生徒会室の牢名主 | 10go9

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このオンボロ高校、朽ちる寸前。

なのに歴史は浅い。

そもそも元東条中学木造校舎、その空き教室を間借りして、

小野工業、定時制(夜間部)東条分校とし、

元々向学心に燃え、地域で働く勤労青年の受け皿となり、

戦後教育沿革の気運に乗じて開校。

 

校区も広く、すぐ新しい仲間が出来た。

学校の変遷、その事情に多少明るい東条中学卒の新入生が、

「一寸、来い!」

と言って、スプリングする廊下を端まで歩き、衝立とカーテンで仕切ってあるドン詰まりスペースに突入。

「連れてきた!」

「おお、入れ!」

入ってみると、揮発性の異臭が立ち込め、まるで元締めか牢名主風情の男が鉄筆を握り、一心不乱にガリ切りをしている最中だった。眼光鋭く睨まれた。

「こいつは、駄目だ!」

なおも作業を続行しながら、

「まぁ、そこらにある本でも読んでいけ!」

本と言っても、手作りの小冊子が数冊。

「今、読むンですか?」

「貸してやる! その代わり絶対に返すンだぞ!」

それが年一回発行の生徒会誌だった。

 

その空間が、生徒会室、兼、部室。

生徒会長は急に稼業が忙しくなって、今、休学中。

なので生徒会は一学年後輩の副会長が取り仕切っている。

それがまた勤勉実直な子で、学校行事や校舎新築事案で、

生徒会室にいるヒマがない。

別に借りたくもなかったが、まぁその中の一冊を借りて、

その部室を退散するとき、その牢名主がブスッと言った。

「これで、もう謄写クラブも終わりだな!」