫が収まらない。

ファミレスの食事代くらい当然だ。
騙された価値より低い。

彼女は飲み物にも手をつけず黙ったままだ。

俺もこの場所じゃなければ感情が
はちきれそうに、苦しかった。

ありえないよ。
どうしてなんだよ。
 


もし彼女を失ったらどうなるんだろう?


 




 
雪の華   5

  



P.S.  

折り返し地点近くなりました。

今日はコメント開けてるので
今までの感想とか、バカとか、アホとか  
有り得ないとか、気持ち悪いとか、




何でもいいので聞きたいです。


どうか、私の背中を押して下さい。 
お願いします。応援でも罵詈雑言でも。



何を言われても頑張って最後まで、
走り、最後まで綴りたいです。

きっと私、この話を書きたくてブログ
始めたと思うのです。

読んで下さってる方、安っぽい話に
いつもありがとうございます。

 

美優