『半透明彼氏は選ばれたい』

 ※この脚本は寝子との合作です。

【登場人物】2名(男性1・女性1)

花:同じ会社の星守に一目惚れ。こっそり副業している。

マヒロ:星守そっくりな男。半透明。

星守:星守真宙(ほしもりまひろ)。会社員。イケメン。(マヒロと兼役)

【ジャンル】ラブストーリー・コメディ

【上演時間】50分

【あらすじ】

 朝、目覚めると片思いの彼がいた。半透明で。
 この恋は予測不能――。

 ★後半の衝撃的な展開が演じて楽しいラブ&コメディ。

【本編】

 朝。

マヒロ:一日目。


マヒロ:花。起きて。一緒に朝ごはん食べよ。

花:んあ? ん?

マヒロ:グッモーニン、マイエンジェル。

花:えっ・・・え!?

マヒロ:まだ寝ぼけてる? あ、寝ぐせ、可愛い。

花:は? ほし、もり、くん?

マヒロ:ほしもり?

花:なんで星守くんが!?

マヒロ:星守って誰のこと? 僕はマヒロだよ。昨日のこと、覚えてないの?

花:え、うん。だから、星守真宙くん・・・だよね?

マヒロ:うん。僕はマヒロだよ。花のことがだーい好きなマヒロだよ。

花:昨日、どうしてたんだっけ・・・うっ、あいたたた。あったま痛い。昨日飲みに行ったんだっけ?

マヒロ:ホントに忘れちゃったの?

花:全然思い出せない。

マヒロ:ひどい!

花:あ、ああっ、ごごごめんなさい。

マヒロ:昨日、あんなに僕のこと「大好き」って言ってくれたのに!

花:ええっ、私そんなこと言っちゃったの!?

マヒロ:あんなに激しく、あんなことや、そんなことまで・・・。

花:あんなことや、そんなことまで!?

マヒロ:昨日の花、とっても可愛かったなぁ。

花:待って。あんなことやそんなことって何?

マヒロ:(耳元で)思い出せないなら、これから思い出させてあげようか。

花:はうっ・・・!

マヒロ:なーんてね。嘘なんだけどね。

花:ちかいちかいちかいちかい!

マヒロ:ごめん。実は僕も覚えてないんだ。

花:はへっ・・・?

マヒロ:ねえ、花。僕って誰なのかな?

花:え? あなたは、星守真宙くん・・・だよね?

マヒロ:自分の名前はマヒロだってわかってるんだけどね。それ以外はぼんやりしててよく覚えてないんだ。

花:記憶・・・喪失?

マヒロ:あ、でも、ひとつだけ確かなことがある。僕は花のことが大好きだってこと。

花:んんっ!? あ、えっと・・・その・・・。

マヒロ:とりあえず、花が大好きってことは間違いないから、あとはどうでもいいかなって。

花:いや、私の心臓がどうにもならないんですけど。

マヒロ:僕は、『花のことが大好きなマヒロ』。それでいい。花もそれでいいでしょ?

花:へ?

マヒロ:だから、抱きしめていい?

花:(混乱して)あ、うん。

マヒロ:(微笑)ぎゅううううう。

花:あれ? 頭パニックで気づかなかったけど、あなたの体、透けてる?

マヒロ:え、そうかな?

花:うん。半透明っていうか・・・。ホントに星守くんなんだよね?

マヒロ:星守じゃなくて僕はマヒロだって言っただろ。

花:ああああ! これは夢、もしくは片思いしすぎておかしくなった私が見てる幻か、もしくは妄想!? そうだよね、じゃなきゃ、星守くんがこんなところにいるわけないし。妄想なら、ずっと呼べなかった名前で呼ぶことも・・・。

マヒロ:(耳元で)僕は幻なんかじゃないよ。

花:ひぃ・・・!!!

マヒロ:(耳元で)ほら、僕の名前を呼んでみて。

花:はぁあああん・・・ま、マヒロ・・・くん。

マヒロ:花。もう一回。

花:ぐっ・・・マヒロ、くん。

マヒロ:照れてる花も可愛い。僕と花はこれからずーっと一緒だからね。

花:透けてはいるけど、ちゃんと触れるしあったかい。それに耳にかかる吐息にゾクゾクする。こんな近くにマヒロ君がいるなんて、もう何がなんだかわからない。

マヒロ:花?

花:はっ、今何時? はぁああ!? もう会社、行かなきゃ!

マヒロ:会社?

花:仕事だよ! マヒロ君は・・・体が透けてると大騒ぎになっちゃうし、とりあえず家にいて。

マヒロ:嫌だよ。僕も一緒に行く。

花:や、だめだよ。

マヒロ:じゃあ会社なんて行かなくていい。僕と一緒にいようよ。

花:いや、そんなこと言われても・・・。

花:あ、わかった。マヒロ君、オムライス好き?

マヒロ:オムライス? うん。大好き。

花:帰ってきたら、特製のオムライス作ってあげる。花スペシャルオムライスだよ。材料買って帰ってくるから、大人しく家で待っててくれる?

マヒロ:ホント!? 花の手料理?

花:そう。だから、ね?

