アドレスをもらい有頂天な
私は毎日彼女にメールする。


返事は3回に1回の短いものしか
返ってこないが


私の事をもっと知ってもらおうとした。


生年月日からどのような生活なのか、
人生の色んなエピソードを語る。


自分の性格から彼女の好きなところを
語り、段々と作家になっていく。


数学教師なのに、粋な言葉を
遣いたくて色んな愛の言葉まで引用する。



何故教師になろうとしたのかの経緯、
教師として誇りに思っている事、
 

時には脱線して家族の名前の由来や
年収まで洗いざらいメールする。


1度に送れなくて3回に分ける時も。


時々彼女に対する私の気持ちを
エッセイにしたり、ポエムにもした。


目の前にすると上手いことが 
言えないから。


彼女はほんの少しの文章で
喜びを表し、また予約して下さいと
決まった返事だったけど。



いつものように彼女を予約し、

ホテルで落ち着き無く待つ。



そんなとき、店長から電話がきた。


「佐藤さ~ん。ごめんなさいねぇ。

今日は違う子にしてくれる?

ちょっとエリちゃん、具合が悪いの。

ホントにごめんなさいね?」



そう言われた。



彼女じゃないなら予約は消していい。
そう言うと、

「しばらく、出られないかも知れない

そう言う。



そこまで具合が悪いのはどうして
なのなのか。


そう訊くと、言いにくそうに


「さっき、ちょっと事故に遭っちゃって。

でも、たいした事はないから。

すぐに復帰できるから」



そう言う。



事故に遭ったなんて。


私もうろたえた。


彼女にメールしたって返事は
もちろん来ない。


週の半分は通っていたのも自粛した。


私も落ち着かないから。



1週間たち、やっと店長から電話が来た。



「エリちゃん、今日から復帰です!

買い占めますか?」

 


もちろんだ。



たった2時間だけど彼女に会える。



久しぶりに会った彼女は大きな
怪我もなく、


すみませんでした。と言う。


ホッとした。


でも、いたわりたい。 

復帰はしたけど、酷く具合悪そう。


飲んでる痛み止めのせいだと言う。



一緒に風呂に入り、いつものように
サービスしてもらいたかったが


下着のままベットに横たわる彼女は

そのまま寝てしまった。



その寝顔を見ながら時間が過ぎた。


綺麗な肌だな。

薄く小さな口にそっとキスする。


伏せたこの大きな目は睫毛も長く、
毒リンゴを食べた白雪姫ってこんな
感じなのだろうか?
 

静かな寝息が安息を伝えてくれる。
 

人形のように眠る彼女をショーケース 
に入った装飾品を眺めるように 

ゆっくり堪能出来るのは今、私だけだ。



万華鏡を眺めて感心した頃のように 

眠る彼女を見届ける。


「ごめんなさい」


そう謝るけれど、無防備な彼女が
見れて本当に嬉しかった。



私はお見舞いの金を用意していた。


なのに、絶対にいらないと言う。

「仕事なのに寝てしまって、

更にこんな事までしてもらえない」と。



私も懇願する。


「じゃ、今度ホテルじゃなく

普通の明るい場所で貴女と会いたい。

食事だけでいいから普段の貴女をみたい」



何回も何回もお願いした。



店の迎えのボーイが彼女に
何度も携帯を鳴らす。


その携帯に出なくちゃいけない
焦りを見せて困ったように、


「じゃ、今度、少しだけなら」

 

そう言って1週間後に 

あるコーヒーショップで

待ち合わせの約束が出来た。



仕事じゃない彼女と会える。


その期待はすでに叫びたいくらい 

嬉しい事に、なっていた。




いとしのエリー   2


 



美優