彼女と普通のデートが出来る。

だってラブホテル以外で逢うのだから
デートに決まってる。


私の思い込みは正しいのだ。


その日まで何回もメールで約束の
確認を毎日する。


「ちゃんと行きますから」


そう返事が来た。


本当に約束の日、約束の時間に
彼女はコーヒーショップに来てくれた。



仕事では脱ぎやすい服装なのに、

その日は初めて見るジーンズだった。

とにかく新鮮な彼女の姿だった。



マダムデリとは言えど、

彼女はまだ若い方なのだ。



食事はいらないと言う。

食べてる時間がないと。

すぐに帰らなきゃ都合が悪いと。



でもお願いだからもう少し

一緒に居て欲しいと頼む。



困った顔の彼女。

こんな顔させたくないのに。

事故で車が無いことを知っていた。




たいした車は買えないが

中古車なら買えるだろう。




そう思って200万用意していた。


「車を買いに行きましょう」


そういうとさすがに驚いて断られる。



本当にそんな事しないでと。

でも私の気持ちを受け止めて欲しい。



どんな人でもここまで気に入った
というか、理想の女性なのだ。



ただの客という一線を越えたいのだと
彼女に必死で頼みこむ。


でも本当にやめて。

と珍しく彼女が語気荒く拒否した。



身元も今後必要になるのはお互い都合が
やっぱり悪かったか。

ちょっと行き過ぎた行為に反省した。




それでも去ろうとする彼女に

200万の封筒を無理矢理に

彼女のバックにねじ込んだ。



これは気持ちだから。

また貴女を指名したいから

約束のつもりだと。



驚いて困惑する彼女。

でも誰かと待ち合わせしてたのか、

彼女はその人の方向を向く。



「ごめんなさい!ごめんなさい!
もう行かなくちゃ行けないの」


そう言って去ろうとした。




しかし、金をねじ込んでおきながら

「また逢ってくれればいいから」

と、私が先に帰った。




返されるのは恥ずかしいし、

困った彼女の顔を見るのが

もっとつらいから。




翌日も彼女を予約する。


事故の後のため、仕事は1日に

2時間しか出ないという。



昨日渡した金を返そうとする。

また彼女が語気を荒げて

困るんですと言う。



では、これからは私だけと

逢ってくれと頼む。

店長にバレたら私も困りますと言う。



彼女を請け出すにはまだ金が必要か。

吉原の遊女みたいな事を想像する。




愛人にも専属になって欲しい

なんて言えない私もいた。




だって彼女を愛人とか呼びたくない。

変な正義感だけはある。




都合が着くが限り彼女を予約した。

会えない日にはメールする。

かなりの長い文章をまた書いて送る。




そんな私の誠意が通じたのか?

メールで言った彼女の家に行きたい

と言う言葉が実現した。




「こんな事しか返せないけど」と。




お昼に招待された彼女の家は

質素だが綺麗なアパートだった。




ソファーに座り、お茶を出され

彼女のプライベートを隈無く

落ち着き無く観察する。



男の影はありそうでも無さそうでも
どうでもよかった。



せっかく店を通さずに彼女に会ったのに、

私は緊張しすぎて固まったままだ。

出されたコーヒーも喉を通らない。




ましてや襲う気持ちなんて更々ない。


でも彼女はひどく怠そうに見えた。




「ごめんなさい、薬が効いてて。

眠くて具合が悪くって」




そう言って彼女はソファーに

座った私の膝元で眠ってしまった。





綺麗な彼女の黒髪をなでながら

こんな出会いでもいいかと思った。





これからどんどん親密になれるかと

思うだけでも妄想を楽しめる。

そう思ったんだ。





彼女を誘って旅行とかもしたい。



彼女を海の綺麗なリゾートに誘う事や

避暑地で静かに過ごしたり

時には買い物でフランスなんか
にも連れていきたい。




つば広の帽子がエレガントに  

似合いそうで、悶絶しながら

彼女にメールで提案した。




そんな、無理ですと返事でも

気にしなかった。

ただの空想だよと安心させる。





本当は誘いたかったけど。
  




なのに。






彼女が突然店をやめたのは

秋も終わりの頃。



メールも繋がらなくなり、店長に

聞いても埒があかない。




せっかくお気に入りの女性が

見つかったのに。



彼女の家に行ってみたが、

引っ越しした様子だった。



郵便受けをみたが、彼女宛のものは

何も見つからなかった。




かなり、喪失感強かった。




それでも私の風俗好きは止まらなかった。

何故かはわからない。

彼女の脱け殻を探した。




仕事の鬱憤を晴らしたかったのか、

理想の女性をリアルの世界では

探せないので風俗を、選ぶのか。




彼女には敵わないけど、

それなりに綺麗な子をまた見つけたい。




春先になり新しいデリへル店が

オープンした。




いつもの店は嬢が急に足りなくなり、

お気に入りの子は見つからなかった。




新しい店でお気に入りになりそうな子

探す楽しみも増えた。



新しくオープンした店は受付が

若い女の時もあれば男の声の時もある。

ここも感じのよい受付だ。




なによりもうあの酒やけした声は

耳障りになっていたから。





新しい店にも彼女は在籍しておらず、

しらみ潰しに似たような子を探すが、

結局見つけられなかった。




まさか。


そう思ったが首を振る。



私の風俗通いはこれからも

続くと思う。


新しい天使に出逢える事を願って。




色んな趣味の中でも、特別に

風俗が私の大事な趣味なのは

誰にも秘密だけれども。



また新しいお気に入りの女性を

これからも探して楽しむのだ。

私の性欲の為じゃないけれど。





彼女に贈る言葉はただこれだけ。
彼女にもメールしたが、これに尽きる。



私の女神、ヴィーナスはずっと貴女だけです。

羽衣まとう天女でもあったと思うのです。

眩しすぎて見えなくなったのだと。





あなたがもしもどこかの遠くへ行きうせても

今までしてくれたことを忘れずにいたいよ

もどかしさもあなたにゃ程よくいいね



エリー my love so sweet……









いとしのエリー   3








美優