マヒロ:うわぁ。楽しみ。・・・あ、でも、やっぱり離れたくないな。

花:えぇぇ。えっとじゃあ・・・。

花:はい、これ。私がいつも抱きしめながら寝てるペンペン!

マヒロ:このペンギンのぬいぐるみ、僕にくれるの?

花:365日、毎日抱きしめて寝てるから、もやは私みたいなもんよ。これ、貸してあげるから。だから・・・。

マヒロ:(匂いを嗅いで)花の匂いがする。

花:うぅ、ちょっと恥ずかしいぃ。

マヒロ:わかった。これを花だと思って我慢する。早く帰ってきてね。

花:うん。急いで準備しなきゃ。

 間。

マヒロ:朝ごはんは食べなくていいの?

花:朝はいつも時間なくて食べられないの。早く起きたりできないし。

マヒロ:じゃあ、明日からは僕が作ってあげるね。

花:え、ほんと?

マヒロ:実は僕も料理は得意なんだ。任せといて。

花:(興奮)んんんんっ! マヒロ君の手料理ぃ・・・!! ああ、やっば。ほんとに遅刻しちゃう!じゃあ、行ってくる。

マヒロ:あ、うん。行ってらっしゃい。早く帰って来てねー!

 夜。大きな買い物袋を抱えて花が帰ってくる。

花:(疲れた溜め息)ただいまぁ。

マヒロ:おかえりー! おかえりおかえりおかえりおかえりおかえりー! 花、遅かったじゃないか。こんな時間まで何やってたの!

花:あ、マヒロくん。ただいま。遅くなっちゃってごめんね。残業になっちゃって・・・。

マヒロ:花、疲れてる?

花:今日も戦ったわ。ほんと疲れた。

マヒロ:お仕事お疲れさま。

花:うん・・・。マヒロ君はさ、やっぱり星守くんじゃないんだよね?

マヒロ:うん。僕はマヒロだよ。

花:うん。そうだよね。今日、会社に行ったら、いつも通り星守くんが出社してた。

マヒロ:その星守って人、僕に似てるの?

花:うん。すっごく似てる。見た目も声も、全部。遠くから見てるだけで、話したことないから中身はわかんないんだけど・・・。

マヒロ:へぇぇ、そうなんだ。

花:でもね、今日星守くんについ話しかけちゃったんだ。「どうしてここにいるの?」って。普段なら絶対にそんなことしないのに、マヒロ君のことがあったからつい、ね。そしたら・・・。

マヒロ:そしたら?

花:なんか訝(いぶか)しげにこっちを見ただけで、返事もしてくれなかった。そりゃ、これまで話したこともなかったんだもん。絶対、変な女だと思われちゃった。

マヒロ:花は、それがショックなの?

花:そりゃまぁ、入社してから一目惚れして、ずっと好きだったんだよ。初めての会話がこれかーって思ったら、なんか悲しくなってきちゃった。

マヒロ:花には僕がいるよ。

花:え?

マヒロ:僕は星守と同じ顔なんだろ。だったら僕でいいじゃん。

花:いや、でも・・・。

マヒロ:そんな奴のこと忘れて、僕のこと好きになってよ。

花:うーん・・・。

マヒロ:花は僕のこと嫌い?

花:や、嫌いとかじゃないよ。ただ、私は星守くんが・・・。

マヒロ:あああ、そんなことよりも! オムライス食べるんだろ。一緒に作ろうよ。

花:あ、忘れてた。そっか、そうだね。お腹すいたもんね。ごはん、作ろっか。

マヒロ:教えてよ。花のスペシャルオムライス。

花:おー? 聞いちゃうー?

マヒロ:教えて教えて。

花:私のオムライスはね、チキンライスじゃなくて、豚キムチチャーハンなんだよ。スタミナ満点。

マヒロ:うわぁ、楽しみ。ほらほら、まずは着替えて。

花:あ、うん。じゃあ着替えてくるからキッチンで待ってて。

マヒロ:あ、おかえりハグ、忘れてた。(抱きしめて)ぎゅううううう。

花:ひゃっ!? ちょっちょちょちょっと! 距離がちかいいいいいーーー!!!

マヒロ:ああぁ。本物の花の匂いだー。

花:ちょっ・・・匂いかがないでぇえええ!

マヒロ:はあ、幸せ。あ、花のお腹が鳴ってる。

花:うぅ、はずかしい。

マヒロ:(笑)ほら、早く作ろ。

花:うん。

 間。

マヒロ:ごちそうさまでした。ホントに美味しかった。

花:ふふっ、喜んでくれてよかった。(時計を見て)あ・・・もうこんな時間か。お風呂入って早く寝なきゃ。

マヒロ:今日は一緒に寝ようね。

花:それは無理。

マヒロ:えええええ、なんでえええ!

花:却下!

