道は生きている。
歩き遍路の命は、遍路道。
そう思って歩いてる。
札所も、歩き遍路にとっては通過点。
歩き遍路は表の山門から入って、裏へ抜けることも多い。
そこに次の札所へ通じる歩き遍路道が通っていたからだ。
勝手口から入って、表門へ抜けることもある。
歩き遍路は、まるでドロボウ猫みたいだった。
札所にとって、不意にやって来る歩き遍路は、
もしかして、有り難迷惑だったかも? (笑)
来た同じ道を、また帰る、打ち戻しは意外と珍しい。
足摺岬のその先端、金剛福寺を打って、
またその足摺の同じ道を帰っていく。
無計画。暮れ泥む道。気は急く。刻々と過ぎていく時間。
海の見える高地の高台を過ぎり、窪津の漁港へと下りる道。
墓地の中をゆく。彼岸花の道、夕暮れが迫っている。
何としても、あの山越えの以布利遍路道を、蟹の這うあの道を、
日のある明るい内に通過しないことには・・、大変なことになる。
夕刻6時、山中に入る。気は急く。
人一人やっと通れる山中の細流そわ道。足下が見えない。蟹を踏ん付けてゆく。
汗ダクダクで、丸木橋を渡る。
記憶を手繰りながら必死で以布利港に下り立った時、以外と明るい海明かりに驚いた。
灯台の灯が点滅し、停泊中の漁船が波に揺れている。
この明るさなら、まだ行ける!
先を急ぎ住宅街に差し掛かった時、昼間下手な道の尋ね方をして、
激怒され、へし折られた道標が、もう修復されているのには驚いた。
ありがとう!! 遍路道。♪♪♪
(遍路道は生きている)
と、思った。まだ止まる気がしなかった。先を急いだ。
昼間サーファーで賑わった大岐の浜を通過。もう人影もなくトップリ日が暮れていた。
金剛杖が砂浜に突き立ててあった。
見つかるように、誰かが突き立てておいてくれたのだろう。
もしかして、雲水さんだったかも・・・。
昼間置き忘れた杖と、まさか偶然にまた、この砂浜で再会出来るとは・・。
これには驚いた!!
嬉しかった。♪♪♪
時々刻々、時は流れても、
思いやりある人的痕跡に目が潤んだ。
(遍路道は、やっぱり生きている)
と、思った。
遍路道で再会を約束した仲間がいる。何処かで必ず待ってるから、と、言ってくれた。
桂浜で別れてからすでに一週間。もう何処まで行ったことやら・・?
もう射程圏内を去ったようだ・・。
でも、約束は約束だ。
この杖とだって再会出来たのだ。まだ諦めたワケじゃない。
暮れた砂浜、旅館、民宿がないわけじゃない。でもまだ歩みを止める気がしなかった。
遍路道は生きている。遍路道は歩き遍路の、命そのもの。
遍路仲間と再会するまでは・・・。
汗ばむ。先を急いだ。歩けるところまで歩いて、力尽きるまでが今日一日。
そして力が尽きた。
物置のような廃屋、その軒下、土間でのゴロ寝。夢うつつ、幾度かすぐそばを疾走する車。
突然射てくるライトの光。疲れ果てたかしばらく爆眠。
そして早朝四時頃の豪雨。軒下は水浸し、そして水溜まりに。
空のビールケースの上にリュックを置き、雨止み、夜明けを待った。
遍路道は無茶と相性がいい! 想定外こそ遍路道の醍醐味!!
早朝六時、レインウェアを着て、また旅立った。