平穏。
とりたてて、することもない。
陽だまりの中に、村が眠ってる。
思い出、その情景の断片が意味もなく、
老人の脳裏を過っていく。
流れゆく記憶イメージの断片、どうでもいいことなのに、
結構仕込んでいたのかもなぁ・・・。
老い先短い老人を弄ぶ、この記憶映像の断片に酔い痴れていると、
苦楽を共にした級友から電話が掛かってきた。
「つもらんのォ~」
思い通りにならない老境、そのぼやきである。
お互いが体験した思い出の共通項を引き出して、
記憶の七並べでもしてみようかと思ったが、根暗。
老人のくせして、老人が苦手。
夏休み、地元中学生の親御さんが亡くなられて、
学校から駆り出されて参列したお葬式。
木漏れ日の葬列を掠め搔き乱して、山路に消えたパンツ一丁、少年二人。
一人はよく知っている意中、小6の下級生。
もう一人、夏休み里帰り中のその従兄とか。元々は地元の子で、
小学入学式身体検査や予防接種を一緒に受けた同学年だと、後で知った。
木漏れ日の中を駆け抜ける裸少年の躍動感。
風物詩の中の一服の画布、
死を悼む。
たったそれだけの淡い接点、その映像の躍動感。
喪に服す。
それが少年なりの惜別。
それが少年期との惜別。
それが高校生の時に観た、井上靖の自伝小説、
幻の少年名作映画『しろばんば』と重なった。