マヒロ:この部屋、ベッド一つしかないよ。

花:マヒロ君はそっちのソファー使って。

マヒロ:やだ。花と一緒に寝る。花を抱き枕にして寝る。

花:人を抱き枕にするんじゃない。

マヒロ:じゃあ腕枕してあげる。僕の腕、寝心地いいよ。仕事の疲れ、吹っ飛ぶよ。

花:あ、そう言えば、私疲れてたんだった。なんか、マヒロ君と話してたら、そんなこと忘れちゃってた。

マヒロ:(笑)疲れてる花より、笑ってる花のほうが好きだな。

花:うん。ありがとう。

マヒロ:花、可愛い。好き。大好き。僕は花を笑顔にするために生まれたのかもしれない。

花:・・・でも、マヒロ君はソファーだからね。

マヒロ:くぅぅ、ダメかぁぁぁ。もうちょっと押せば、気持ち変わるかと思ったのに。

花:残念でした(笑)

マヒロ:わかった。今日はソファーで寝るよ。だから早くお風呂入っておいで。

花:はーい。

 朝。

マヒロ:二日目。


花:(寝息)

マヒロ:よく寝てるなぁ。こっそりベッドに入っちゃお。よいしょっと。あああぁ。好き。このまま時が止まっちゃえばいいのになぁ。ずーっと見てられる。

花:んー・・・んぇ・・・マヒロくん? おはよ、おおおおおおお??

マヒロ:うわっ!

花:な、なんで隣に寝てるの!?

マヒロ:そこに花が寝てたから。

花:答えになってない。

マヒロ:いや起こそうと思ったんだよ。でもぐっすり寝てるから、もう少し寝かせてあげようかなって思って。で、寝顔をずーっとずーっと見てたら、我慢できなくなっちゃって。つい・・・。あ、でも何もしてないよ。まだ。

花:まだ・・・まだって!?

マヒロ:あと3秒でキスしてた。

花:!!!!(言葉にならない)

マヒロ:あ、唇じゃないよ。ほっぺにだからね。僕、花の柔らかいほっぺが大好きなんだ。

花:そういう問題じゃない! まったく、油断も隙もあったもんじゃないんだから。

マヒロ:もう朝ごはんできてるよ。それとも、もうちょっとベッドでイチャイチャする?

花:イチャイチャなんてしてません。って、朝ごはん、ほんとに作ってくれたの?

マヒロ:(微笑)約束しただろ。ほら、一緒に食べよ。

花:うん。何作ったの?

マヒロ:あったかご飯とお味噌汁。それと、昨日買ってきてくれた揚げ出し豆腐。

花:へぇ。意外にちゃんとしてる。

マヒロ:いつも食べてないなら、控えめでいいかなって。明日のリクエストあったら教えてね。

花:ん、いただきます。

マヒロ:はーい。召し上がれ。

花:(食べる)んー、おいしい。やっぱり日本人はご飯と味噌汁だよねぇ。しみるぅ。

マヒロ:よかった。一緒に朝ごはん食べるって、なんか幸せだよね。

花:うん、そうだね。あ、お味噌汁にジャガイモ入ってる。ジャガイモのお味噌汁大好きなんだぁ。

マヒロ:(微笑)花、幸せそうな顔してる。

花:そうかな? こんなにゆっくり朝ごはん食べるの久しぶりだから。って、はっ!? ちょっとまって、今何時!?

マヒロ:え?

花:仕事! 早く着替えて準備しないと、遅刻する!(急いで食べる)

マヒロ:ゆっくり食べなよ、もう。

花:(少しせき込みながらもご飯を食べ終わる)ごちそうさま。おいしかった、ありがと。

マヒロ:どういたしまして。

花:急いで準備しなきゃ。ああああああ、髪の毛ハネてる!

マヒロ:寝ぐせ可愛いからそのままでいいよ。

花:ダメだよー! あああ、アイロンかけたシャツどこだっけ!?

マヒロ:ちょっと待って。はい、どうぞ。

花:ありがと。あ、今日の仕事で使う書類、確認したまま机に出しっぱなしだった。

マヒロ:ちゃんとバッグに入れておいたから。

花:ええ、ほんとに? 気が利くー!

マヒロ:心配だなぁ。僕も一緒に行こうか?

花:(悩む)んんんん・・・大丈夫。仕事にはついてこないで。ややこしくなるから。

マヒロ:そっか。・・・やっぱり寂しいなぁ。

花:そんな子犬みたいな顔しないでよぉ。あれ? マヒロ君、なんか濃くなった?

マヒロ:濃くなったって、何が?

花:体がね。昨日はもっと薄かったような・・・。あ、いや何でもない。あああああ、もう行かなきゃ!忘れ物は・・・よし、大丈夫。

マヒロ:忘れてるよ。

花:ん?

マヒロ:行ってきますのハグ。ほら、おいで。

花:(マヒロを無視して)いってきまーす!

マヒロ:あああっ、もう! いってらっしゃい。早く帰ってきてね。

花:はーい!

 夜

マヒロ:おっかえりーーーーー!!! おかえりおかえりおかえりおかえりおかえりー!

花:た、ただいまあ。相変わらずすごい勢いでくるなぁ。

マヒロ:お仕事お疲れ様。

花:うん。今日も戦ってきたよぉ。

マヒロ:(抱きついて)おかえりのハグ、ぎゅうううううううう!

花:ちょっ、あーもう。

マヒロ:今日の僕は偉いんだよ。

花:へ?

マヒロ:お部屋を掃除して、晩御飯も作って。準備万端で花を待ってたんだ。

花:えぇ!? お掃除までしてくれたの?

マヒロ:ベッドメイクも完璧。もちろん枕は二つ並べて。いつでも準備OK!

