山頭火 | 10go9

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気候温暖、山河に囲われて、言うことのない風土である。

幼少期、道で遊んでいると、外の世界は大概往来からやってきた。

それが魚屋さんだったり、

薬売り、竹篭売り、壺売りだったりして、

それが近在農家の必需品だったのだろう。

行商人が農家を渡り歩くように、子供たちも次々と遊び場を変えて遊んだ。

まだ海というものを、知らなかった。

 

 

まだ敗戦後の貧しい時代だったのだろう。

乞食、物もらい、傷痍軍人というのがよく来た。

時々、托鉢、虚無僧というのも来た。

 

 

そんなある日、黒染めの破れ衣の旅僧が、突然何処からか現れて、

阿弥陀くじのようなススキ道を巡り、また何処かへ去って行った。

その時僕らは遊び呆けたさすらいの、彷徨者だった。

赤トンボが舞う夕暮れ時だった。

こんな刻限に何処へ行くのか、と思った。幼い心には収拾不能。容易ならざる事件だった。

「居ればいいのに・・」

僕の呟きに、

「居られンのや! 乞食坊主やから」

ガキ大将が教えてくれた。夕焼けの茜雲の中を、

山向こうへ去って行くその行脚僧を、僕らは無言で見送った。

幼い心が初めて直感した無情とさすらいだった。 

 

 

後年、山頭火を知った。

幼少期のあの光景を思い出すたびに、チクチクと胸が痛む。

もしかして・・・。

慌てて年譜を繰ってみた。

その時、あの人はすでにこの世になくて、あの思い出と符合しなかった。

 

 

長い遍路道、遠い前方、道沿いの今大師を打っている雲水さんと新婚クン。

追いつけるかな、と思ったけど、

雲水さんは、すぐ長い新伊豆トンネルを潜って、

スタスタと行ってしまった。

 

 

昔と同ンじ。結局、追いつけンなぁ~。