良く仕組まれた騙し合い | 10go9

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近年、居候という言葉を、あまり聞かなくなった。

もう家族にそれだけのゆとりがなくなったのだろう。

 

親父は幼少期に親を亡くして、両親の顔をよく覚えていない。

すぐ本家に引き取られて、伯父夫婦の元で育っている。

伯父夫婦にも二男二女がいて、いわば幼い居候である。

 

子供ながらにも、食い扶持を意識したのかもしれない。

その成育史が親父に陰を落とした。

たぶん幼少期に、その反抗の芽を摘み取られてしまったのだろう。何をやっても、頼りなげで弱々しく見えた。

兵隊検査にも落ちている。

従兄たちが出兵し、男手の出払った田で、

ただ、親父が黙々と働いている。

何かに取り憑かれたように、また食い扶持でも返すかのように、

ただ、黙々と働いている。

 

やがて戦争が終わり、戦場から従兄も帰ってきて、

親父は伯父から改めて分家してもらい、

一戸を構えて、嫁取りをする。

伯父夫婦もその辺は義理堅かったようである。

でもそれは親父の離農を意味した。

その辺は親父は心得ていたようで、また手先も器用で、

地場産業の釣り針製造職人として喰っていくだけの技術を習得し、農閑期には農業外収入と青写真は出来上がっていたようである。

 

そして親父は隣近所から嫁取りをして、結婚。

ところが中々子供が出来ない。

そこですぐ動いたと思われるのが本家の伯母。

そして養子としてもらわれて、この家に入ったのが自分。

自分は本家の伯父伯母夫婦の長女の嫁ぎ先の五男。

つまり伯父伯母夫婦の孫。

親父はこの時、どんな気持ちでこの養子を迎え入れたのか、

何も語っていないし、何の記録も残していない。

 

もしかして、迷惑だったかもしれない。(笑)

だけど幼児だった自分だって、何の責任もない。

養父母を実親と信じて何の疑いもなく成人しているのだから。(笑)