花:うわぁあ、部屋中ピッカピカだ。枕もちゃんと二つ・・・ん? 二つ?

マヒロ:うん♪

花:いつでも準備OKって・・・。

マヒロ:(耳元で)今夜は寝かさないからね。

花:ふぇっ!? ちょ、やめてよ、それどころじゃないんだって!

マヒロ:どうしたの?

花:なんか今日会社でね。

マヒロ:うん。

花:星守くんが話しかけてきたの。今度は向こうから。

マヒロ:(ムッとして)また星守の話?

花:私びっくりしちゃっておろおろしてたんだけど、そしたら真剣な顔で「なにかおかしなことに関わってるんじゃないか?」って。

マヒロ:なにそれ?

花:わかんない。一体どういう意味だったんだろう。

マヒロ:さあね。

花:おかしなこと・・・。うん。確かになくはないんだけど・・・。さすがに、言えるわけないよね。こんなこと。

マヒロ:星守の話なんかどうでもいいよ。星守じゃなくて僕を見てって言っただろ。

花:それになんか、星守くん具合悪そうだったんだよね。大丈夫かな。

マヒロ:具合悪そうだったんだ。へぇぇ、そうなんだ。おかしいのはそいつの頭なんじゃない? 心配することないよ。花は何も気にしなくていい。

花:いや、でも・・・。

マヒロ:おかしなことなんて何もない。花のことが大好きな僕がここにいる。花は僕だけを見ていればいいんだよ。

花:・・・うん。

マヒロ:さあ、ご飯にしよう。

花:あ、うん。今日は何作ったの?

マヒロ:アクアパッツァ作ったんだ。僕の得意料理。

花:へぇぇ、おっしゃれ! あ、イタリアンなら貰い物だけどいいワインがあるんだ。マヒロ君、飲めるのかな?

マヒロ:飲めるよ。花はいいの? 明日も仕事なのに。

花:あー、そうだなぁ。確かに。

マヒロ:でも、一杯だけなら大丈夫だよね。乾杯しよっか。

花:そうだね。うん、せっかくだしね。

マヒロ:決まり。グラスも準備してそっち持ってくね。

花:はーい。

 間

マヒロ:そう言えば、今日さ。

花:うん。

マヒロ:なんとなくテレビ観てたんだけど、ドラマやってて。なんてタイトルだったかな。主人公が双子の弟でね。

花:うん。

マヒロ:好きな子がいるんだけど、その子は兄のことが好きで、主人公の弟は優秀な兄のことが大嫌いなわけ。

花:ほう・・・それで?

マヒロ:で、好きな子が兄をデートに誘う。弟の気持ちに薄々感づいている兄は弟に「代わりに行け」って言う。

花:えー?

マヒロ:弟は兄のフリをして、好きな子とデートを楽しむんだ。いい感じの雰囲気になって、そして弟は告白する。「俺は兄じゃない。弟のほうだ。ずっと前から好きだった」って。

花:わお・・・。

マヒロ:そして弟はフラれてしまう。

花:あらら・・・。

マヒロ:その後、女の子は兄に告白するんだけど、「つきあえない」って言われちゃう。泣いて悲しむ女の子に、弟はもう一度告白するんだ。「俺がいるだろ」って。

花:うん。

マヒロ:それで、どうなったと思う?

花:えー、わかんない。どうなったの?

マヒロ:またフラれちゃうんだ。兄の代わりにはならないからって。

花:そっか。なんか報われないね。

マヒロ:それで弟は、兄に負けないように男を磨く。いつか好きな子に振り向いてもらえるように。弟が頑張ってるシーンでエンディング。そんなお話だった。

花:なんかうまくいかないもんだね。

マヒロ:それ観てたらさ。思ったんだよね。

花:ん?

マヒロ:女の子はさ、最初から弟を選べばよかったんだよ。だってさ。「自分が好きな人」より、「自分を好きな人」と一緒にいるほうが幸せになれるって思わない?

花:んー、どうだろう。でも、好きな気持ちを捨てられなかったら、空しくなっちゃうんじゃないかな。それに弟だって辛いと思うんだ。たとえ今はよくても、いつかは耐えられなくなっちゃうんじゃない?

マヒロ:そうかな? いつかは自分のほうを好きになってくれるって頑張ると思うけど。女の子のほうも、ずっと弟と一緒にいたら気持ちだって変わると思う。

花:そういうもん?

マヒロ:自分のことを好きじゃない人といて苦しくなるより、自分を好きでいてくれる人といたほうが安心できるし、心が満たされると思うんだ。

花:まぁ・・・うん。それはある、かも。

マヒロ:あっ。今、僕のこと考えてたでしょ?

花:へっ!? ち、ちが、そんなんじゃないんもん。

マヒロ:そういう顔してた。

花:どんな顔よ。

マヒロ:(微笑)僕のことが大好きって顔。

花:ばっ、ばーーーか! そんなわけないでしょ!

マヒロ:花、可愛い。好き。大好きだよ。

花:や、ちょっと・・・なんでいきなりっ・・・。

マヒロ:そう思ったから。いつも思ってるんだけど。たまに言いたくなっちゃうんだ。

花:うぅ・・・。

マヒロ:(微笑)大丈夫? 顔赤いよ?

