新宿伊勢丹本店、その隣が、三井銀行だったかな?
午後3時、銀行のシャッターが下りると、そこに女易者が立った。その前に、すでに長い行列。
もう半世紀以上も前の話である。
何故そんなことを知っているのかと言えば、自分もサンドイッチマンとして、その同じ現場に立っていたからだ。
自分はまだ20代前半、時間給にして200円。
時代は上向き、やがて明るい上り坂。
当時としては、まぁ、かなりもらっていた方なのかも・・。
まぁ、波瀾万丈といって、いい。(笑)
当時、人生そのものがまだ手探り状態で、逆境と挫折の連続で、
行けど戻れず、まるで風雨にさまよう難破船のようだった。
後を、落ちこぼれ、落伍者というレッテルが、常に追ってきた。
まかり間違っても、
まさか? こんなに安定した老後を迎えられるなんて・・。
全く、夢だに想定していなかった。
あれから半世紀以上もの歳月、
その女易者は、新宿伊勢丹本店その隣、その雑踏の現場に立ち続けられたようで、
『元祖・行列の出来る●●』の、生みの親といわれ、
『新宿の母』と呼ばれた著名な女易者の、栗原すみ子さんである。数冊の占いに関する著書もあり、数年前に89歳の天寿を全うされたようである。
1時間以上も待たされて、診てもらえるのは、たったの、10分、料金は100円。
僕なんどは、
「また100円、あぁ、また100円!」
などと、頼まれもしないのに、『新宿の母』の、その懐ぐあいを皮算用したりして・・。(笑)
それが目障りだったのか、一寸気にしておられた。
自分は一度も診てもらったことはないが、
当時同じ現場に居て、何かと、気にとめて下さったふうでもあり、不思議とよく目があった。
あの時の、自分のことを、
どう思っておられたのか・・?
聞いてみたい気も、する。(笑)
(編集が利かないので、再録してみました)