雨が降っている。
靄り煙った散歩道に、甘酸っぱくて強い芳香。
白い花房を一杯付けた樹木を見上げて、
「あれ、何の木?」
「ニセアカシアやと思う」
相棒が云う。これには驚いた。
「ええッ! これが歌に歌われたアカシアの木か?」
その時、自分はまだ二十歳前後、もう半世紀以上も前の話。
時代は上向き登り坂。大衆消費の高度成長期。
その時もしかして、若者たちは社会機構の歯車、鋳型に組み込まれ、自由を奪われ、個性を封じ込められ、疲弊していたのかも・・。
何ともやるせなく、廃頽的な歌が流行った。
それが西田佐知子の歌う『アカシアの雨が止むとき』と、
石原裕次郎が歌う『赤いハンカチ』
歌い込まれているのは、アカシアの雨と、アカシアの木の下。
相棒は竹馬の友。
その話を振ったら、
「しかし、これはニセアカシアと云うからのう・・?」
帰ってきてネットで調べてみた。
明治に外来種として輸入された当初は、このニセアカシアをアカシアと呼んでいたらしい。後に本物のアカシアが登場したため、先輩格のこの外来種を、区別するためにニセアカシアと名を改められたらしい。
でもいまだに混同されているようだ。
因みに、
西田佐知子の『アカシアの雨がやむとき』も、
石原裕次郎の『赤いハンカチ』も
北原白秋の『この道』の、アカシアの花も、
すべてこのニセアカシアが、歌い込まれていると云うことだった。
遅すぎる。
その真実を知ったのは、74歳にしてやっと。
雨が降っている。
甘酸っぱくて、咽せるような芳香だった。
♪ アカシアの雨がやむとき このまま死んでしまいたい
「何となくやるせなくて、退廃的なこんな、歌がよう流行ったなぁ~」
すると、相棒が云った。
何と言ったと思う?
「お前が死んだら、弔辞読んだろ!」
余計な、お世話だ!! (笑)
相棒とは兵庫50選をよく歩いた。
天気がよければこの高台から、笠形、千ヶ峰の播州の山々がよく見える。