花:ちょ、こっち見ないで。

マヒロ:見るよ。ずーっと花だけを見てる。

花:なんか、ちょっと酔いが回ってきたみたい。

マヒロ:そっか。片付けは僕がやっておくから、お風呂入りなよ。

花:そ、そうする。お風呂行ってくるね。

マヒロ:うん。じゃあ、僕はベッドに入って待ってるね。

花:また、そんなことばっかり言って。

マヒロ:冗談だよ。仕事で疲れてる花の邪魔したくないから。大人しくソファーで寝る。

花:え? あ、うん・・・。

マヒロ:あれ? 残念だった?

花:別にそんなことないもん!

マヒロ:そう? あ、そうだ。明日の朝ごはんは何がいい?

花:あ、えっと・・・なんか、体力つくやつ。

マヒロ:了解。任せといて。

花:うん。ありがと。


花:(呟く)・・・私、残念そうな顔、してた?

 朝

マヒロ:三日目。


花:(寝息を立てている)・・・ん?

マヒロ:あ、おはよ。

花:(寝ぼけて)んぅぅ・・。

マヒロ:あぁっ、寝ぼけてる花、可愛い。

花:マヒロ君・・・おはよ・・・。

マヒロ:よく眠れた?

花:ねぇ、マヒロ君、なんでベッドにいるの?

マヒロ:花がね。寝言で僕の名前を呼んでたんだ。

花:え、呼んでた?

マヒロ:だから、そばにいてほしいのかなって思って。

花:そうなんだ・・・。

マヒロ:うん。そうだよ。ほんとだよ。

花:そっか。あったかい・・・。

マヒロ:あーー、ちょっと待って。なにこれ、可愛すぎるんだけど!

花:あれ? マヒロ君、また濃くなった?

マヒロ:え?

花:もうほとんど透明じゃなくなってる。

マヒロ:そうかな?

花:(嬉しい)マヒロ君、ぎゅう・・・。

マヒロ:花・・・。

花:なに?

マヒロ:花が僕のことを好きになればなるほど、僕という存在は確定していくんだよ。

花:え、どういうこと?

マヒロ:なんでもない。

花:へんなのー。

マヒロ:花の中で僕の存在が大きくなってるのが嬉しいってこと。

花:ねぇ、お腹すいた。

マヒロ:おっけぃ。朝ごはんできてるよ。今、準備するね。

花:やった。今日は何かなぁー?

マヒロ:ポテトサラダピラフ。美味しいよ。朝食にピッタリだから。

花:へー、初めてかも。おいしそう。

マヒロ:で、食べた後はどうする? 会社休んでイチャイチャする?

花:えー? 仕事、行かなきゃ。

マヒロ:僕と仕事とどっちが大事なの?

花:ホントにそんなセリフ言う人いるんだ。

マヒロ:ちょ、感心しないで答えてよ。

花:頑張って働きますよ。マヒロ君との生活のために。

マヒロ:わかった。変なこと聞いてごめんね。

花:(笑)今日は聞き分けがいいね。

マヒロ:うん。花が僕との生活を大事に思ってくれてるのが嬉しいから。これから毎日、僕がご飯作ってあげる。だから、ずーっと一緒にいようね。

花:・・・うん。

 間。

花:忘れ物はなしっと・・・。

マヒロ:ほら、また忘れてる。

花:え? 何も忘れてないよ。

マヒロ:行ってきますのハグ。ほら、おいで。

花:あ。(微笑む)・・・うん。

マヒロ:(抱きしめて)ぎゅうううう。

花:ちょ、マヒロ君、力強すぎ。苦しいよ。

マヒロ:(微笑)お仕事頑張ってね。いってらっしゃい。

花:うん。いってきます!

マヒロ:早く帰ってきてね。

花:がんばる!

 夜。


花:(息を切らして)はぁ、はぁ、はぁ・・・。ただいま、マヒロ君・・・。

マヒロ:おかえり!

花:(マヒロを強く抱きしめる)マヒロ君!

マヒロ:うわわわ。いきなり抱きついてどうしたの? 僕に会えなくて寂しかった?

花:星守くんが・・・星守くんが急に私のこと・・・。

マヒロ:星守?

花:「お前の仕業なのか」って押さえつけられて、首絞められた。わけわかんないよ。

マヒロ:えっ、どういうこと?

花:わかんない。急に襲われて、「助けて」って叫んだら、星守くんが苦しみだして。だからその隙に逃げてきたの。私、星守くんに嫌われちゃったのかな。

マヒロ:許せない。僕の花になんてことを。

花:でも、私にはマヒロ君がいる。

マヒロ:花・・・。

花:だから、平気。大丈夫。

マヒロ:そうだよ。僕がいる。もう星守のことなんか考えるな。

花:ずっと私と一緒にいてくれるよね?

マヒロ:当たり前だろ。僕はずっと花のそばにいる。だから星守のことなんか忘れてしまえ。

花:うん。

マヒロ:ねえ、花・・・。

花:ん?

マヒロ:もしも・・・。

花:うん。

マヒロ:もしも、僕と星守のどちらかを選ばなきゃいけなくなった時、花はどっちを選ぶ? 僕のことを選んでくれる?

花:えっ、それってどういう・・・。

マヒロ:選んでくれるよね?

