(店頭には色とりどりの果物が並んでいるが、値札にはすべて「色の名前」が書かれている)
客:(戸惑いながら)あの、すみません。巨峰をひと房ください。
店主:(ピシャリと)お客さん、うちは「旧名称」での注文は禁止だよ。法律が変わったんだ。オレンジがオレンジ色だからオレンジなように、他の連中も魂の色で呼んでやってくれ。
客: はぁ……じゃあ、ええと……その、「パープル」をください。
店主: どのパープルだい? うちには「ディープ・パープル(巨峰)」と「ライト・パープル(デラウェア)」、それに皮ごと食える「シャイン・グリーン」……あ、これは緑か。
客:(混乱して)じゃあ、そのディープ・パープルを。……あと、イチゴも欲しいんですけど。
店主: イチゴ? ああ、「レッド」のことか。
客: レッドって、あっちのリンゴもレッドじゃないですか。
店主: 違うな。リンゴは「クリムゾン・スフィア(深紅の球体)」だ。イチゴは「ドット・レッド」。つぶつぶがあるからな。
客: ややこしいな!……じゃあ、バナナは?
店主: 「イエロー・カーブ」だ。
客: そのまんまだな! だったらレモンはどうなるんですか?
店主: レモンは「サワー・イエロー」。バナナより酸っぱいからな。
客: もはや色の名前じゃない要素が入ってきてるじゃないですか。……あ、あそこにある桃は? 桃色っていうくらいだから、ピンクでいいんですよね?
店主: 甘いな。あれは「ファジー・ピンク(毛羽立った桃色)」だ。触り心地を無視しちゃ、果物に失礼だよ。
客:(ため息)……もういいです。じゃあ、そのディープ・パープルとイエロー・カーブ、あとドット・レッドをください。
店主: あいよ! 合計で1500カラー(円)だ。
客: 通貨単位まで色に染まってるのかよ……。
店主: おっと、おまけにこれを付けてやるよ。
(店主、真っ黒に熟れたアボカドを差し出す)
客: これは?
店主: 「ダーク・マター」だ。
客: 色ですらなくなってるじゃねーか!