花:私は・・・。

星守:(窓ガラスを割って突入)バリーン!

花:きゃっ! 窓ガラスが割れた!

星守:そこまでだ!!!

花:え、星守くん!? どうして・・・。

星守:(苦しい)やっぱりそういうことか。

花:何が?

星守:そいつから離れろ!

マヒロ:おまえは・・・星守!

花:え!? なに!?

星守:こいつは人間じゃない。恋心を餌にして人を呪い殺す人形だ。

花:人形?

マヒロ:あーあ。バレちゃった。

花:マヒロ君?

マヒロ:もう少しで僕が本物の星守になれたのに。

花:どういうこと?

マヒロ:星守の言うとおりだよ。僕はね、こいつを呪い殺すために生まれたんだ。花が僕を好きになればなるほど星守は弱っていく。花が僕を愛してくれた瞬間に星守は死んで、僕が星守になる。僕はそういう存在なんだ。

花:そんな・・・。最近、星守くんの具合が悪そうだったのは私のせいなの?

マヒロ:花、愛してる。花は星守よりも僕を選んでくれるよね?

星守:やめろ! (殴る)バキィッ!

マヒロ:(殴られて)ぐあっ!

花:ああっ、マヒロ君!!!

マヒロ:僕を選ぶって言ってくれたら、僕はずっと君のそばにいる。こいつと違って、僕は君を愛してるんだ。

花:私・・・。

星守:うおおおお! (殴る)バキィッ!

マヒロ:(殴られて)ぐはぁっ!

星守:だまされるな! こいつの言葉に耳を傾けるんじゃない!

花:やめてえええええ!!

マヒロ:ぐ、うぅぅ。

花:マヒロ君、大丈夫!?

マヒロ:(弱々しく)花、僕を選んで・・・。

花:しっかりして! マヒロ君!

マヒロ:「僕を選ぶ」って・・・言うんだ・・・うぅぅ。(気絶)

花:マヒロ君!

星守:ふん。気を失ったか。今、とどめをさしてやる。

花:やめて!

星守:君は利用されただけだ。それがどうしてわからない!

花:マヒロ君にひどいことしないで!

星守:そこから離れろ!

花:いや! 離れない!

星守:こいつは呪いの人形だ! こいつの目的は俺を殺すことなんだ! もう一度だけ言う。そいつから離れろ。

花:いや!

星守:・・・だったら君もそいつの仲間とみなして処分することになるが、それでもいいのか。

花:処分・・・?

星守:そうだ。星守真宙は仮の姿。本当の俺は・・・。

星守:変身! (ジャンプ)とうっ!

星守:(カッコいいBGM)ターン! タララタータータタンタタンタタン!

星守:光り輝くこの星に
   悪が栄える事は無い
   この世が闇に染まろうと
   二度と明けない夜はない
   闇夜に輝く星一つ
   シャイン・ユニバース! ここに見参!

星守:(効果音)シャキーーン!

花:星守くん、あなたが!?

星守:そうだ。俺は地球を守るヒーロー、シャイン・ユニバースだ!

花:・・・あなたがシャイン・ユニバースだったなんて。

星守:わかったら、そこをどけ! こいつは秘密結社ネオガーデンに作られた呪いの人形なんだ!

花:ふっ、ふふふふ・・・。

星守:何がおかしい?

花:あなたがシャイン・ユニバースだとわかってしまったからには、私も打ち明けなければいけないわね・・・。

星守:なにっ!?

花:我こそは、秘密結社ネオガーデン幹部、デスフラワー。

星守:えっ、嘘。マジで!?

花:それはこっちのセリフよ!

星守:マジで? ホントにデスフラワー?

花:そうだって言ってるでしょ。

星守:だって、いつもは顔が半分仮面で隠れてるし、服も違うだろ! こんな地味な服じゃなくて、もっとこう・・・。

花:あのコスチュームは指定なのよ! レンタルだし・・・。

星守:証拠を見せろ!

花:はぁ? 証拠?

星守:お前が本物のデスフラワーであるという証拠だ! ここで変身してみせろ!

花:えぇぇ・・・。

星守:いつもみたいに、胸元の開いたセクシードレスで、その美脚を俺に見せつけてみろ!

花:あれ恥ずかしいんですよ!

星守:いいからやれ! 早く!

花:んもう! どうにでもなれ・・・!

花:クルリと回転して取り出したマントをバサァァッ!
  闇の力を受けし花々との盟約により深淵より参らん。
  我こそ、ネオガーデン幹部、デスフラワー!

花:こ、これで信じる気になった?

星守:デ、デスフラワー様・・・、いや、なんでもない!

花:ん?

星守:まさか本当に貴様がデスフラワーだったとはな! 同じ会社にいるとは思わなかった。

花:こっちこそ。まさかシャイン・ユニバースが会社員(カイ・シャイン)だったなんて。

星守:ダジャレみたいに言うな! デスフラワー、俺を呪い殺そうとしていたのは作戦だったのか。

花:あ、それは全然知らない。

星守:嘘をつけ!

花:ホントですって。呪いの人形のことなんて聞かされてなかったし。たぶん、人形を貰った時の記憶を消されたんだと思う。

星守:そんなこと信じられるか。

花:信じてよ。秘密結社の中でも派閥があるのよ! おそらくダークブロッサムが私のことを・・・。くっ、なんたる失態!

星守:じゃあ、本当に知らなかったのか。

花:ええ。ダークブロッサムは、星守=(イコール)シャイン・ユニバースだって突き止めてたってことか。やるわね。

星守:状況を整理していいか。

花:ええ。

星守:つまり、君は会社で働きながら、秘密結社ネオガーデンで幹部をやってるってことか?

花:ええ。会社の給料だけじゃやっていけないから、副業で応募した会社がたまたま秘密結社ネオガーデンだったの。

星守:うちの会社、副業は禁止だろ!

花:あなたがそれを言う!?

星守:俺はヒーローが本職だ。君とは違う!

花:職業差別よ。秘密結社も立派な仕事。夜の仕事だからってバカにしないで。

星守:そりゃ確かに夜の仕事だろうけどひとくくりにするな。どうして秘密結社なんかで副業してるんだ。

花:顔隠してるからバレないと思って。

星守:ダメだろ。秘密結社ネオガーデンだよ。しかも幹部。どんな手柄を立てたら幹部になれるんだよ。君、うちの会社じゃ、ただの一般社員じゃなかったか?

花:いやー、なんかこっちの才能あったみたいで、あれよあれよというまに幹部に。えへへ。

星守:どんな才能だよ。

花:本当は会社やめてこっちに専念しようかとも思ったんだけど、でもそしたら星守くんに会えなくなっちゃうし・・・。

星守:俺に?

花:あっ、いやそれは・・・。

星守:そうだよな。その人形が俺にそっくりってことは・・・。

花:や、ちょっと、これはその!

星守:俺のことを好きってことだよな・・・。そうか。デスフラワーが、俺のことを・・・。

花:でも、今はマヒロ君がいる。

星守:えっ?

花:マヒロ君を傷つける奴は、私が許さない! それにあなたのせいで毎晩残業続きなのよ!

星守:うるさい! こっちも迷惑してるんだ! 行くぞ!

星守:スターダスト・バーニング・エクスクラメーション!
   (効果音)ドゴーン!

花:ふっ、そんなものか!

星守:これはほんの挨拶代わりだ。続けていくぞ! スターライト・エクスプレス・プラズマ!!
   (効果音)ドガシャアアア! バリバリバリバリ!

花:くぅっ・・・やるわね。

星守:その人形を庇っていてはそこから動くこともできまい。

花:くそっ・・・。

星守:そんなに俺そっくりの人形が大切か。

花:それは・・・。

星守:答えろ、デスフラワー!

花:そうよ! マヒロ君は私を大好きだって言ってくれる! 私を必要としてくれている!

星守:なんだと・・・。

花:星守くんは私のことなんて、なんとも思ってないでしょ!

星守:くっ! 俺とお前は敵同士! 俺はこの星を守る使命があるんだ! いくらデスフラワーがめっちゃ好みだとしても、倒さなければいけない敵なんだ! くらえ! ネビュラ・ローリング・クラーーッシュ!!!
   (効果音)ズガゴオオオオオオン!!!

花:ちょおっと待ってええ!? 今、なんて言いました???

星守:ぐっ、これも防ぐのか! こうなったら一撃必殺の最終奥義!

花:くぅっ・・・!

星守:これで終わりだ、マイスイートハート! ギャラクティック・エターナル・インフェルノ!!!
   (効果音)ドドドドオオオォォォン!!!

花:ぐはああああああ!!!

星守:やったか!?

花:かはっ・・・。

星守:まだ倒れないか。ギャラクティック・エターナル・インフェルノをまともにくらって立っていたのはお前が初めてだ。

花:それよりも、さっき私のことなんて言いました?

星守:どうしてだ。どうしていつもお前は俺の技を喰らうばかりで反撃してこない。なんでなんだ!

花:聞いてないし。

星守:もう反撃する力も残ってないのか。そうではないだろう。お前の目はまだ死んでいない。

花:そこまで言うなら見せてやる。あんたのせいで私の家がメチャクチャよ! 弁償しなさい! ローズ・エレメント・アロー!!!
  (効果音)ズキューーーン!

星守:ぬはあああああああ!! これを待っていたああああああ!! いい! いいぞ、デスフラワー!!もっと来い! もっとだ!

花:モーニング・グローリー・フォールド!!
(効果音)ドガドガドガーン!!

星守:うほおおおおおおおお!! たまんねええええええ!! (興奮)はぁ、はぁ・・・。

花:(疲労)はぁ、はぁ・・・

星守:やるな、デスフラワー!

花:ダメだ。ちっとも効いてない。いや、むしろ元気になってる気がする。

星守:やっぱりお前は最高だ!

花:私ではシャイン・ユニバースを倒せない。マヒロ君を守れない。ねぇ、起きてよ、マヒロ君。ブラック・シャイン・ユニバースに変身して、私と一緒にアイツを倒して。

星守:ブラック社員みたいに言うな!そいつはただの人形だと言っているだろう!

花:人形でもかまわない。私はマヒロ君にそばにいてほしい。(思い出して)そうだ。マヒロ君はさっき、なんて言ってた?

マヒロ:(回想)「僕を選ぶ」って・・・言うんだ・・・言うんだ・・・言うんだ。(セルフエコー)

花:まだ・・・終わってない! 花:シャイン・ユニバース!

星守:どうした。命乞いか。

花:あなたを倒す方法を、マヒロ君が教えてくれた。

星守:なんだと?

花:あなたを呪い殺す最後の言葉。『私はマヒロ君を選ぶ』

星守:(苦悶)ぐっ、ぐああああああ!!! ああああ、だああああ、あぐあっ、ぐううううっっ!

花:さよなら、シャイン・ユニバース。私は、マヒロ君がいれば、他に何もいらない。

星守:うあああ、あああああ!!! ぐがあああ、がはぁっ! ぐっ・・・うう・・・。(大興奮して荒い息を繰り返す)どうやら呪いで俺を殺すことは出来ないようだな。

花:どうして・・・。

星守:人形が意識を失くしているからな。俺を殺すほどの呪いを生み出せなかったんだろうさ。

花:マヒロ君・・・。

星守:デスフラワー、お前は勘違いをしている。

花:勘違い?

星守:俺はお前に惚れている。はっきり言って一目ぼれだった。隠されて半分しか見えない顔も、セクシーな胸元も、そのプリっとしたお尻も、スラッと伸びる美脚もドストライクだ。なによりもその声!その声が俺の耳を喜ばせるんだ! ようするに、俺もお前が大好きだー!

花:はへっ!? それは、つまり、両想い・・・?

星守:こんなに近くに愛しのデスフラワーがいたなんて。声で気づかなかった俺はなんて馬鹿なんだ。デスフラワー・・・。あ、すまない。君の名前は?

花:あ、花です。

星守:花・・・素敵な名前だ。

花:(照れる)やだぁ・・・。

星守:花が好きだ。俺とつきあってくれ。

花:え、でも! あなたはヒーローで、私は悪の幹部・・・。

星守:シャイン・ユニバースとデスフラワーじゃない。星守真宙は花のことが好きなんだ。

花:はぅ!!! 星守君・・・。

星守:(抱きしめる)花・・・。

花:星守君、嬉しい・・・。

マヒロ:う、ううぅ・・・あ、あれ? 僕はどうして・・・。あ、そうか。星守に殴られて気を失っていたのか・・・。って、ええええええええ! これ、どういうこと!? なんで花と星守が抱き合ってるのおおお!?

花:星守くん、大好き。

マヒロ:いや、ちょっと待ってよ、花。おかしくない? 星守よりも僕を選ぶ流れじゃなかったの!? 

花:あ、選んだよ。さっきはマヒロ君を選んだんだけど、それはもういいの。

マヒロ:もういいって、どういうこと!?

花:だって、本物の星守くんが私のこと好きだって言ってくれたんだよ。しかも一目惚れだなんて!

マヒロ:えええええええ! じゃあ僕は? ずっと一緒だって約束したのに。僕だけいればいいって言ってくれたのに。全部嘘だったの? そんなのひどいよ。僕はもう必要ないの?

花:うん。もういらない。

マヒロ:きっぱりぃぃぃぃぃ!

花:だって、マヒロ君、人形なんでしょう?

マヒロ:そうだけど。

花:さっきはそれでもいいって思ったんだけど、やっぱり人形じゃあ、代わりにはならない。

マヒロ:ああっ! 体が消える! 僕の存在が消えてしまう!嫌だ。僕は花を愛してるんだ。

花:マヒロ君、今までありがとう。あなたのことは忘れない。星守くんと幸せになるね。

マヒロ:花あああぁぁぁっ!

花:じゃあね。

マヒロ:あああ・・・ああ・・・・ぁ・・・。(消える)

星守:消えたか。

花:消えちゃったね。

星守:ふぅ。体が軽い。やっと呪いが解けたようだ。

花:大丈夫? ごめんなさい。私のせいで。

星守:いいんだ。気にしないでくれ。むしろご褒美だ。

花:え?

星守:それにあの人形のおかげでデスフラ・・・いや、花の気持ちを知ることができたんだ。

花:うん。

星守:変身解除。(効果音)シュイイイン。・・・ふぅ。

花:私も変身解除しよっと。

星守:あっ、ちょっと待て!

花:え?

星守:もう少し、その姿のままでいてくれないか。

花:え、いやですよ。だってほんとすっごい恥ずかしいんですよ。無駄に露出度高いし!

星守:お願いだ。俺の夢だったんだ。

花:は? 夢?

星守:シャイン・ユニバースとしてはデスフラワーと戦わなくてはならない。でも、星守真宙としての俺は、ずっと前からデスフラワーに罵られたかった。殴られて、蹴られるのを想像して興奮していたんだ。その夢がついに叶う。

花:はいーーーー!?

星守:さあ! 花、俺を殴ってくれ! そのハイヒールで俺を踏みつけてくれ! そして罵詈雑言を俺に浴びせるんだ。この豚野郎と罵ってくれ!頼む!

花:完全なドМじゃない!!!

星守:さあ、早く!!

花:もしかして私・・・選択まちがえちゃった!? 嘘だと言ってーーーーー!!!

星守:カモン、花! いや、デスフラワー様あああああ!!!

花:いやあぁああああああああああ!!!


おしまい。